シーズン3 登場人物

● 主人公 紀子(ノリコ)さん

…40歳のワーママで一人息子は高校生。美容オタクでスタイルの良い美人。料理はプロ級。ある日夫と親友の秘密を知る。

●紀子の夫 マサル

…紀子さんの大学時代の先輩。都内で祖父の代から引き継いだ不動産会社を経営している。スマートで男女問わずモテる。

●紀子の親友 真子

…紀子とは高校時代からの親友。紀子たちの結婚式で健二に一目惚れされて結婚。娘が二人いる。

●真子の夫 健二さん

…マサルと大学時代のサークル仲間。普段はマサルとよくサーフィンに行っている。明るく子煩悩。

●田中君

…マサルの後輩で、マサルの会社の部下でもある。今回は紀子さんに頼まれて、尾行・追跡を行ってくれた。

 

※このブログは様々な女性の人生の一部を、私が本人に変わって書いています。

シーズン1 ミキの芝生 『不穏な着信』

シーズン2 武田さんの芝生 

『隣の芝生②-1未婚の母を選択する女性。』

 

 

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息子の前で大泣きしてから

早1週間。

 

 

マサルは紀子さんに

一人暮らしにはあまりある広さの

物件を用意していた。

 

手続きは全てマサルが済ませており

紀子さんは身一つで

引越しできることになったが

感謝するのもおかしい。

 

だってマサルさえ

馬鹿なことをしなければ

そもそも別居なんてすることはなかった。

 

 

この1週間、マサルは紀子さんに

家の中で行う家事について

どこに何があるかなど、

あらゆることを質問してきた。

 

どうやらマサルの方も

これからしばらくの間か、永遠か

自活しなければいけないのだと

わかってきたようだ。

 

 

紀子さんは

複雑な気持ちでいっぱいだった。

 

不倫がバレて、開き直るように

生きている男もいるようだが

マサルはひたすらずっと

紀子さんに謝り続けている。

 

 

これがずっと続くのだろうか。

 

それともこうして謝るマサルを

このままつっぱね続けていたら

さすがに息切れして

もういいよと、マサルの方から

離婚を切り出されるのだろうか。

 

 

離れたいと言ったのは自分の方なのに、

マサルから離れたいと言われたら

それは嫌だとも思う。

 

 

 

 

正解なんかない。

 

 

とにかく今は、自分の心のままに。

 

 

紀子さんは自分に

そう言い聞かせた。

 

 

 

息子くん

「ねぇ、お母さん。」

 

 

その日、息子くんが紀子さんに

話しかけてきた。

 

 

 

紀子さん

「あぁ、どうしたの?」

 

 

息子くん

「僕、しばらくここに残るよ。」

 

 

 

紀子さん

「え?…」

 

 

 

あまりにも意外な発言で

紀子さんは驚いた。

 

 

 

これから自分は、息子と二人で

生活してゆくのだと思っていた。

 

 

 

 

紀子さん

「ここに?・・・でも」

 

 

 

 

息子くん

「お母さん。誤解しないでね。

 

 ここに残る理由は、お母さんと

 一緒に行きたくないからとか

 お父さんと

 一緒にいたいからじゃないよ。

 

 

 僕なりにたくさん考えたよ。」

 

 

 

 

紀子さん

「……」

 

 

 

 

息子くん

「お母さんを一人にしちゃダメなのか

 一人にしてあげるのか

 どっちがいいのか。

 

 

 

 だけど僕は、、

 お父さんを

  見張ってるよ。」

 

 

 

 

紀子さん

「……見張る……?」

 

 

 

 

息子くん

「うん。見張る。お父さんが

 ちゃんと頑張ってるのか。

 

 

 

   でもお母さんが寂しかったら

 引っ越しの日の夜でもすぐ行く。

 

 

 だからお母さん。

 しばらく洗濯も家事も料理も

 自分のことだけしなよ。

 

 お父さんが懲りてないんなら

 僕はすぐにここを出ていくから。」

 

 

 

 

あぁ、すごい。

 

 

すごいな、子供って。

 

 

 

 

 

 

紀子さん

「・・そっか、

 

 

 お父さん、見張ってくれるのか。

 

 こんなに頼もしい見張り番

 他にいないね!」

 

 

 

息子くんの言葉に紀子さんは

驚いて、寂しくて、励まされていた。

 

 

 

 

息子くんの真意はわからない。

 

 

 

けれど後に私は紀子さんから

このことを聞いて

少し深読みしてしまったりした。

 

 

家族を1番諦めてないのは

実は、息子くんなんじゃないか。

 

きっと紀子さんは

離れていてもマサルを心配する。

 

そんな情けない父親の近くで

息子は父親を鼓舞し、母親の帰りを

一緒に待とうとしてるのではないか。

 

 

 

家族は1日にして成らず。

 

 

とにかく紀子さんは

新しい1歩を歩み始めた。

 

 

 

 

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