シーズン3 登場人物
● 主人公 紀子(ノリコ)さん
…40歳のワーママで一人息子は高校生。美容オタクでスタイルの良い美人。料理はプロ級。ある日夫と親友の秘密を知る。
●紀子の夫 マサル
…紀子さんの大学時代の先輩。都内で祖父の代から引き継いだ不動産会社を経営している。スマートで男女問わずモテる。
●紀子の親友 真子
…紀子とは高校時代からの親友。紀子たちの結婚式で健二に一目惚れされて結婚。娘が二人いる。
●真子の夫 健二さん
…マサルと大学時代のサークル仲間。普段はマサルとよくサーフィンに行っている。明るく子煩悩。
●田中君
…マサルの後輩で、マサルの会社の部下でもある。今回は紀子さんに頼まれて、尾行・追跡を行ってくれた。
※このブログは様々な女性の人生の一部を、私が本人に変わって書いています。
シーズン1 ミキの芝生 『不穏な着信』
シーズン2 武田さんの芝生
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紀子さんはこの日のLINEで
今の自分の状況を
(真っ暗いトンネルの中に
ひとりぼっちでいるみたいだ)と
そう言った。
紀子さん
「変ですよね…
命より大事な息子がいて
両親がいて、、パンダさんみたいに
支えになってくれる人もいる。
仕事はやりがいもあるし
マサル一人失ったって
何にも怖くないはずなのに…
それなのにどうしてこんなにも
たった一つの出来事に囚われて、
身動きが取れないんでしょうか…
自分はもっと精神的に
自立していると思っていました…」
私は、紀子さんが心配だった。
ずっと気丈に振る舞っていたせいか
その反動で、
今にも壊れてしまいそうだ。
ミキも武田さんも奥さんも
皆そうだ。
こんな事実を前に最初から、
誰も、強くなんていられない。
私は、話を聞く以外一体
何をしてあげられるんだろう。
きっと今はなにをしていても
気分転換になんかならない。
だけどそれでも、
生きてゆくしかない辛さ。
そんな最低なことをしたのが
1番近くにいて、一生涯の愛を
誓いあった相手だなんて。
◆
翌日息子くんが帰ってきて
紀子さんはしばらくマサルと
別居をすると告げた。
しっかり目を見て
丁寧に丁寧に話した。
そして紀子さんは、頭を下げた。
紀子さん
「お母さんの我儘で
こんなことになって…
巻き込んでしまって
ごめんなさい。」
息子くんは一瞬黙って、
すぐに話し始めた。
息子
「お母さん。
お母さんが謝らないで。
お母さんは何にも悪くない。
僕わかってるよ。
大丈夫だから。
だからお母さんが、
ゆっくり元気になってよ。」
紀子さんは、こみ上げてくるものを
必死で抑えていた。
紀子さん
「…ありがとう…それで、、、
あなたがこれから
住む場所なんだけど
それは、どちらでもいいんだからね。
学校まではどちらからでも
同じ距離だから。」
息子
「わかった。」
息子くんはこの場では
どちらに住むとは言わなかった。
息子
「お母さん、
僕は今お母さんのために
何ができる?」
紀子さん
「え?」
息子
「あのさ、、お母さんが、、
なんでも決めていいんだよ。
僕のために生きなくていいんだよ。
それよりこれからは僕が
お母さんのために何かしたいんだ。
だってお母さんの人生、
笑っていて欲しいから。」
紀子さん
「私の人生…」
涙がハラハラと流れてきた。
紀子さんの人生は、
息子で、家族だった。
それが全てだと
そう思って生きてきた。
けれど
息子の言葉でハッとした。
ずっと子供だと思っていた息子。
けれどその息子本人が、
母親は、自分の存在のために
生きる道を限定して欲しくないと
思ってくれていた。
紀子さんの愛は
この目の前にいる息子に、
めいいっぱい伝わっていた。
息子は紀子さんにとって、希望の光。
だけど、依存先ではない。
息子くんは彼なりに
自分のせいでお母さんの
未来を決めて欲しくなかったのだ。
紀子さん
「うん、わかった。
お母さん、自分のために頑張る。」
そう言いながら
でも、紀子さんは息子の前で
沢山沢山泣いて
息子くんがまた
バスタオルを持ってきてくれた。