シーズン3 登場人物

● 主人公 紀子(ノリコ)さん

…40歳のワーママで一人息子は高校生。美容オタクでスタイルの良い美人。料理はプロ級。ある日夫と親友の秘密を知る。

●紀子の夫 マサル

…紀子さんの大学時代の先輩。都内で祖父の代から引き継いだ不動産会社を経営している。スマートで男女問わずモテるが…

●紀子の親友 真子

…紀子とは高校時代からの親友。紀子たちの結婚式で健二に一目惚れされて結婚。娘が二人いる。

●真子の夫 健二

…マサルと大学時代のサークル仲間。普段はマサルとよくサーフィンに行っている。明るく子煩悩。

●田中君

…マサルの後輩で、マサルの会社の部下でもある。今回は紀子さんに頼まれて、尾行・追跡を行ってくれた。

 

※このブログは様々な女性の人生の一部を、私が本人に変わって書いています。

シーズン1 ミキの芝生 『不穏な着信』

シーズン2 武田さんの芝生 

『隣の芝生②-1未婚の母を選択する女性。』

 

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マサルにメールを打ちながら

紀子さんは思った。

 

出来ることなら、

今日はもう何も話さず

このまま眠ってしまいたい。

 

 

今日はいろんなことがあって

本当に疲れた。

 

どうして自分がこんな目に

合わなければいけないんだろう。

 

 

自分が何をしたと言うのだろう。

 

 

 

なんて

 

 

そんなことを考えていたら

きっとこの先も

いつまでも眠れるわけがない。

 

 

 

 

やっぱり話すしかないんだ。

 

 

 

頭を切り替えて

前向きになりたい。

 

 

 

でも、そんなこと出来ない。

 

 

無限ループが、

自分を苦しめる。

 

 

 

 

息子くん

「お母さん、次お風呂入る?」

 

 

 

息子がお風呂から出てきて

声をかけにきてくれた。

 

 

高校1年生になった息子くん。

 

周りには小さい頃から

紀子さんに顔つきが

そっくりだと言われてきたけれど

 

最近急に背が伸びてきて

マサルにも似てきたと思う。

 

 

中学の時にはそれなりに

反抗期もあったが

 

この年代の男の子にしては

学校でのことや友達、

よく見る動画の話題など

家庭でもよく

話してくれる方だと思っている。

 

 

 

紀子さん

「お風呂か…どうしようかな。

 

 お母さんは、、、もう少しあとで

 寝る前に入ろうかな。

 

 その前に、

 なんか果物でも食べる?」

 

 

 

息子くん

「えっ、食べる食べる!」

 

 

 

 

 

紀子さんは立ち上がり

冷蔵庫を開けた。

 

 

 

 

 

息子くん

「それで、お母さん。」

 

 

息子くんが

紀子さんの背中に問いかけた。

 

 

 

 

紀子さん

「んー?」

 

 

 

紀子さんは背中を向けたまま

冷蔵庫にある果物を

いくつか出して

 

少し洗ったり

皮を剥き始めたりしていた。

 

 

 

 

息子くん

「最近なんかあった?」

 

 

 

 

 

突然の言葉に紀子さんは一瞬

動きを止めてしまったが

 

動揺を悟られないように

そのまま背を向けたまま

りんごの皮を剥き続けた。

 

 

 

 

紀子さん

「え?あぁ、

 どうしたのよ、急に」

 

 

 

 

息子くん

「いやなんか最近、

 お母さん元気ないじゃん。

 

 自分だけ

 あんまりご飯食べないし…

 

 どうしたのかなって

 思ったから…。」

 

 

 

 

紀子さん

「……」

 

 

 

 

 

気づかれないようにしていた

つもりだった。

 

けれど息子は、

母親をちゃんと見ていた。

 

 

 

 

息子くん

「大丈夫なの?

 もしかしてどっか身体とか…」

 

 

 

 

もう、無理だった。

 

 

 

 

なんでもないよって、

言えなかった。

 

 

 

 

 

紀子さん

「……う……ごめんね…

 ごめんね…」

 

 

 

 

息子くん

「え!お母さん、どうしたの!

 どっか悪いの?」

 

 

 

紀子さんはもう

溢れてくる涙を

止められなかった。

 

 

 

この時の紀子さんは

子供にこんなことを言わせてしまって

とても辛かったのだが、

 

同時に息子の優しさが

心に染みて染みて

安堵のような

そんな気持ちもあった。

 

 

高校生にしては

まだ幼いように感じていた我が息子。

 

 

それでも彼は、

母の変化に気づける、

優しい子になっていた。

 

 

 

紀子さん

「ううん、身体は大丈夫だよ。

 最近ちょっとね、、、

 悲しいことがあってね、

 落ち込んでただけなの。

 

 ごめんね。

 心配かけたくなかったのに。」

 

 

 

息子くん

「そっか…

 

 あぁ…

 病気じゃなくて良かった…」

 

 

 

息子くんは、

心からホッとした声を出して

笑顔になった。

 

 

 

息子くん

「でも、悲しいことって?」

 

 

 

 

紀子さんは涙を拭いながら

果物の乗ったお皿を

テーブルの上にのせた。

 

 

 

 

紀子さん

「そうだねぇ…

 なるべく早く

 解決したいことなんだけど…

 

 

 …すぐに解決しなかったら、

 いつか息子くんにも話すよ。

 だからその時は、

 

 お母さんの

 相談相手になってくれる?」

 

 

 

 

 

息子くん

「当たり前だよ!」

 

 

 

その言葉に、

紀子さんはまた泣いて

 

息子くんが

自分の肩にかけていたバスタオルを

そっと渡してくれた。

 

 

 

 

 

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