シーズン3 登場人物

● 主人公 紀子(ノリコ)さん

…40歳のワーママで一人息子は高校生。美容オタクでスタイルの良い美人。料理はプロ級。ある日夫と親友の秘密を知る。

●紀子の夫 マサル

…紀子さんの大学時代の先輩。都内で祖父の代から引き継いだ不動産会社を経営している。スマートで男女問わずモテる。

●紀子の親友 真子

…紀子とは高校時代からの親友。紀子たちの結婚式で健二に一目惚れされて結婚。娘が二人いる。

●真子の夫 健二

…マサルと大学時代のサークル仲間。普段はマサルとよくサーフィンに行っている。明るく子煩悩。

●田中君

…マサルの後輩で、マサルの会社の部下でもある。今回は紀子さんに頼まれて、尾行・追跡を行ってくれた。

 

※このブログは様々な女性の人生の一部を、私が本人に変わって書いています。

シーズン1 ミキの芝生 『不穏な着信』

シーズン2 武田さんの芝生 

『隣の芝生②-1未婚の母を選択する女性。』

 

 

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健二さんと田中君が

出て行った後、

 

泣きじゃくる真子の声が

部屋中に響き渡る。

 

 

 

紀子さん

「パンダさん、マサル。

 

 私たちも出ましょう。」

 

 

 

その音をかき消すように

立ち上がったのは、

紀子さんだった。

 

 

 

紀子さん

「じゃあね…」

 

 

 

真子

「…紀子…」

 

 

 

紀子さん

「もう、

 泣いている真子を慰めるのは

 私じゃないから…」

 

 

 

紀子さんはそう言い残して

部屋の外に出た。

 

 

私やマサルさんも

その後に続いた。

 

 

 

最後に扉を閉めた私が

真子の方を振り返ったが

 

真子は顔もあげず、

放心状態だった。

 

 

 

誰も、

一言も話さないまま

エレベーターまでの

道のりを歩く。

 

 

歩きながら

その紀子さんの頬に

ハラハラ涙が落ちていたのを

マサルは気付いていただろうか。

 

 

 

 

 

紀子さん

「…それじゃあ。

 私はパンダさんと行くから。」

 

 

ホテルのロビー階に降りて

紀子さんが

マサルにそう伝えた。

 

 

 

マサル

「…俺は…

 今日はどうしたら・・」

 

 

 

紀子さん

「私も今日はもう・・

 

 これ以上話したくない。

 

 この後、真子を慰めたいなら 

 またあなたは

 部屋に戻ればいい。」

 

 

 

マサル

「そんなわけ…

 

 

 もう、真子さんとは

 二度と会う事はないよ。

 

 

 

 だから

 

 何にも話せなくていいから

 今日…

 …うちに帰らせて下さい。」

 

 

 

紀子さん

「……」

 

 

 

紀子さんは、

しばらく何かを考えていた。

 

 

考えて、

小さくため息をついた。

 

 

 

紀子さん

「…それなら…

 息子が寝た頃に帰ってきて。

 

 夕飯の席にマサルがいたら

 私はうまく、

 笑える気がしないから…」

 

 

 

 

マサル

「わかった…

 ありがとう。

 

 

 本当に、ありがとう。

 

 

 それまで

 会社で仕事してるから…」

 

 

 

 

紀子さん

「じゃあ・・・」

 

 

 

紀子さんは

マサルに背を向けた。

 

 

 

その時

 

 

 

 

マサル

「紀子、待って!」

 

 

 

 

紀子さん

「…」

 

 

 

マサル

「今更こんなことしても

 どうにもならないって

 わかってるけど・・・」

 

 

マサルは

引き止めた紀子さんの前で

真子の携帯番号を消し、

 

さらにLINEをブロックした。

 

 

 

紀子さんは表情を変えず

それを見ていた。

 

 

 

マサル。

 

どうしてこんなことになる前に、

紀子さんと健二さんの

心を壊してしまう前に

 

そんな風に

出来なかったんだろうね。

 

 

 

マサル

「パンダさん…

 

 すみません。

 

 こんなこと言うのおかしいですが

 

 紀子のこと、

 お願いします・・・」

 

 

 

「はい…」

 

 

 

お前が言うな、

 

 

と言う気力など

私にもなかった。

 

 

 

 

紀子さんは先に、

駐車場に向かうエレベーターまで

歩き始めた。

 

 

ひたすら黙って歩き、

車に乗り込み、ドアを締める。

 

 

 

 

紀子さん

「パンダさん…今日…

 まだ、お時間ありますか…」

 

 

「勿論ですよ。」

 

 

紀子さん

「本当に…勝手なことばかりで

 申し訳ないんですが……

 

 息子が帰ってくるまで・・・

 一緒にいてもらって・・うぅぅ・・

 

 いいですか・・・」

 

 

「そんなの

 当たり前じゃないですか!」

 

 

 

紀子さん

「うぅぅぅ、あぁぁぁ・・」

 

 

 

紀子さんが、

子供のように

 

 

ワンワン泣いた。

 

 

泣きじゃくっていた。

 

 

 

 

紀子さんはこの時の記憶が

ほとんどないと言う。

 

 

それだけ紀子さんにとって

この日のことは、

辛い辛い出来事。

 

 

 

 

 

 

 

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