シーズン3 登場人物
● 主人公 紀子(ノリコ)さん
…40歳のワーママで一人息子は高校生。美容オタクでスタイルの良い美人。料理はプロ級。ある日夫と親友の秘密を知る。
●紀子の夫 マサル
…紀子さんの大学時代の先輩。都内で祖父の代から引き継いだ不動産会社を経営している。スマートで男女問わずモテる。
●紀子の親友 真子
…紀子とは高校時代からの親友。紀子たちの結婚式で健二に一目惚れされて結婚。娘が二人いる。
●真子の夫 健二
…マサルと大学時代のサークル仲間。普段はマサルとよくサーフィンに行っている。明るく子煩悩。
※このブログは様々な女性の人生の一部を、私が本人に変わって書いています。
シーズン1 ミキの芝生 『不穏な着信』
シーズン2 武田さんの芝生
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健二は
タクシーを捕まえるために
一旦電話を切った。
その間に私は
紀子さんと一緒に
田中君の待つロビーに向かった。
紀子さん
「田中くん!」
レストランが見える位置で
ひたすら座って
張り込みを続けてくれていた
田中くんが振り向いた。
田中くん
「紀子さん!
…と
はじめまして、
パンダさんですね!」
私
「はじめまして。
田中くん、
色々ありがとうございます。」
私たちは握手をしながら
目線はレストランの入り口に。
今回の件は、
田中君がいなければ
これほど大きな展開に
進めなかったかもしれない。
紀子さん
「田中君、こんな事任せてしまって
本当にごめんなさい…
でも、どれだけ救われてるか…」
田中君を見つけた瞬間に
少しホッとしたのか
紀子さんの顔つきが
少し柔らかくなった。
田中くん
「いえ、いつも紀子さんには
お世話になってますから。」
紀子さん
「そんな、こちらこそ…
あ、健二さんから電話が。」
紀子さんは私たちから
少し離れた位置に座った。
健二がタクシーで
こちらに着くまでの間
今日の出来事を話すのだろう。
私
「田中くん。あらためまして
こんなところで
ひたすら待ってくれて
ありがとうございます。」
田中くん
「いや、僕はジッとしてるの
得意な方ですから。
それにしても
二人でなにをそんなに
話してるんでしょうね。」
紀子さんと私が去って
1時間は経過していないが、
それでもさっさと出てこないことに
私たちは苛立っていた。
しかしこうなった今
どうか健二が来るまでは
そこに居て、とも思う。
私は手短に、田中君に
レストランから、
車内での内容までを話した。
田中くん
「……なんかそれ…
マサルさんもですけど
真子さんって方…
相当やばくないですか。」
私
「まぁ、常人ならそもそも
親友の夫と
こんなことにならないですからね…」
田中くん
「これから話し合ったところで
紀子さんとか…
健二さんが…
さらに傷つくことになるわけで…
なんかほんとに…
やるせないですね。
僕には他に、
何が出来るんでしょうか…」
私
「それは…
私にもわからないんです…
だから…とにかく傍にいて
守ってあげるしか…
守れてるかどうかも
わからないけど…」
田中くん
「そんな、
パンダさんの存在は
心強いっすよ、きっと。
そう言えば、
健二さんが来たら、
レストランで
そのまま話すんですか?」
私
「あぁ…それは私も考えてました。
これからの話
落ち着いて声を潜めて
ってわけにもいかなそうですよね…」
マサル
「レストランだから、
落ち着いて話せる
っていうのもありますけど
あ、それなら今のうちに、
僕が部屋を
取っておきましょうか。
マサルさんが取った部屋では
紀子さんたちも
入りたくないでしょうから。」
私
「おぉ。さすが田中くん。
じゃあ、部屋は任せます。
支払いは紀子さんの
家族カードを借りてください。
マサルに払わせましょう。
じゃあ…
この後の段取りは
私に任せてください。」
田中くん
「わかりました。」
田中くんが、
すっくと立ち上がる。
その背中を、
私は一旦呼び止めた。
私
「田中君……。
私たちが出来ること、
とにかくやってみましょうね。
世の中…
裏切るのも人ですが、
助けるのも人ですよね。
私たちは、
後者でいましょうね。」
田中君は優しく微笑んで
ホテルの受付に向かった。
私が紀子さんに目を向けると
紀子さんは頷いて、
健二さんとの電話を切った。
紀子さん
「パンダさん、
健二さんが、
もうすぐホテルの入り口に着きます。」
さぁ、役者は揃った。
マサル、真子。
もう、逃げられないからね。