第四章 第参話 何度この手を汚しても(3) | As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

版権作品にオリジナル人物を入れての二次創作小説を載せてます。
『遙か』シリーズが中心です

「どうした?」


「・・・・・・行動を慎重にしましょう」


宿へ戻ってきた時、咲弥の顔色の悪さに思わず声をかけたが

返ってきた返事は何かを暗示するかのようだった。


「なにが・・・」


「さあ?軍師の考えなど俺にはわからないさ」


いつもと変わらない様子で、告げる知盛に将臣は小さく息を吐き

ちらりと咲弥へ無言で視線を向ける。

その視線に気がついたのか、咲弥はこれまで見せたことない表情で外を見つめた。

敵がいるのか。と思わず意識を外へ向けたが感じることはない。

けれど、咲弥じっと外を見つめているだけ。


「おい・・・」


「―――去れ。これ以上の進入許さない」


右手を庭の隅にある大木へ向けると、ぽぅ・・。と手が光る。


「還内府殿は、少し黙ってみてられないのか?」


「知盛・・おまえ」


「お前が帰ってくるまで、ずっとこの調子だ・・・。人外の力を授かりし

 我が姫軍師殿が、俺たちが感じられない怨霊をああして払い続けている」



ユルサナイ・・・・・・



ぐ・・・ぐ・・・

人の声が聞こえたと同時に現れる、白骨した人。

これは平家が使う怨霊とよく似ている。

けれど、その殺気は決して他の人には向かうことなく、まっすぐにこちらへ向けているのが

将臣にも感じられる。


「天の力を借りし・・・汝を清浄なる力を持って払う」


勢いよくこちらへ向かって襲い掛かってくる怨霊を、咲弥は持っていた刀で

振り上げた腕を切り捨てると、四方に小さな黒真珠を置くと

呪文を唱え始める。



ユルサ・・・・ナイ・・・・



「お前に許してもらおうとは思ってなどいない。去れ!」



ぎゃぁぁぁぁぁぁぁああああ!!!!



断末魔を上げながら、怨霊は白い光の粒となってこの場所からいなくなった。

姿が消えた後、カチンと刀が鞘に収められその様子を見つめている

将臣へ視線を戻すといつもと変わらない表情を見せた。























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あとがき

進み具合がかなり遅くすみません。