出会う強敵の者(1) | As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

版権作品にオリジナル人物を入れての二次創作小説を載せてます。
『遙か』シリーズが中心です

望むものは唯一つ それを得るためならば
どんな事ですら 受け入れる
 
それがどんなに 非難されようとも



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「三蔵一行は、ここから約七キロの地点を北西に移動です」


「あいつらがジープなんぞに
チンタラ移動いてっから余裕で追いついたな」


部下からの報告に、男はさっきから何も発しない男へ視線を向ける。


「玉面公主からの指令は?」


視線を向けても答えない男を他所に報告に来ている妖怪へ尋ねる。


「もっと刺客を送り込めだそうです・・」


「そうか・・・無意味だと思うがね俺は」


「当然だ!」


壁を叩きつけ立ち上がった男に
報告を持ってきた妖怪はびくつき、頭を下げると
そそくさと出て行く
苛立ちを隠しきれないのか出て行った妖怪を睨みつけ
きつく拳を握った。


「奴らのせいでどれだけの部下が
犬死にしたと思っている?
数で攻めても無駄だとまだわからんのか!!」


はき捨てるように告げるこの男こそ、
牛魔王と羅刹女との間に生まれた一粒種
紅孩児だ
そんな紅孩児を宥めるかのように報告を受けていた男は
彼の肩を叩き落ち着かせるように諭す。


「まあ、落ち着けって王子様よ
だから、こーして作戦会議をしてンじゃねーの」


「もーっっ!ゆーじゅーふだんだなぁ
お兄ちゃんわ!!
オイラ達でパーッとやっつけちゃえばイイんだよ
そんなヤツら!
ヒマすぎて身体ナマっちゃうよォ?」


男との間に割り込んできた可愛らしい女の子は
紅孩児とは腹違いの妹李厘
紅孩児はそんな二人の話を聞いていないのか
自分の思考へはまっていく
その様子に男は心配げに彼を見る。


「紅・・・・お前まだ迷ってねェか?
玉面公主の言いなりになって、蘇生実験に加担すること」


「!――――この俺に迷いなどない・・・・・!」


そんな風に答えても心の奥の思いを拭い去ることはできない
紅孩児はそれ以上の言葉を継げるのを止める。


「――――紅孩児様」


今まで黙っていた一人が声をかけた。


「八百鼡(やおね)」


「私に行かせてくれませんか?」


まっすぐに見つめる八百鼡に紅孩児にふいと視線をそらす。


「今までの様に正面から攻めたのでは
三蔵一行は倒せません
私がおとりにます」


「・・・危険だならん」


即答の紅孩児の言葉に八百鼡はそれでもあきらめるはずなく
後ろを向いている紅孩児に向き合い
にこりと笑顔を見せる。


「それに、わたしはコレでも紅孩児様お墨付きの薬師
『薬』と名のつくものならば
毒薬・爆薬何でも自由に操って見せます
お任せ下さい」


「・・・・・・」


「紅孩児様」


「・・・・・勝手にしろ」


渋々了承をする紅孩児に満面の笑みを浮かべる。


「ただし・・・」


「はい・・・」


「無茶はするなよ」


「はい。紅孩児様」


そっけないが彼なりの優しさを八百鼡は気がついていた
傍を離れると、すぐに三蔵一行がそらく立ち寄るだろうと思われる
村へ先回りをするために、頭をさげ踵を返し出て行く。

その姿を紅孩児が見送る。


(必ずこの八百鼡が、三蔵一行の息の根を止めてみせる)


見送る紅孩児の視線を感じながら八百鼡は、真っ直ぐ視線を前に向け

出発した。










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あとがき

久しぶりの最遊記です。今回は好敵手の彼らとの絡みになります。