二人の玉依姫+α | As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

版権作品にオリジナル人物を入れての二次創作小説を載せてます。
『遙か』シリーズが中心です

きょとんとした様子で、珠洲はこの状況をみていた。

何が起きたのか分からない。

でも、目の前の人。季封村の守護者は円を囲んでひそひそと何か話している。

正確には、守護者である鬼崎拓磨と鴉鳥真弘でその姿を困った様子で見ている犬戒慎二。








さかのぼること数時間前







珠洲は今回のお礼に、季封村へ赴いていた。

もちろん己の守護者も一緒ではあるが、今は一緒にいない。

恋人である天野亮司は、こちらの最年長である大蛇卓と約束があるといわれ

先に行くように促されていた。

珠洲は快諾し先に守護者がいる学校へきていたのだ。



「みんなは屋上にいるから、先に行ってくれる?」


ここの玉依姫で春日珠紀の言葉に珠洲は屋上へ挙がると

三人の守護者が集まって食事をしながら会話を楽しんでいた。

扉を開いて現れた珠洲に少し目を見開く。


「おまえ・・・。確か・・」


「はい。綿津見村の高千穂珠洲です。このたびのことで皆様にお世話になったのでお礼に」


にこりと微笑みながら告げる珠洲に、慎二が席に座るように促した。


「一人で来たのか?」


「いいえ。守護者も一緒ですが用事があるようで私だけ先にこちらへ着ました」


「そうですか」


「まあ、なにかあれば俺様に任せろよ」


胸をはりながら告げる真弘に


「はい。鴉鳥先輩」


ぺこりと頭を下げる姿にうんうんと頷く真弘


「アイツと同じ玉依姫とは思えないな」


拓磨はぽつりとつぶやいた。


「守護者の皆様がいるからこそ、玉依姫としての役割を果たせるのです。

 守護者の方は本当に尊敬しますよ。感謝してもたりないくらいに」


ほわんとした中に凛とした姿をみせられ二人は満足そうに頷く、同時に開かれた扉に

視線を向けると、こちらの玉依姫、春日珠紀の姿が目に映る。


「あ~~~!!二人とも珠洲ちゃんになにかしてないわよね!」


「・・・なんだそれは」


「んだと~」


「珠紀さん。そんな事ありません、鬼崎先輩も鴉鳥先輩も優しくて素敵な人です。

 私を飽きさせないようにこちらの村のお話を沢山していただいて。

 ありがとうございます。」












そして冒頭に至る。



「なあ、俺達の玉依姫もああ、素直なら守りがいもあったよな」


「まったく」


「あの・・・」


「鬼崎先輩・・。鴉鳥先輩・・」


二人のやり取りに慎二はおずおずと声をかける。

珠洲もなにやら隣の珠紀の空気の変化に気がつき同じように声をかけるが

二人は気にならない様子で・・・。


「まったくこいつと来たら、最初にここへ来たとき助けてやったのに

 感謝の言葉も無くてよ」


「マジか!まったく・・」


これ以上の言葉のやり取りを続けていたら珠紀の怒りが。

そう思った珠洲は事の成り行きを黙って見いている狐邑祐一に視線を向ける


「あの・・・。狐邑先輩・・。お二人を止めてくれませんか?」


「なぜだ?」


「何故って・・・」


「本当のことだ、仕方がない」


頼みの綱だと思っていた人からの一言に。

珠洲は完璧に言葉をなくし次の瞬間。

守護者三人が頭を抱えながらうずくまった。


「い い 加 減 に し な さ い よ!」


「いって~~~!」


「強烈だ」


「本当に」


「あの・・・。大丈夫ですか?」


「本当にお前は・・・。もう少しおしとやかにしてみろよ!」


「何ですって!」


珠洲の言葉も届いていないのか、珠紀と拓磨はぎゃいぎゃいと言い合いを始める。

その様子に何も言えず黙ってみている珠洲。

すると、肩に手のぬくもりを感じた。

振り返ると、亮司と卓が笑顔でこちらを見ているのが分かる。

守護者は気がついていないようだ。


「楽しい時間は過ごせた?」


「はい・・・。あの・・・?」


「すみません。せっかくお越しいただいたのに・・・」


申し訳なさそうな卓に珠洲は首を振って答える。

まだ気がつかない守護者たちと珠紀。


「少し待ってくださいね」


にっこりと音が聞こえるほどに珠洲に笑顔を見せた卓に急に悪寒が走ったのは気のせいだろうか?

首をかしげる珠洲。


「大体お前は」


「何よ!」




「みなさん」




びくぅ!!!



聞こえてきた声に、誰もが直立不動になって動きが止まる。


「す、卓さん・・いつから・・」


「さっきからいますよ」


嫌だな。と穏やかに微笑を浮かべながら話しているのに寒さを感じるのは何故だろうか?

だらだらと背中につめたいものを感じて沈黙が走る。


「お客様もお見えなので、お相手をするようにお願いしたと思うのですが?」


「はい!そうですね」


「もちろんです」


「そうですよね~~。いくらなんでもお客様を放って喧嘩なんて――」


「あ、あああああああるわけないじゃないですか!」


言葉にどもりが入りながらもみんなが一斉に首を縦に振る。


「ね?珠洲ちゃん」


珠紀の声に、珠洲は頷く。ほっと一安心と思ったが。


「はい。言い合いをしてました。私は拝見して楽しかったですよ。でも喧嘩ではないですから」


「へぇ~~。言い合いを、ね~」


(((((ちが~~~~う!!)))))


六人の空気を読むことは出来ず珠洲はにこやかに卓に告げ

亮司に視線を向ける。


「違います?」


「そんなこと無いよ。それじゃ、なんだか予定があるようだから、僕達は失礼しようか?」


「そうなんですか?もっとお話を見たかったんですけど・・・」


残念そうに珠洲はいまだ何も言わない、五人を他所に卓に頭を深々と下げた。


「大蛇さん。今度は私の守護者も連れて遊びに来ますね」


「本当に、あまりおもてなしも出来なくて。僕がきちんとみんなには言っておきますから」


「はい。お願いします」


卓の言っている意味を理解してないが、頷いて笑顔を見せている珠洲。

その光景を黙ってみている守護者達。

そしてこの二人が帰った後に待ち受けていることを予想すると泣きたくなった。


「それで―――」


帰りますと告げようとした珠洲は何かを思い出したかのように

顔を上げて珠紀を見た。


「また。皆さんの言い合いを見せてくださいね」










再び爆弾発言を落とし、ぺこりと頭を下げ絶対零度にまで落ちた屋上を珠洲は亮司と後にした。











その後六人になにが起きたか?

それは珠洲には分からない。
















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あとがき。

これは・・・・・・・・。何時の間にかこんな内容になりました。

シリアスは何とかかけますが、こんな感じのお話はあまり書いたことない。

キャラが掛け離れていないだろうか?どきどき・・・。

しかし無駄に長い・・・・。(^▽^;)









おまけ


珠洲「私変なこと言いました?」

亮司「そんなことないよ。(珠洲は天然だからね)」

珠洲「よかった・・・。でも急に寒くなりましたけど。何故でしょうね?」

亮司「そうかな?そんなことないよ。気のせいだからね」

珠洲「はい」