貴方の瞳が私を見ていない。
貴方の心が私を想っていない。
それが信じられなくて・・・。
これは夢なんだって思いたかった。
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「それじゃあ」
「ああ・・」
そっけないけれど、私を見つめる瞳はどこか優しさが見え隠れしていて
初めて会ったときはこんな風になるなんて想像もしてなくて。
「・・・じっとみつめてなんだ?」
「い、いえ・・・。初めて会ったときはすご・・」
すい、と目を細めて訪ねられて思わず最初の印象を話そうとして
思わず口を押さえる。けれど克彦さんはにやりと口角を上げて
私の腰に手を回し、自分へ引き寄せる。
「すご。なんだ?」
「あ、あああの!」
真っ赤になってオタオタする私を見ながらさらに顔を近づけてくる。
「なんで近づくんですか!」
「お前が言わないからだろう?まあ、言ったとしても。もう遅いけどな」
非難の声を上げようとしたけど、それが声になるはずもなく
唇を克彦さんに奪われて、呼吸も間々ならなくて。
思わず彼の袖をぎゅっと掴んだ。
「克彦さん・・」
見上げる私に今度は軽く唇に触れる程度のキスを与えると
身体を離し、家に戻るように促された。
「珠洲」
家の扉へ手を伸ばそうとした瞬間不意に後ろから声をかけられた。
不思議に感じながら振り向くと
いつもとは違う、笑顔を見せている克彦さん。
「克彦・・さん」
「いや・・・。寝坊するなよ」
それだけ告げると、克彦さんはくるりと私に背を向けて夜の中に消えていった。
「変な克彦さん」
そのときは本当に、それだけで。
明日も同じように会えるんだって思っていて。
何の疑問も感じなかったの。
「兄ちゃんが!!」
翌日、小太郎君の悲痛な声を聞くまで―――――。
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あとがき
こちらは、キリ番の報告をしてくれた〔わがままな姫のママ〕さんからのリクエスト
翡翠の雫で克彦さんお相手でってことだったので。
しばらくお話続きますね。