「弁慶さん」
呼ぶ声はいつも傍にあった。
それなのに・・・・・・
僕が選んだ人は君ではなかった。
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光が差し込み僕の頬に当たり意識が再生される
目を開けると、隣で寝ている彼女はまだ夢の中のようだ。
起こさぬようそっと傍を離れ、寝所を後にした。
「今日もよい天気ですね」
僕は話しかけるように太陽を見つめる
閉め切った部屋へ光と真新しい空気を入れるために扉を開く
ガタ ガタ
雨戸が少しきしみ中々進みにくい
長く使っていた為だろうか、そう言えば戦いに明け暮れていたため
家のことを何もしていなかったことに気がつく。
今日は、診察も無い
「一日家の仕事でもしましょうか」
「おはようございます!弁慶さん」
独り言をかき消すかのように慌てて居間へ入ってくる彼女に
笑みを零す
「おはようございます。望美さん」
「すみません。寝坊してしまって」
「かまいません。僕も起きたばかりですから」
「う~。それでも・・・・・・こんなこと咲弥さんが知ったら笑われる」
望美さんから発せられた言葉に僕の身体は動きを止める
でも彼女は気がついていないのか話を続ける
「咲弥さんは、リズ先生よりも早く起きて
先生がおきてくるときには食事も出来上がっているって聞いたから」
「そう・・・・ですか」
今度からは、早く起きますね。と笑顔を僕にみせ
望美さんは後ろを向き、食事作りを開始した
僕はあいまいに答え視線を庭を眺める。
朝の光を浴びて輝いているのは彼女が好きだといった花が満開に咲き誇っている
「・・・・慶さん?弁慶さんってば!」
いつの間にか僕の隣に来たのだろうか
望美さんは不思議そうに僕の顔を覗き込む
「どうしました?望美さん?」
「それは、私の台詞ですよ?ぼ~っとしてどこか具合でも悪いんですか?」
「いいえ、そんなことありませんよ」
「そうですか?」
僕の言葉にまだ納得していない様子の彼女だったけれど
深くは追求してこなかった
すると思い出したかのように彼女は手をぽん!と打ち僕に笑顔を見せる
「一週間後に咲弥さんとリズ先生がきます」
「は?」
思わずだった
驚いた僕に彼女はもう一度告げる。
「咲弥さんが先生と一週間後こちらへお見えになります」