キセキノハナ(25) 願うのは唯一つなのに | As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

As lagrimas que a lua derramou~月が零した涙

版権作品にオリジナル人物を入れての二次創作小説を載せてます。
『遙か』シリーズが中心です

===小鳥===


克彦に似ている顔立ち

しかし、少し低く良く通る声だ。

それが誰なのか、この場にいる誰もが理解できる


「飛鳥・・・さん」


珠洲の言葉に、反応を示すかのように

飛鳥は珠洲へ視線を向けてにこやかに微笑を浮かべる

すでに肉体は滅んでいる魂だけの姿

しかし、その隣に立っている人物にも驚きを隠しきれない。

腰まで伸びた艶のある髪。少し瞳は茶色をしている


「やっと現れたか」


=壬生の者か・・・。なるほどよく似ている=


「おかげでいい迷惑だ」


=そうか=


「か、克彦さん・・」


先祖に向かって放つ言葉は冷ややかで

珠洲はぎょっとなり、言葉を静止させるが

言われている本人は苦笑してるだけで。


「本当のことだ。きちんと封印を施さないからこんなことになる

 しかも、封印された本人は、理由すらわからないのだから」


〔・・・・飛鳥さま・・〕


小鳥は信じられない顔で、突然現れた飛鳥に

戸惑いの意味で名を呼んだ。

そんな小鳥を見て、飛鳥は悲しげに小鳥を見つめる。


=君は・・・・あの時から捕われたままのなか=


〔飛鳥さま・・・。私が何かしたのですか?

 私はあなたの為に・・・〕


=君の気持ちは嬉しい、俺の選択で君も

 そして澪も苦しめた=


飛鳥の言葉に、小鳥は黙って耳を傾けるだけ

返事を返すことなく、顔を下へ俯かせた。


=あの日の俺の言葉を君は覚えてないのか=


〔飛鳥・・・さま〕


=俺は、君を封印する=


 俺は君を封印する


飛鳥の言葉に、小鳥は目を見開き

首を激しく振る。

飛鳥の行動が信じられないかのようで・・・。


=もう、君は俺が妻にと思った人ではない

 ただの鬼と化した人だ=


〔・・・・私は・・・・私は・・・・〕


=現在の玉依姫よ。彼女の封印を=


飛鳥の言葉に珠洲は、現れて何も告げない澪へ

視線を向ける。

珠洲の視線に気がついたのか、澪も頷き促した。


〔・・・・お前は・・・・私の愛した人ではない・・・〕


封印の為に小鳥へ視線を向けた瞬間

地に這うような声で小鳥が、飛鳥と澪へ視線を向ける。


「・・・厄介な・・・。もう、自我が消えたか」


「克彦さん」


「封印など、生易しいものではすまない。もう常世へ

 送り返すしか方法はない」


「でも!まだ何か方法があるかもしれません」


「珠洲!」


「お願いします!克彦さん!」


「いい加減にしろ!これ以上こいつに言っても

 無駄だということが分からないのか!」


怒気を荒げて告げる克彦。

彼のいっていることも分かるのだ。

かつての『玉依姫』と『守護者』がこの世界に

現れているだけでも、事が急を要することも。


「私は・・・・・・」


珠洲はきつく言葉をかみ締めた。