===小鳥===
克彦に似ている顔立ち
しかし、少し低く良く通る声だ。
それが誰なのか、この場にいる誰もが理解できる
「飛鳥・・・さん」
珠洲の言葉に、反応を示すかのように
飛鳥は珠洲へ視線を向けてにこやかに微笑を浮かべる
すでに肉体は滅んでいる魂だけの姿
しかし、その隣に立っている人物にも驚きを隠しきれない。
腰まで伸びた艶のある髪。少し瞳は茶色をしている
「やっと現れたか」
=壬生の者か・・・。なるほどよく似ている=
「おかげでいい迷惑だ」
=そうか=
「か、克彦さん・・」
先祖に向かって放つ言葉は冷ややかで
珠洲はぎょっとなり、言葉を静止させるが
言われている本人は苦笑してるだけで。
「本当のことだ。きちんと封印を施さないからこんなことになる
しかも、封印された本人は、理由すらわからないのだから」
〔・・・・飛鳥さま・・〕
小鳥は信じられない顔で、突然現れた飛鳥に
戸惑いの意味で名を呼んだ。
そんな小鳥を見て、飛鳥は悲しげに小鳥を見つめる。
=君は・・・・あの時から捕われたままのなか=
〔飛鳥さま・・・。私が何かしたのですか?
私はあなたの為に・・・〕
=君の気持ちは嬉しい、俺の選択で君も
そして澪も苦しめた=
飛鳥の言葉に、小鳥は黙って耳を傾けるだけ
返事を返すことなく、顔を下へ俯かせた。
=あの日の俺の言葉を君は覚えてないのか=
〔飛鳥・・・さま〕
=俺は、君を封印する=
俺は君を封印する
飛鳥の言葉に、小鳥は目を見開き
首を激しく振る。
飛鳥の行動が信じられないかのようで・・・。
=もう、君は俺が妻にと思った人ではない
ただの鬼と化した人だ=
〔・・・・私は・・・・私は・・・・〕
=現在の玉依姫よ。彼女の封印を=
飛鳥の言葉に珠洲は、現れて何も告げない澪へ
視線を向ける。
珠洲の視線に気がついたのか、澪も頷き促した。
〔・・・・お前は・・・・私の愛した人ではない・・・〕
封印の為に小鳥へ視線を向けた瞬間
地に這うような声で小鳥が、飛鳥と澪へ視線を向ける。
「・・・厄介な・・・。もう、自我が消えたか」
「克彦さん」
「封印など、生易しいものではすまない。もう常世へ
送り返すしか方法はない」
「でも!まだ何か方法があるかもしれません」
「珠洲!」
「お願いします!克彦さん!」
「いい加減にしろ!これ以上こいつに言っても
無駄だということが分からないのか!」
怒気を荒げて告げる克彦。
彼のいっていることも分かるのだ。
かつての『玉依姫』と『守護者』がこの世界に
現れているだけでも、事が急を要することも。
「私は・・・・・・」
珠洲はきつく言葉をかみ締めた。