【特集 加齢への挑戦】
座談会「自分を積み重ねる」 大下一真(藤島秀憲さん、小島なおさんとです)
【カラーグラビア】
歌人の朝餉 橋本喜典
【巻頭作品30首】
声は変はらぬ 篠弘
【作品7首】
子供ども 小島一記
【連載】
歌のある生活 島田修三
【短歌月評】
柳宣宏
【特集 加齢への挑戦】
座談会「自分を積み重ねる」 大下一真(藤島秀憲さん、小島なおさんとです)
【カラーグラビア】
歌人の朝餉 橋本喜典
【巻頭作品30首】
声は変はらぬ 篠弘
【作品7首】
子供ども 小島一記
【連載】
歌のある生活 島田修三
【短歌月評】
柳宣宏
花和尚独語⑥ 草花の錬金術師 大下一真
【作品13首】
松藻しずかに 富田睦子
【新刊歌集歌書評】
広坂早苗歌集『未明の窓』評 糸川雅子さんにお書きいただきました。
【歌誌漂流】
鈴木竹志さんに「まひる野」についてお書きいただきました。
【特集 結社の進路】
わが会のビジョン
「若者は若者を」 大下一真
【連載】
戦争と歌人たち㉙ 篠弘
鉄幹・晶子とその時代 加藤孝男
【作品12首】
「当然」 染野太朗
【歌集・歌書の森】
広坂早苗歌集『未明の窓』評 棚木恒寿さんがお書きくださいました
短縮版です。
【作品特集】
朝焼けに冷気を吸いこむ一息に噎せ返りつつ肺腑を清める
まっさらな真白き雪にくさめする残余の生の人間われは
泣きながら笑うことあり亡くなりし猫の仕草を妻の語れば 矢澤保
長き病にいかほどの薬飲みたるやかっさりと軽き骨を拾えり
手に抱く骨箱の上に物を乗せ吹雪にまみれ行く人あり
さとうとみこと大きく書きし傘差せばわが物忘れにわれは見らるる 佐藤鳥見子
姑娘(クーニャン)の自転車の列通る時天さかる支那の里山を思ふ
艶やかな錦繍の峰見放くれば我れも束の間貴人となる
白むく毛のボルゾイ三頭操りて首は飄々と坂を登り来 高橋和弘
声失いて十年最後の往診に君の嗚咽は声になりゆく
町内会の揃いの法被も色褪せて粋千駄木は行きずりの故郷
三月の群衆どこか寄る辺なく未熟な春を分け合い漂う 今川篤子
灰色のテトラポッドのごと積まれ路肩の雪は海を知らない
生と死のあわいを生きている義兄の背中を誰も押してはならぬ
風受けて末枯れしセイタカアワダチソウ命を持たぬ軽さに揺るる 岡本弘子
まいったね六十過ぎたこの俺に養子に来いと恩師の夫婦
船に乗る長期の仕事がまたあるやも介護となれば何処へも行けない
財産も土地も家も皆やるよ今更そんなこと言われてもなあ 西一村
人去りし水辺の森の暮れゆきて今トロッコの少年となる
外出(そとで)から帰らぬ娘まあよいか庭の目白もさえずり交わす
一億総なんとか騒(ぞめ)くラジオを消す輝けなんぞ大きなお世話 広坂早苗
立つことは自然に逆らふことならむ安からなるものみな横たはる
保証人になつてはならぬと繰り返し言ひたる父の来し方を聞けず
煙などまつたくあがらず高性能の八事の丘の野辺の送りは 柴田仁美
火の点かぬ百円ライター脇にやり三本ばかりマッチ擦りたり
一族の墓をひとつに纏めたと細き声する誰と知らねど
地に沈む雨水が海に着くまでの苦しき旅を思ひて眠る 久我久美子
〈物忘れ外来〉前では人はみな目をそらし俯いており
突然に「てんたう虫のサンバ」など唄う人あり陽気な病棟
手首より老けていくらし腕時計ゆるめ涼しき風を通しぬ 大野景子
作品Ⅱ 人集
黄泉の国われは知らねど夕さりの空は黄丹(わうに)の色に変はれり 田浦チサ子
「工事車両出入口」には顔見えぬ人が警備す風吹く中を 広野加奈子
スパンコールの光りを分散させながら街を歩めば春が寄りくる 宇佐美玲子
きさらぎの雪見障子を風鳴らし座敷のわらしの訪なふごとく 阿部清
掻い堀りの七井の池はひとつらに黒々として沼と化(な)りけり 青木春枝
作品Ⅲ 月集
腕に抱くことなき君が生きていた証として減るわずかな体重 浅井美也子
春の水暗渠の前でひとしきり高き音立て消ゆるが寂し 中井溥子
さぼてんに話しかければよろこぶと誰が言ったかじっと見つめる 高木啓
新しいマグカップとか増えてきて私ではない私も増える 広沢流
更新滞っていてすみません。
今月は短縮版で失礼します。
作品Ⅰ
歌詠めぬ四、五日飢うるごとくにて越後の米をゆつくりと噛む 橋本喜典
風花の空へと莟突きあぐるごぶしにそひゆく駅までの道 篠弘
十桁の番号ふいによみがえりしか認知症の姉が電話かけくる 小林峯夫
納骨の経誦する墓所この後は親しくあまた落ち葉が降らん 大下一真
わが知らぬ坊ノ崎沖に朽ちゆける戦艦おもひ煙草ともすも 島田修三
子の病みて遅刻をしたつ理科教師白衣を肩に羽織りつつゆく 柳宣宏
冬眠といふ他はなき暮らしぶりインフルエンザAもBも来ず 中根誠
自動車の死角のやうなる闇われに増し来てしばし物忘れする 柴田典昭
山羊の乳搾りしことも夫は言ひ雪降れば雪の信濃人なる 今井恵子
まひる野集
貿易の湊ほろびてゆふ風の駿河屋跡はいづこなるべし 加藤孝男
おおいなる暇つぶしなる老後かなざっくり混ぜて鴨を見ている 市川正子
さむぞらに何を掴めるかへりきて卓に十指をひらく軍手は 竹谷ひろこ
消滅は隣の字(あざ)に迫りたりとりあへず今日どんど焼きする 麻生由美
コラーゲン配合フードを食む犬の主(あるじ)とともに永らへてあれ 升田隆雄
マチエール
アマゾンよ三途の川よ「商品をカートに入れる」そして「確定」 山川藍
骨という骨が抜かれてニュースショー食べやすければいいのであろう 米倉歩
ネイチャーでファビュラスだという恭子さんの日常を綴る美香さんの誤字 小原和
吾のあとに子を産まざりし母は吾がために貞操を守りしごとし 加藤陽平
あのとき、と語る言葉のほのかにも思い出めいて吐き気がするな 北山あさひ
林檎ひとつをステンレスの刃に切りたればひとしく切らる冬の気配も 後藤由紀恵
午後3時ブラインドの影深くさし同僚のほほを刻んでいたり 佐藤華保理
「経営難、高齢化など」その「など」にばかり降るなりスギの花粉は 染野太朗
肉球のあいだ毛深しさくら踏むときに染みくる甘い水分 立花開
究みゆくことしかできぬ女いてうつわうつくし湖(うみ)の顔せり 富田睦子
今後の東京歌会の予定をお知らせします。
6月19日
7月10日
9月11日
10月16日
11月20日
12月18日
東京歌会は橋本喜典さんが中心となって行われてきましたが、
体調不良のため現在は今井恵子さんが中心となられています。
今井さんのご提案により、毎回歌会の前に10~15分程度のミニレポート、
年に1~2回の無記名による歌会を計画しています。
今年は4月に無記名歌会の第一回を、9月に二回目を計画しています。
また、例年12月は年間のまとめとしてその年に出版された歌集を中心に橋本喜典さんによる批評と懇親会を予定しています。
無記名歌会と12月はとくに事前準備がありますので、歌会参加の際はご連絡ください。
まひる野の編集室は、鎌倉瑞泉寺です。
月末に集められた歌稿は、選者を経由して次の月末に編集室に戻ってきます。
評論やその他原稿も揃えられ、毎月末の土曜日にページの割り付けなどが行われます。
大下さんちには長い階段があります。
新緑が美しい。
表具屋さんから戻ってきたばかりという先師章一郎の軸が。
お花は、あやめでしょうか、アイリスでしょうか、杜若でしょうか、花菖蒲でしょうか、いちはつでしょうか。
歌集『硝子戸の外』収録の昭和46年「北方空路」のなかの一首ですね。
「第一回ヨーロッパ短歌の旅」団長としてヨーロッパへ渡る途中の空路を詠んでいます。
アリューシャン→アラスカ→アンカレッジ→北極洋上空→グリーンランド→アイスランド→ヒースロー空港の間に65首の歌を残しています。さすが団長。
この歌は内の「北極洋上空」13首の3首目に置かれていますが、
上空から見る一面の流氷を「果なき碧(みどり)に」と表し、景の大きさと情感を伝えます。
旅の往路の歌ですから、新鮮な驚きとワクワク感があるのですが、一方でなんとなく寂しさや虚しさが感じられます。
『硝子戸の外』は昭和40年から46年までの歌を収めた第6歌集ですが、章一郎は父空穂を昭和42年に亡くしています。
また、章一郎は弟の茂二郎をシベリア抑留で亡くしており、北方からくる春の流氷にはなにか思うところがあったと思われます。流氷がまさに漂いはじめる場面に、そのことが心をよぎったのかもしれません。
時代はベトナム戦争の最中、歌集名の『硝子戸の外』は、硝子戸の中にいる自分であっても外の世界に目をやり、知り、「現代に生きてゆく力をみすからの短歌に獲得」しようという気持ちからきていると章一郎はあとがきで語っています。
そんな生き方のようなものが一首ににじむ歌ではないでしょうか。
実は章一郎さんは、その時代の方にしては悪筆の部類に入ったらしく、特に走り書きした黒板の字は読みにくかった!と聞いたことがあるのですが、「こうやってきちんと表具にするといいわねえ・・・」とは古くからの会員の方の言葉。
さて、話が長くなりました。
こんな感じでページ付けなどがさくさくっと終わります。
一冊分の原稿は、ひとつの袋にまとめられて印刷所へ送られます。
翌月の半ばから校正など最終チェックなどを経て、月初めに会員の手元に届けられます。
編集その他はボランティアですが、瑞泉寺ではお抹茶が出ました。
塩風味のどら焼き、おいしゅうございました・・・。
あと、晩春の緑の中をうぐいすが鳴いていて、うっかり成仏しそうになりました。
お庭。
まひる野は常に新入会員大募集中です。
日々のさりげないこころの動きを残したり、
自分なりの生き方や哲学を形にしたり、
言語を使った芸術を目指したり、
短歌を始める動機はいろいろあると思いますが、
どのような形であれ短歌に興味が向いた方は是非ご入会ください。
月に一回締め切りがあることは、結果的に継続する大きな力となります。
会員は、月に一回10首まで投稿できます。
選歌委員による選歌ののち、上限8首まで掲載されます。
会費は半年ごと、または一年ごとに前納となります。
新入会員は作品Ⅲ欄に所属し、会費は半年ごとに6000円です。
短歌結社には各結社ごとのムードや目指す方向があります。
ご自分が目指したい歌風とまひる野が合っているかどうかの検討のため、見本誌をさしあげています。
ご希望の方は
までご連絡ください。お問い合わせ、入会案内も同じアドレスです。
尚、このホームページにもまひる野誌掲載の短歌の一部を公開しています。ご覧ください。
また、会員が短歌総合誌などに執筆したものの掲載情報も更新しておりますので、
お近くの書店や図書館などで現在活躍している会員の歌論や歌風をご確認くださってもいいかと思います。
新入会、お待ちしています!