夫と死別という経験は
20代ではかなりレアなケースなんだと思う
いまだにご主人が亡くなった友達はいない
親さんもまだご健在かどちらかはご健在
アラフォー過ぎてから
親さんがガンになったとか
闘病中という話を聞くようになった
私は父を30代半ばでガンで亡くした
そういった身内を見送ることが人よりも早いほうかもしれない
20代 まだ独身の友達もいる年齢で
いきなり 1歳の子供と2人の生活になった
それまでは 夫の看病と育児を両立しなければならなくて
今のように 完全看護の時代ではなく
病院には 義母と交代で泊まり込んでいた
病院では 末期ガンの夫の痛みが増し
日々 やせ細って苦しんでいく夫の身体をホットタオルで拭き
シャンプーをしてあげる
毎日 頭を洗ってあげることは
体力的に無理で
やはりそういうことは 義母には頼めないようだった
私が泊まる日にシャンプーしてドライヤーで乾かしてあげる
夫は 清潔好きで 本当は 毎日 洗いたかったろう
そんな夫の ガンにむしばまれていく姿を見ていて
最初は 奇跡は起こる と信じ
保険の効かないものを取り寄せたり
他の病院の先生に協力してもらってリンパ療法も併用したり
できる限りのことをした
神経質な夫は
当時はずっと個室に入院
部屋代は 医療費ではないので戻ってこない
毎月 何十万とかけていた
わずか3年あまりの結婚生活で
預金も 尽きそうになるほど
その間 様々な葛藤が生まれる
もう これは 望みがないな と思うほどの状態になる
何ヶ月も食事も水分も摂っていない
激やせし骨と皮
長期の痛み止めのモルヒネで 意識もはっきりせず
まともに会話もできなくなってくる
家に帰ると 子供の世話
まだ 言葉もまともに話せない歳
話し相手にはならない
そんな状態で
だんだん もし 夫が亡くなったら
私はどう生きていくんだろう
そう考えるようになる
でも まだ 病院に行けば生きている
家にいないだけで
世間的には 家庭のある身
寝たきりでもなんでも 夫が生きている状態と
もし 亡くなってしまって
私がこの家の大黒柱になることは
全く 想像もつかなかった
そして 夫が亡くなる
喪主としての 葬儀も初めて
看病の疲れと 育児もあり
私も痩せてしまっていた
頭は働かなかった
目の前のことを こなしていくだけ
寝込んでいられない現実が待っている
まだ 子供も幼い
ここからが 本当の意味で
私にとって 辛い人生の始まり
夫という相談相手がいない
子供が1歳
すべて 自分で決断し行動しなければならなくなった
親や義実家などは 時代も異なるし
実際 死別も経験していないから
私の本当の思いなんて わからない
義父から言われた
どこどこの奥さんは
戦争で旦那さんを亡くして一人で立派に育ててきたんだから
と 戦争時代と比べられ
その言葉から 再婚するなと遠回しに言われた気がした
戦争時代は そういう人はたくさんいただろう
もしかして これは 慰めの言葉だったかもしれない
でも あまりにも 時代が違いすぎる
無我夢中で生きていく
すべて 自分で決断する
ちょっとしたことで 相談したり頼ることもできない
まわりに若い時に死別の経験のある相談相手もいない
また 同じ死別でも
アラフィフとなった今になって
子供が社会人で夫が亡くなるのとは
全然違うのだ
現実は厳しいものだった
これからお金のかかる子育て
若い時の死別は金銭的にもとても大変なんです
年も若く これから一緒に子育てしていくというときに。。
夫が亡くなったばかりで
幸せな家庭のあるママ友なんて作れない
子供が1歳のシングルマザーなんてまわりを見渡してもいない
みんな幸せ一杯なんだから
当たり前に 夫婦で助け合っていることが
全くできない
ちょっとした 今日の出来事を聞いてもらうことも
車の助手席に乗せてもらうこともない
すべて 自力でしなければならない生活が始まる
ゆっくりしてる暇はなかった
あれから もうすぐで23年
子供にふいに
もし戻れるとしたら 何歳に 戻りたい?
と聞かれた
私は すぐに
「生まれる前」
と答えた
私にとってどんなに辛い人生だったか
この世に もう生まれたくない
父が亡くなってからは
実家でも弟の母イジメとニートという問題があって
実家も背負ってしまっていた
頼れるところがない
なぜ私ばかりに降りかかるのか
義実家や実家という簡単に切り離せないところで
問題が発生する
避けられない苦しみ
それだけ 乗り越えてきたものが壮絶で
また あの体験をいつかするのかと思うと
ゾッとする
過去には戻りたくない
そりゃあ 楽しかったこともある
子供の成長が 一番の生きがいだった
子供がいたから なんとか頑張って来れた
社会復帰していろんな人と知り合うこともできて
バリバリ仕事をすることは楽しかったことでもある
ひとりの人として いられる場所
母でも未亡人でもなく
ひとりの社会人 私としてそこにいられた
年齢的にも
配偶者や ご家族を亡くされた人の
少し 先を歩いてきた
本来 誰しも経験する死別
特にお子さんが幼くして ご主人を亡くなれた人の
亡くなってからの 葛藤や不安
心の 浮き沈み
もう立ち直ったと 思っても
また繰り返し襲ってくる 絶望感
その繰り返しも よくわかる
そんな 1年や 2年で
簡単に 立ち直れないってことを
夫の代わりは 誰にも埋められないんだから
(中には すぐ再婚されて 新たな人生を生きる人もいるだろう)
焦って 気丈に振る舞わなくてもいい
だって 無理なんだから
それは 痛いほど経験して わかってる
そんな自分を責めなくてもいい
何かを恨んでもいいじゃない
記憶はそんなに簡単に消える物じゃないから
記憶は 上書きされていくことで
薄れていくのだから
無理に 元気にならなくていい
落ちるときは とことん落ちる
あとは 上を見るしかない
中途半端に 元気を装わなくてもいいんです
大丈夫 あんなに弱かった私でも
なんとか乗り越えられたんだから
そんな私は
やっと 長い長いしがらみからも抜け出し
誰も知り合いのいないこの土地で
人よりちょっと早い隠居生活のような
穏やかな生活を送っている
いつも お読みくださりありがとう