ニッポン異国紀行 在日外国人のカネ・性愛・死 (NHK出版新書) | 誇りを失った豚は、喰われるしかない。

誇りを失った豚は、喰われるしかない。

イエスはこれを聞いて言われた。
「医者を必要とするのは、丈夫な人ではなく病人である。わたしが来たのは、正しい人を招くためではなく、罪人を招くためである。」
(マルコによる福音書2章17節)

本書は在日外国人の生活の実態を遺体の

 

冷凍空輸、韓国系教会によるホームレス支援、

 

夜逃げ補償つきの結婚紹介所などから追った

 

ものです。

 

異国の地で生きるということの難しさと彼らの

 

逞しさに心打たれます。

 

 

 

 

あまりそのときのことは詳しく書くことができませんが、

 

僕は20代の半ばくらいまでに、ここに描かれている

 

ような環境に生きる人たちのコミュニティーを覗く

 

こともできれば、彼らの生態を間近に感じる環境に

 

身をおいていたことがあったり、他の方の書いた

 

ノンフィクションなどを参考にしながらここにも

 

取り上げられている新大久保界隈によく出没して

 

いたので、この本を読みながら彼らの息吹や彼らの

 

生活の『におい』香辛料や、油のにおいが主だった

 

かと記憶しておりますが、そんなものが行間から

 

漂ってくるような感じがして、読み終えたあとに

 

不思議な気持ちになったことを覚えております。

実を言うとこの本を読み終わる前にyoutubeに

 

アップロードされた筆者のトークショウのイベントで、

 

この本について語られてある動画を拝見させて

 

いただいてから残り半分を読み終えるような感じ

 

だったので、後半部に入ったときにはより生々しく、

 

ここに描かれてある事象の数々が頭に浮かび

 

ました。

 

内容をざっと垣間見て言うと、日本でなくなった

 

外国人の遺体の冷凍空輸、韓国系教会による

 

ホームレス支援、や果ては夜逃げ補償つきの

 

結婚紹介所など、『日本に住む外国人』のカネ・性愛・そして、

 

死などの事象を追って日ごろわれわれが知ることが

 

ないであろう在日外国人の実態を描き出した

 

ルポルタージュです。

のっけから頭をガツーンと殴られるような衝撃を

 

受けたのは日本で死んだ外国人がエンバーミング、

 

いわゆる防腐処置を施されて母国へ移送されたり、

 

宗教上での埋葬方法の違いに関する話は以前

 

読んだ『死都ゴモラ』の中にコンテナに満載された

 

中国などのアジア系の人間の冷凍された遺体を

 

船から荷降ろししている場面があって、ここには

 

書いておりませんが、こういうことが『カモーラ』

 

などのような国際犯罪組織などにとっての「シノギ」に

 

なるのかなということを連想しながら遺体に関する

 

話を読んでいたことを思い出しました。

さらにはエンバーミングという技術の成り立ちと

 

その発展が描かれていたり、韓国女性が退去して

 

日本の歓楽街でネットなどを活用して『店』を開き、

 

閑古鳥が鳴くようになると潮が引くように地方へと

 

去り、そのせいで地方で昔から営業していた彼らの

 

影響を受けて軒並み潰れていったりするさまや、

 

『売春島』と呼ばれるところでは、現在はいくつもの

 

事情を抱えてかえるに帰れなくなったタイ人が

 

いたりする、という話。新大久保の界隈でホームレスに

 

対して炊き出しを行いながら布教を行う神父と

 

女性ホームレスのエピソードには

 

『支援する側とされる側』

 

という関係というものが描かれていて、自身の

 

経験から

 

『なるほどなぁ。得てしてそういうことはあるもんだな』

 

ということを感じて、しんみりとしてしまったことを

 

思い出します。

そして、章の合間合間にはさまれている

 

「ガイジンに聞け」

 

というショートコラムがなんとも面白く、日本にある

 

インド料理屋のほとんどはパキスタンやネパール、

 

バングラデシュの人たちが作っていたりすることが

 

多い、という話や中古車を海外に輸出する際の

 

現地人とのネットワークについてのお話は非常に

 

印象深いものがございました。

これを読みながら、現在ではおそらく二度と会うことは

 

ないであろうと思われる『彼ら』のことを思い出して

 

しまいました。

 

『異国の地で生きる』

 

ということのしんどさと彼らのたくましさ。

 

その一端を見たこととこの本を読めたということで、

 

自分の生きてきた道が決して無駄ではなかったと

 

いうことを、たった今気づいた次第でございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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