浮浪児1945‐: 戦争が生んだ子供たち (新潮文庫) | 誇りを失った豚は、喰われるしかない。

誇りを失った豚は、喰われるしかない。

イエスはこれを聞いて言われた。
「医者を必要とするのは、丈夫な人ではなく病人である。わたしが来たのは、正しい人を招くためではなく、罪人を招くためである。」
(マルコによる福音書2章17節)

作家、石井光太氏が5年の歳月をかけて取材し、

 

まとめあげた終戦直後の焼け跡に取り残された

 

戦災孤児の行方を追ったノンフィクションで

 

あります。

 

上野を中心に彼ら彼女らの生々しい息遣いを

 

浮き彫りにします。

 

 

 

 

本書はノンフィクション作家、石井光太氏が、

 

5年の歳月を費やし、1945年3月10日未明に

 

起こった東京大空襲をきっかけとして、終戦直後には

 

12万人以上にも膨れ上がった「戦災孤児」たち。

 

石井氏は彼ら彼女らの証言を丹念に拾い集め、

 

綿密な取材を重ねて書籍化されたもので

 

あります。

 

石井氏が世に問うた作品はそのどれもが非常に

 

重い内容で、読み終えた直後には何も考えることが

 

できなくなってしまうことがほとんどなのでありますが、

 

本書もまたしかりであります。

終戦直後、焼け跡に取り残された戦災孤児たちは

 

「ノガミ」と呼ばれた東京は上野駅界隈に集まって

 

寝泊りするようになり、そこから彼ら彼女らは過酷な

 

運命へと巻き込まれていくのです。


「物乞いをし、日本各地を放浪し、残飯を食し、

 

犬を殺し、強奪をしながら」


更にはテキヤやヤクザの「下っ端」として彼らの

 

「シノギ」を手伝うようになったり、「パンパン」と

 

呼ばれた娼婦たちとの交流が描かれる中で、彼らには

 

上野周辺の「浄化作戦」が行政によって行われ、

 

配乗された浮浪児たちは孤児院に収容されるなど

 

していくのであります。

僕が本書を読んでいて幾度となく頭に浮かんだのは、

 

あるテレビ番組で本書の取材を行っていた石井氏と

 

共に自身もまた元浮浪児で、現在は作家の

 

石原伸司氏が、上野駅界隈を歩きながら当時の

 

ことを語っている場面でした。

彼らの口から語られる


「がむしゃらに生きた」


という言葉が色褪せ、過去へと押しやられていきつつ

 

ある現在、本書に描かれている


『人間が生きることの力強さ』


について、改めて思いをはせることが大切なの

 

かもしれません。

 

なかなか難しいことではありますが、本書を読んで、

 

考えたことはそんなことでありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

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