へらへらぼっちゃん (講談社文庫) | 誇りを失った豚は、喰われるしかない。

誇りを失った豚は、喰われるしかない。

イエスはこれを聞いて言われた。
「医者を必要とするのは、丈夫な人ではなく病人である。わたしが来たのは、正しい人を招くためではなく、罪人を招くためである。」
(マルコによる福音書2章17節)

芥川賞作家、町田康氏のエッセイ集です。

 

バブル期に世の中が浮かれている間、三年間も

 

何もしないでただただ酒を飲み落語を聴き、時代劇を

 

朝から5本も6本も見倒していた時期のことがメインで、

 

面白いです。

 

 

 

 

 

現在でこそ伊豆のほうに家を構え、東京にある事務所

 

とを往復し、愛犬や愛猫たちに囲まれて暮らす町田康氏も

 

バブル期には本人曰く『金無く、職無く』という日々で

 

『土中三年時代』と後に回想する、三年間―。毎日毎日酒を

 

飲んで、上方落語に耳を傾け、時代劇を朝から晩まで5本も

 

6本も見倒し、図書館に通いつめては片っ端から本を読み

 

漁っていた時期のことを書いたエッセイです。

 

僕はかつて、これとまったく同じ時期を送っていたことが

 

あって、今回この本を再読したときに、そのときのことを

 

思い出してなんとも言いようも無い気持ちになりました。

でも、エッセイの内容としては抜群に面白いです。特に、

 

全うな社会生活を送らずに、もしくは送ることができないで、

 

鬱屈した時期を送ったことのある人間にはある種の

 

『救い』であることは否定できないでしょう。それにしても

 

三年もの間、ただただ『喰らい酔って眠りこける』こういう

 

生活は辛い勤めを送る人たちにはある種の『ユートピア』

 

かも知れませんが、そのいったんを経験した人間からいうと、

 

それはそれでやっぱり辛いものです。

それでも、そういう自分の中にある『闇』を見つめ続けた

 

からこそ、町田氏は小説化として、新たな一歩を踏み出す

 

ことができたのだと、確信しております。

 

個人的な意見ですが、人生にはどこにも所属していない、

 

という時間が何年か必要ではないか? などとそんなことを

 

思うのです。

 

その先達が書いたものとして、町田氏の言葉には耳を傾けて

 

みるといいと思います。

 

ただし、どんな結果が生じても、それを納得して受け入れる

 

『覚悟』も必要であることを最後に付け加えておきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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