「かえるのうた」の正式な題名は?歌詞は?ルーツは?謎と解答のまとめ | 感謝のブログ

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「かえるのうたが きこえてくるよ・・・」

 

およそ日本に住む人のほとんど100%(外国人の方々は除く)が知っていて、かつ歌えるであろう、
「かえるの合唱(かえるのうた)」。

実は結構「謎」が多いんですね。

 

そもそも、「元はドイツの歌である」ということ自体も知られていないのですが、
他にも様々な疑問が結構、ネットで取り上げられているのです。

 

1.そもそも、「かえるの合唱」と「かえるのうた」、どっちが正解なの?
 

2.歌詞の最後、「●●●● クワックワックワッ」の部分。「ゲロゲロ」とか「ケロケロ」とかあるけど、正式な歌詞は?

3.本場ドイツの人が「知らない」って言ってるらしいけど、本当に由来は「ドイツ民謡」なの?
 

4.オリジナルのドイツ語版も、カエルをテーマにした歌だったの?
 

5.なんで「本場でマイナーな歌」が、日本でこれだけ有名になったの?
 

6.「元のドイツ語歌詞」が結構ネットに出回ってるけど、あれは本当に正解なの?

など。

 

日本の童謡はもともと、外国曲が非常に多いんですよね。

(まあ五線譜自体が西洋のものですしね。当たり前と言えば当たり前ですが。)

それにしても「ドイツの人がカエルの合唱を知らない」というのは、私も驚きでした。

そこで調べてみたところ、それぞれの謎に対する解答を得る事ができたので一応まとめておきます。

 

1.そもそも、「かえるの合唱」と「かえるのうた」、どっちが正解なの?

→ 「かえるの合唱」が正解です。

 

2.歌詞の最後、「●●●● クワックワックワッ」の部分。

「ゲロゲロ」とか「ケロケロ」とかあるけど、正式な歌詞は?

→ 正式な日本語歌詞は「ケケケケ」です。

 

3.本場ドイツの人が「知らない」って言ってるらしいけど、本当に由来は「ドイツ民謡」なの?

→ 由来となった歌は、歌詞まで含めた「歌」としては確かにドイツの歌です。

 

4.オリジナルのドイツ語版も、カエルをテーマにした歌だったの?

→ YESです。
日本語の歌詞は、「元の歌詞を翻訳した上で、歌いやすくするために少し変えた」ものです。

 

5.なんで「本場ではマイナーな歌」が、日本でこれだけ有名なの?

→ 戦前、この歌を聞いた日本の教育者が
「音楽教育上、極めて優れた歌になる」と判断し、
歌いやすい日本語歌詞にした上で、積極的に音楽教育に取り入れたからです。


6.「元のドイツ語歌詞」が結構ネットに出回ってるけど、あれが正解なの?

→ ほぼ合ってますが、一部、間違いが含まれている事が多いので引用は注意
なお「ケケケケ」の部分は、aに点々(ウムラウト)が付いた ””が正解ですが、
ウムラウトが文字化けするために「kae」と表記しているサイトが多いようです。
(※下、ソース画像1参照)

 

・・・いかがでしょう。

意外だったでしょうか、順当だったでしょうか?

それぞれ、以下に多少の補足をしていきます。

 

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<お知らせ>

「かえるのうた」同様に、ネットで諸説が入り乱れていた

「【サカバンバスピス】の名前の由来」についても

調査結果をまとめました!

ご興味があれば、ぜひご覧ください。

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1.そもそも、「かえるの合唱」なの?「かえるの歌」なの?

→ 正式な邦題は「かえるの合唱」です。
JASRACにも、それで登録されていますので、特に議論の余地もないかと思います。

(さらに厳密に言えば、JASRACには平仮名の「かえるのがっしょう」として登録されています。ただ、一般の唱歌本では「合唱」という漢字表記が普通ですね。)

ではなぜ「かえるのうた」と多くの人が認識しているかと言えば、

 ・歌詞が、「かえるのうたが~」で始まる

 ・特に小さな子供にとっては「合唱」より「うた」の方が言いやすい

といった理由から、「かえるのうた」が「通称」として広まったためです。

 

2.歌詞の最後、「●●●● クワックワックワッ」の部分。「ゲロゲロ」とか「ケロケロ」とかあるけど、結局何が正解なの?

→ 元々のドイツ語の歌詞が「ケケケケ」に近い音であり、日本語の歌詞もそれに準じて「ケケケケ」と訳詞(※)されました。

従って「唯一の正解」をどうしても求めるのであれば、「ケケケケ」が正解である、という事になります。

(※: 一般的な歌の本では「作詞:岡本敏明」と書いてる事が多いのですが、JASRACの登録は「作詞」ではなく「訳詞」です。

実際には、後述するように岡本氏は原文を単純に翻訳したワケではないのですが、それでも「訳詞」として登録されたのは「あくまでも原文の意味に沿った日本語の歌詞にしたよ」 という意思の現れと思われます。)
 

ただし。

この曲の日本語歌詞を作った岡本敏明氏は、
「とにかく子供が楽しく歌を歌う事こそが一番重要である」

という考えだったために、「ケケケケ」が「ケロケロ」になっても「ゲロゲロ」になっても気にしなかったらしいです。
(※下、ソース画像2参照。)

 

別途紹介する朝日先生(玉川学園)の論文には、岡本氏がむしろ、このような歌詞の変化について
「生真面目に楽譜を見ながら歌うのではなく、生活の中で自然と、楽しく歌い継いだ結果」だ、
として喜んでいたのではないか、と書かれています。

(そもそも、昭和31年に教科書の歌詞を「より、歌いやすいように」と「ケロケロ」に改定したのも岡本氏であるとの情報もあります。ただ、これは確認が取れませんでした。)

 

3.本場ドイツの人が「知らない」って言ってるらしいけど、本当に由来は「ドイツ民謡」なの?

→ この歌を岡本敏明氏に教えたのは、ドイツ人ではなくスイス人のWerner Zimmermann(※)だそうですが、
その際にはラインラント地方の歌として伝えられたようです。

(一番初期の楽譜には、現在のような「ドイツ民謡」とか「ドイツ曲」ではなく、「ラインラントの歌」と明記されていた事から、それが分かります。)
 

(※カナ表記は、人によってチンメルマン、ツィンメルマン、ツィンマーマンなど色々違うので、割愛)


そしてラインラントとはドイツ西部のライン川沿いの地域ですから「ドイツ民謡」と言えるでしょうし、少なくとも作詞者は間違いなくドイツ人です。(ドイツ語歌詞の作詞者については後述)


もし「ドイツの人」にこの歌を知っているか聞くのなら、ベルリンやミュンヘンの人ではなく、
ボンやデュッセルドルフあたりの人に聞けば知っている確率が高くなるのではないでしょうか。

 

ただ厳密に言うと、「かえるの合唱」のドイツ語歌詞を作った人は明確に判明しているものの(後述4.)、メロディのほうは古すぎる民謡であるため作曲者不明となっています。

従って、
「かえるの合唱」という歌(「♪ドレミファミレド・・・」の旋律に、蛙をテーマにした歌詞をつけた歌)は、「ドイツの歌である」と確実に言える一方、
「♪ドレミファミレド・・・」の旋律そのものが本当にドイツで生まれたのか、と言うと、そこは完全には証明できていない、ということになります。

そもそも「民謡」なんて作曲者は不明なものが多いですが、特にそれが欧州のように陸続きで異なる国が沢山隣接している地域となると、「どこの国のものか」すらアヤフヤになってしまうワケです。

 

4.本当にカエルをテーマにした歌だったの?

→ オリジナルのドイツ語歌詞は6.に書きますが、間違いなく「カエルがテーマの歌」です。

作詞者は、ドイツ国家を作詞したアウグスト・ハインリヒ・ホフマンであると判明しているそうです。
(下、ソース画像3参照)
 

「ドイツ人に尋ねてみたら
”聞いた覚えはあるけど、カエルの歌じゃなかった気がする”
という感想を述べた」

という記述もネット上にはありますが、個人的な覚え違いか、その人が偶然、「別歌詞バージョンの歌」を聞いていた可能性が高いと思われます。

(曲自体は前述のとおり出所が不明の古いメロディのようですので、「他の歌詞を当てた歌」があってもおかしくないと思います。

日本でも「きらきら星」等、歌詞が複数バージョン存在する曲は多いので。)


 

5.なんで「本場でマイナーな歌」が、日本でこれだけ有名になったの?

→ 戦前、日本の音楽教育を担い、特に合唱の教育を日本に広めようとしていた音楽教育者の岡本敏明が、
Werner Zimmermann氏からこの歌を聞かされて
「歌、とりわけ合唱の大事な基礎を自然に学べる非常に優れた歌である」
と考え、音楽の教科書に掲載したのが日本に広まった理由です。

 

「子供向けの簡単な歌である事は分かるけど、”合唱の勉強”になるか?」

と疑問に思う所ですが・・・

実はこの歌、当初は
輪唱する事を前提とした、小学校4年生向けの教材
として教科書に掲載されたのだそうです。
 

今では

「乳幼児が一番最初に覚える、日本で一番簡単な歌」
みたいな位置づけの「かえるの合唱」ですが、最初の位置づけは合唱(輪唱)用教材だったのですね。

 

実際、この日本語の歌詞は、元のドイツ語の歌詞からあえて少し中身を減らす事で
「1つの音符に1つの仮名だけが当たる」

状態になるように工夫されているのですが、それは

「とにかく歌いやすい」

だけでなく、

輪唱した時に、和音が綺麗に聞こえる」

事をねらったものだそうです。

1つの音符に複数の仮名が入っていると、子供たちが歌った時にはガチャガチャした感じになりますからね。

「かえるの合唱」は、輪唱してこそ真の価値が出る。という事でしょうか。

タイトルが、ドイツ語の直訳である「かえるのうた」ではなく、「かえるの合唱」とされているのも、そういう意図が込められているのかもしれませんね!

 

 

6.「元のドイツ語歌詞」が結構ネットに出回ってるけど、あれが正解なの?

→ 今、ネットを検索すると「世界の民謡・童謡」さんを始めとして
ほとんどのサイトでは以下のドイツ語歌詞が掲載されています。

---
Ganze Sommer nächtelang,
hören wir den Frosch gesang;
quak quak quak quak,
kae kae kae kae kae kae kae kaek
quak quak quak.
---

 

しかし、赤字部分は注意が必要に思われます。

 

まずnächtelang に関しては、

nächteは英語のnight、lang は英語のlongで、別の単語です。
従って、間にスペースが必要です。
※この点についてはドイツ語文法の見地から別の指摘あり:以下の追記(2023/4/15)をご確認ください

 

Frosch gesang は、スペース無しの 「Froschgesang」が正解のようです。
元の楽譜が1語につなげて書いてあるのもさることながら、

Google翻訳でドイツ語から英語への翻訳をかける際、
スペース無しの1語とすると、英語は「Frog song」(かえるの歌)

となる一方、スペースを入れると「Frog singing」(かえるが歌うところ)となります。

 

それから、「ケケケケ」の部分。

上述したとおり、実際は全編通じてaに点々(ウムラウト)が付いた、「kä」です。
(※ソース画像1参照。)


文字化け対応として「kä」を 「kae」と表記するのはともかく、
最後だけ「kaek」となっているのは誤りでしょう。

(一部サイトでは、
前半部分(nächte、等)についてはウムラウトを使用しているのに
後半だけ「kae kae」にしたりしています。
これは誤解のモトなので表記を統一頂きたいところです。)

 

なお「kä」の発音は、あまり唇などにちからを入れない「ケー」となります。

そうなると、「ケケケケ・・・」の部分はスタッカート風に「ケッケッケッケッ・・・」と歌うのではなく、
テヌート風に「ケーケーケーケー・・・」と歌うのがオリジナル方式、と言えそうです。

 

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追記:

「世界の民謡・童謡」サイトさんの歌詞は現在、すでに修正を頂いております。
ご対応ありがとうございました。

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2023/4/15 追記:

歌詞については、コメント欄(コメント番号6.)において

「Ganze Sommer nächtelang」が正しいはず

とのご指摘を頂戴いたしました。
「nächtelang」一語で、「夜通し」という意味だそうです。


私は昔の楽譜の表記(Sommernächte lang)を基としつつ、

Google翻訳の結果等から類推して記事を書きましたが

ドイツ語文法的には、
Sommer nächtelang」のほうが正しいようです。

詳しくはコメント欄をご覧くださいませ。
 

「かえるの歌」の謎をまとめたいと願う私にとって
このような御指摘は実にありがたく、

今後とも是非、お願いしたいところです。

「窓月」さま、ありがとうございました。

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以上が、「かえるの合唱」にまつわる各種の謎と、それへの解答まとめになります。

 

 

ちなみに一部では、
「ケケケケ」が「かえるの合唱」、「ケロケロ」が「かえるのうた」である
みたいな情報まで流布されていましたが、
これは完全な間違いと断言できます。

上述の歴史的経緯等を御覧いただければ分かると思いますが、
タイトルと歌詞には何の連動性も無かったのです。
ただ単純に、

「みんなが楽譜でなく、記憶を頼りに歌い継いだゆえに微妙なズレが発生していった」

だけなんですね。
従って、日本中の人に聞いて回れば
 

◆タイトルも歌詞も正式なバージョン

 (「かえるの合唱」、かつ、「ケケケケ」)

 

◆タイトルは正式なバージョン(「かえるの合唱」)で覚えていたが、
 歌詞は変化したバージョン(ケロケロ、ゲロゲロ、ゲコゲコ、ゲゲゲゲ、等々)

◆タイトルは変化したバージョン(「かえるのうた」)で覚えていたが、
 歌詞は正式なバージョン(ケケケケ)

◆タイトルも歌詞も変化したバージョン

の、全てのパターンの人々がいるはずです。
 

この辺の事実のうち、多くについては

2015年に玉川大学の朝日 公哉(あさひ こうや)先生が
論文にまとめておられますのでそちらを参照されるのが良いでしょう。

『岡本敏明の輪唱教育論』(朝日 公哉、2015年)

 

 

以下、ソース画像となります。

いずれも、「新・輪唱のたのしみ」(岡本敏明・小山章三 編、音楽之友社、1996年)より引用。
なお、一部画像の中にある赤い線は私が引いたものです。

 

※ソース画像1:ドイツ語歌詞(46ページ)

 

全編、「kä」であることが分かります。

 

(この部分だけなら、「著作権の切れたドイツ語歌詞」に
「読みがな」がふってあるだけの状態なので
きっと著作権の問題は発生しないはず・・・)

 

※ソース画像2:歌詞の改変に関する、岡本氏の考え(のヒント)(巻末)

岡本敏明氏ご本人のコメントです。

「みんなが楽しく歌える事が第一で、歌詞は(乱暴に言えば)何でも良い」

みたいな事が書かれています。

 

※ソース画像3:ドイツ語歌詞の作詞者(46ページ)

 

原詩は、ハインリヒ・ホフマン・フォン・ファラースレーベンであることが分かった、と書かれています。

 

文末に「 (小山) 」とある通り、この文章は「新・輪唱のたのしみ」の編集者である小山章三氏によるものです。

小山章三氏は国立音大の名誉教授であり、何より岡本敏明氏の一番弟子と言われた人物ですから、情報の精度は全く心配ないでしょう。この記述は、1957年(昭和32年)に発行されたオリジナルの「輪唱のたのしみ」には無く、1996年の「新」の方で追加された記述ですので、結構あとになって分かった事なのでしょうね。

(※なお小山氏は、昨年(2017)の年末近くに亡くなられました。ご冥福をお祈り申し上げます。)

 

 

※追記

ドイツ語歌詞について、一番問題の大きかった
「ケケケケ」の部分だけは画像を「ソース1」として
掲載していましたが
全編、こちらに転記しておくことにしました。
(出典はソース1画像と同じ、「新・輪唱のたのしみ」です。)


***かえるの合唱(かえるのうた)
ドイツ語歌詞 完全版***
Froschgesang

 

Ganze Sommernächte lang,
ガンツェ  ゾンメル  ネヒテ   ランク

(夏の夜の間じゅう)
hören wir den Froschgesang;
ヘーレン ヴィルデン フロシュゲザング

(かえるの歌が聞こえる)
quak quak quak quak,
クヴァック クヴァック クヴァック クヴァック

kä_kä_kä_kä_käkä kä_kä
ケ  ケ  ケ  ケ  ケ  ケ  ケ  ケ
quak quak quak.
クヴァック クヴァック クヴァック

************************

 

注1
「Sommernächte」(Summer night)は、楽譜によれば1語です。(以下参照)

「新・輪唱のたのしみ」46ページ。

(アルファベットがハイフン(-)のようなものでつながっており、赤い線のかたまりで1語のように記載されています。)

 

注2
「ケケケケ」部分のアンダースコア有り/無しと
スペース有り/無しは、楽譜のとおりに書きましたが
意味は不明です。
ご存じの方、教えて下さい。