アンネの日記、ユダヤ人に課せられた多くの禁止令を列挙して、登場人物ジャックが言うセリフです。
現代の日本に生まれた私たちは、自由です。
これをしたから虐殺される、逮捕されるという制限は、ありません。
ところが、法的に禁止令が無くとも、自分で自分に禁止令を出しているのです。
なぜ自分で自分に禁止令を出すのか。
それは、禁止令を出さなければ、自分の存在が揺るがされるか、尊厳が失われるか、見捨てられる危険性を感じてきたからです。
ディスカウント(値引き)されて、
「お前には価値がない」
「お前は存在しないほうがいい」
「お前は必要ない」
と言われてしまう危険があった。
だから禁止令を忠実に守ることによって、自分の価値を保ち、自分が存在していい言動、考え方を身につけてきたのです。
禁じられること自体は当然ストレスですが、「禁じられてるんじゃないか」と思うだけで、ストレスです。実際は禁じられていなくとも。
現代は、目に見える禁止令は取り払われています。
問題なのは、目に見えない禁止令です。
具体的にいえば、差別的な目で見られる、風評被害を受けるということです。
そういったことが無くても、人は、ディスカウントされる、価値を下げられる、馬鹿にされる、下に見られる、そういうことを恐れ、回避しようとします。
目に見える禁止令が無くなった分だけ、なにをやってもいいように見えながら、逆に、なにをしてはいけないのか、これさえしなければ自分はOKという安心感はなくなり、漠然とした不安にいつも苛まれるようになるのです。
「どのようにしてもいいよ」
と言われながら、やってみたら
「なんでそんなことするの」
と言われてしまう。
ダブルバインド(正反対の指令)を受けて、一体どうしたらいいのか、方向を定めることができない。
なにをやっても、値引きされてしまうのではないか、という不安といつも隣り合わせになっている、見せかけの安心感。
実はこういうものもある、ということを、知ってもらいたくて書きました。