東方の国から流れて来た剣士は一風変わっていて
ずっと旅の中に生きていた
世界中の空が真っ赤に燃えた時代に
旅の寄り道と言って戦った剣士
数年後に故郷とは違う島に渡り
やがて旅の途中で病いに倒れたと聞いた
最期まで楽しそうだったと
旅の中に生きていたかったのだと
落ち着くこと安住することはついに
病いを患ってでさえ思わなかったようで
長生きしてほしいと願う気持ちはあったが
あの剣士らしい生き方だといま安心する
東方の国から風のようにやって来て
疾風の剣捌きと凪いだ心で
きっと次ぎの世界に吹かれていったのだと皆が言う
次ぎの世界で新しい旅を生きていると
出発するのは決まって夜明け
最後の戦いはそこからぐるりと島を一巡りして、深い洞窟のさらに奥へ
人では無いものたちの怒号が轟いていた
次ぎの夜明けにわたしたちは帰って来た、いつも
挑む度に仲間は入れ替わり、消えていった仲間は還らない
幾人かは元の生活い戻り、いまだ異形のものたちに挑むわたしたちは
もう彼らとは会わない
帰ってきて、そして安らぐ時には違う夜明け
もう戻らない日々と
ほんの少しだけ訪れる安堵のときと
本当の夜明けはまだ来ない
空を仰いで遠く離れた人を想う
風の中で手を広げて駆ける
深い森の岩の上に座して今日を振り返る
海辺に降り立ち潮風に吹かれる
大地に寝て自然の氣を体いっぱいに集める
星を眺めて夢に落ちる
穏やかで優しくて
あなたのいた日は遠くなるけど
こうして風に緑に潮に土に
抱かれかつてあなたがそうしたように
強く抱きしめ安堵のなかで眠る夜が
やがてまたくることを感じる
夏の終わりに
旅の終わりに