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Poetry Of Soldiers

歴史に残らない英雄たちの言葉

 

 最後の戦闘があった地点からだいぶ遠くに飛ばされたようだ。意識を取り戻した時にいた地は、それまでに会ったことのない民族の集落だった。言葉もほとんど通じず、当初は困惑することばかりだった。あいつだったらこんな状態でも楽しめるのだろうな。ひとりの仲間の顔が浮かんだ。そしてきっとこう言うのだろう「友だちになればいい」、とか。あいつもほかの仲間たちも無事ならいいのだが

 

 あの時からもうすぐ二年が経つ。言葉もだいぶ困らなくなってきたし、ここは思いのほか住み心地の良い場所だった。だからもうずっとここにいようかと素直に思えたが、あの戦闘が中断されたということは、使命はまだ果たされていないということだった。

 

 二年前に仲間の術によって強制的にこの地まで飛ばされた。それは仕方のなかったことだが、水中に実体化したのには参ったものだ。着ていた甲冑が戦闘のダメージで、もはや肩当てしかまともに残っていなかったことが幸いし、なんとか両肩に残った金属の肩当てを引き剥がし、実体化した川の対岸に辿り着いて一命を取り留めた。

 

 助かったのはこの地の民族が手負いだった自分を、なんの偏見も疑いも持たずに介抱してくれたためでもある。彼らにとっても自分は見慣れない民族であったはずなのに。

 

 その後も彼らは集落に留まることを許してくれた。傷が癒えたら出発しようという考えはいつの間にか消えていまに至る。ずっとここにいたいと思い始めていた。素朴で心優しい人々。平凡だが無事にすぎてゆく日々。けれども、それ以前の旅の目的を思うとずっと静かに暮らしていくわけにもいかない。

 

 あいつを倒さない限り、旅は終わらない。わかっていた。

 

 だからもう行こう。

 

 仲間たちはきっとまたあの地を目指すだろう。そして使命を果たしたらまた戻ってこようと思う。出発は明日。これは誰にも言わない。

 

 

 

 旅の中に生きずっと旅の途中でいたい。

 

 まだ見ぬ大地、自分と違う風習や起源をを持つ人々はむしろ友だちだ。風や水や土とだって友だちになれる。なぜ? と聞く人たちはきっと考えすぎている。生きることはもっとシンプルで楽しい。こうでなくてはならない、ということはきっとない。「きっと」というのもそれは自分の持つ価値観だからだ。そのためか「あなたが誰であってもいい」、「自分たちは友だちになれる」と言えるは幸せなことだ。

 

 出自や能力の差もあるだろう。それを理由に諦めるのではなく、もっと素直に自分を取り巻く全てのものを観察するんだ。

 

 悲観したり敵対するものばかりではなく、きっともっとシンプルなのだ。複雑にしてしまうのはいつだって人の思考だ。

 

 

 いまだって無事になんとか生きていて良かったと思う。術をかけた仲間に感謝している。あとはみんなをみつければいい。大丈夫、目的を同じにした者たちは互いに惹かれ合うものだ。時間はかかったとしてもまた会えるよ。

 

 

 


 努力は才能を超えることがあるのだろうか。だとしたら仲間であり弟子のようでもあった奇妙な娘はそれを実践して見せたことになる。奇妙と言ったのは、自分がかつてそんな人物に出会ったことがなかったからである。

 娘、とは言っても自分と2、3歳しか違わないのだ。しかし初めて会った時はそれよりはるかに年若く見えた。その頃は自分もまだだいぶ若かったわけだが、修業をつけたことを考えると、やはり子弟関係にも似た、あくまで師にあたる自分の方が若い娘を相手に魔術の手解きをしていたと言えた。

 覚えのいい方ではなかったが、こちらの話を熱心に聞き、真摯に学ぶ姿はとても微笑ましいものであった。

 いつの間にか高位魔法まで身につけていたのには心底驚いたが、その出来事は自分と仲間たちを新たな旅に送り出すきっかけにもなった。