アメリカに密入国し、グリーンカードを手に入れるために奔走する男と、その男に翻弄された女の物語。
アン・ソンギ主演ということで鑑賞。
アメリカンドリームを信じるペク・ホビン(アン・ソンギ)は、グリーンカードを入手できたら報酬を支払うという条件で、韓国系アメリカ人ジェーン(チャン・ミヒ)と契約する。
偽装結婚し、市民権を得たのでお役御免のはずのジェーンは、ホビンに愛を感じていて、二人は対立していく。
ホビンには身重の妻が韓国にいて、永住権が手に入れば、すぐに呼び寄せるつもりなので、彼にとってジェーン、永住権を得るための単なる道具であり、業者にすぎない。
しかしジェーンは、先に永住権を取得したことで、ホビンが思い描くアメリカンドリームの正体。それが決して公平でも、美しくもない現実であることを知っている。
だからジェーンは、ホビンに恋をしたというより、彼の中に「懐かしさ」を見ていたのではないかな。
だから、できれば韓国に帰りたかった。
かつての彼女自身も、ホビンと同じように希望に胸を膨らませてアメリカへ渡ったが、現実は思い描いていたものとは似ても似つかない世界だった。
銃口を向けるラストシーンを見ると、そう思う。
ダブル主演のチャン・ミヒは当時、いわゆる「全斗煥スキャンダル」の余波で、アメリカ生活を続けざるを得ない状況にあり、「アメリカでのオールロケで撮影する」という条件で出演を承諾したらしい。
そのため、すべての撮影がアメリカで行われたという。
「全斗煥スキャンダル」自体は単なる都市伝説と言われているが、彼女はこのスキャンダルによる外圧で韓国での芸能活動が難しく、アメリカへ「留学(実質的には追放)」状態に置かれていた。
そのため、「韓国に帰らなくて済むなら(アメリカで撮るなら)出る」という条件で出演が決まったという。
1989年に公開された韓国映画『ソウル・レインボー』も、まさにこの「チャン・ミヒと全斗煥のスキャンダル」をモチーフにした作品で、権力による芸能界支配を描写、精神病院への監禁、軍事政権の終焉と表現の自由を描いてる。
精神病院への監禁の描写は、権力者の妻による嫉妬や復讐、そしてヒロインが廃人同然にされる様子が描かれており、これが当時囁かれていた「チャン・ミヒが子宮摘出された」「監禁された」という都市伝説を観客に強く連想させた。
これは、事実かどうかに関係なく噂が独り歩きし、人の人生を左右してしまうという点で、今のSNSから始まる社会現象ともよく似てると思う。

