何がどうなったかわけわからん、説明されない異常事態の中へ放り込まれて、登場人物までだんだんおかしくなっていく映画。
心臓外科医のスティーヴン・マーフィ(コリン・ファレル)は、かつての患者の息子マーティン(バリー・コーガン)と密かに会っていた。
スティーヴンからすると患者遺族のケアのつもりだったが、マーティンには目的があった。
そうとは知らず、スティーヴンはマーティンを妻のアナ(ニコール・キッドマン)、長女のキム(ラフィー・キャシディ)、息子のボブ(サニー・スルジッチ)に紹介し、距離が急速に縮まっていく。
そんなある日、マーティンはスティーヴンに、自分の父親は酒を飲んだスティーヴンが執刀した手術で殺されたと言う。
その復讐として、家族の1人を殺せと言い、誰を殺すかは自由だが、誰も殺さなければ全員が死ぬと言う。
すでにボブに症状が出ていて、やがてキムにも症状が出ると警告する。
放っておくと手足が麻痺し、次に食事を拒否する。
最後は目から血が出て死ぬが、スティーヴンだけは助かるという。
半信半疑で聞いていたスティーヴンだが、やがてキムにも症状が現れ、事態は深刻になっていく。
幸いアナとスティーヴンには何の症状も現れないが、子どもたちの症状はどんどん進行する。
そこでスティーヴンはどうするか、という話。
マーティンを演じるバリー・コーガンと言えば、『リベンジャー・スクワッド 宿命の荒野』や『エターナルズ』、あと『THE BATMAN-ザ・バットマン-』かな。
いい役者さんやと思う。
スパゲティを食べるシーンや、自分の腕を噛みちぎるという、サイコ全開の彼の演技がとにかく不気味で、どうしてボブとキムがああなったのか分からないのに、観てる側はストーリーにのめり込んでいく。
スティーヴンはどこか他人事のような雰囲気だが、アナは目の前で子どもたちが次々と謎の奇病に侵されていく地獄から抜け出そうともがき苦しむ。
アナにマーティンの母親(アリシア・シルヴァーストーン)とのことも知られてしまい、四面楚歌となったスティーヴンが、男のプライドを振り回してマーティンを地下室に監禁してなんとかしようとするが、マーティンの狂気に怖じ気づき、すべてが空回りしていく。
ところが、このままいくかと思ったら、あろうことかアナが「子どもが1人いなくなってもやむなし」と言い出す。
ラストはありえない展開になるけど、それ以上にマーティンだけでなく、スティーヴン一家の異常さを見せつけて終わる胸クソの悪さが、悪い意味で後を引く。
とにかく、誰かまともな人間はおらんかったんか、という映画なので調べてみると、「アガメムノンと女神アルテミス、その娘イフィゲネイアの神話」が下敷きになってるのが分かった。
「家族の中から1人殺せ。そうしなければ全員死ぬ」という要求は、神話の「罪には同等の犠牲を」という理屈らしい。
つまり、自分が犯した罪の代償として、自分の家族を差し出せという話で、これを映画に重ねると、
- アガメムノン → スティーヴン
- 殺された鹿 → マーティンの父親
- アルテミス/呪いをもたらす側 → マーティン
- 犠牲にされる家族 → スティーヴンの家族
という構図になる。
まぁ、神話なので理屈はない。
何で子どもたちがああなったのかも説明されないままやけど、理屈抜きに怖かった。


