セルビアの国王ペータル1世の姿を通じて、第一次世界大戦下、戦いながらもセルビア軍と国民が、ひたすら逃げるだけの行軍を描いた映画。
セルビアの国王ペータル1世(ラザル・リストフスキー)が息子の王太子に行政権を譲った4日後、オーストリア=ハンガリー帝国は、皇位継承者がセルビア人青年に暗殺された「サラエボ事件」をきっかけに、セルビアへ宣戦布告する。
これが第一次世界大戦の勃発につながる。
実権を息子に譲ったペータル1世は復帰を請われ、戦地の司令部に合流することになる。
小さな村で母マクレナ(ダニカ・リストフスキー)とともに暮らしていた青年マリンコ(ミラン・コラク)は、手紙を書くと約束して従軍を決意する。
マクレナはマリンコに、「突撃する時は先頭も最後尾もダメだ」と、生きて帰るよう言い聞かせ、息子を送り出す。
軍隊経験のないマリンコは、同じ部隊の兵士ジオータ(ラドヴァン・ヴヨヴィッチ)の助けで、何とか戦場を生きのびる。
母親と兄弟7人を帝国軍に殺され、村も焼かれた少年モムチロ・ガブリッチ(イヴァン・ヴイッチ)は、復讐のために入隊を志願する。
同僚が砲撃で死に、代わりにやったこともない照準兵になったマリンコは、敵の砲撃隊を殲滅し、そのまま銃を片手に戦場へと向かう。
救護班の馬車に乗っていたモムチロも戦場へ向かい、負傷した帝国軍兵に銃を向けるが、代わりにマリンコが撃ち殺し、モムチロを守る。
ここから、マリンコの母マクレナへの手紙と親子の描写を軸にストーリーが進む。
オーストリア=ハンガリー軍の死傷者は1万8500人、セルビアの死傷者は1万5700人。
この戦場にペータル1世が戻ってくる。
しかし、戦いは続き、やがてセルビア軍は退却を余儀なくされる。
政府が取った作戦は、戦わずしてベオグラードを引き渡し、撤退する帝国軍の背後を突くというもの。
しかし砲弾がないので、ロシア、ギリシャ、フランスに恥も外聞もなく頼る。
嘘までついて政治・経済・軍事面で助けを乞い、フランスから戦後賠償金と引き換えに軍事支援を受ける。
こういうのを見てると、弾薬などの消耗品の規格を共通化することには意味があると思うし、この時期からすでに兵站の問題として存在していたことが分かる。
「我々が流す血から自由が溢れ出る」と鼓舞し、兵士たちは戦場へと散っていく。
これですごいのが、国王自身が戦場に出ていくところ。
一度は断られたモムチロも第6砲撃隊の一員として参加し、戦場を駆け抜け、ペータル国王には「追い返さないで欲しい」と言う。
するとペータル1世は自分用の銃を探していたモムチロに負傷兵の手当を命じる。
そして慰問に訪れたペータル1世によって、モムチロは満場一致で伍長に昇格する。
このシーンが、血なまぐさい戦場で一服の清涼剤になってて、ほんとにいい。
そしてマリンコはマクレナに避難を勧めるが、ここからが生死をかけ、コソボを目指す逃避行になる。
マリンコは母の身を案じ、マクレナはバルカン戦争で夫を亡くしてるから、息子がどこにいるのかを心配する。
家族をこれ以上、戦争で失いたくない。
政府では降伏するか否かを採決するが同数となり、最後は国王の判断に委ねられる。
しかし国王は、全軍と全国民にアルバニアへの退避を命じる。
国王が国民に「我々は勝利してきたが撤退する。ほかに道はない」「祖国と国王に誓った、最後の血の一滴まで戦うといった誓いから解放する」と演説する。
原語ではどう言ってるか分からないけど、ここはいいシーンだと思う。
「解放する」と言ってるけど、上から命令しているというより、国民と同じ目線に立っているような気がした。
そして国王が先頭になって退避の行軍をすることで、国民に近い側にいたことが伝わってくる。
ここから敵の追撃をかわしながらアルバニアの山を越えるんだが、牛や羊などの家畜を連れ、途中で死者も出る悲惨な行軍になる。
これは撮影が大変やったろうと思う。
そして兵器や武器も捨てていくが、それ以上に兵士や市民が抜け落ちていく。
初めて観た時もそうだが、たどり着いた砂浜のシーンと、そこで表示されるメッセージが異様に映る。
これを勝利と言えば勝利なんだろうけど、それにしてはあまりにも惨めで、勝ったから生き残ったというより、生き残ったことを勝利と呼ぶしかないように見えた。
正直、ひたすら逃げるだけなので、物語として何か面白いことが起きるわけでもない。
それでも、モムチロとマリンコ母子、そしてペータル1世までが、立場は違っても一緒の船に乗ってるような感じがした。
国王も兵士も、その母親も少年も、最後はみんな生き残るために逃げるしかない。
2回目やったけど、それでも見入ってしまったのは、そこなんやと思う。
そんな中で、唯一モムチロは救いやった。
最後になったけど、同僚のジオータっていいやっちゃな〜っと。
