『フィッシャーマンズ・ソング コーンウォールから愛をこめて』 | 三匹の忠臣蔵

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現役漁師たちによる舟唄のデビューアルバムが、全英トップ10入りを果たした実話をもとにした物語。

ダニー(ダニエル・メイズ)らレーベルの一行は、バカンスでコーンウォール州ポートアイザックを訪れる。
波が高いという忠告を無視した一行は無人島で遭難し、地元の漁師ジム(ジェームズ・ピュアフォイ)らに救助される。

一行は現地で漁師だけのコーラス「フィッシャーマンズ・フレンズ」が歌う舟唄に魅了され、仲間の一人が「契約しよう」と言い出す。

この話に反対していたダニーが交渉することになるが、「契約する」という話そのものがダニーをからかうための嘘で、ダニーは「契約するまで帰ってくるな」と、携帯の電波もつながりにくい村に置いてきぼりになる。

騙されたことに気づいたダニーだが、「フィッシャーマンズ・フレンズ」の可能性を確信し、単身で彼らを売り出すことに奔走する。

 

 


 

 

やたらと縁起を担ぐ漁村の田舎町で、招かざる客だったダニーが次第に信用され、一度はその信頼を失うものの、ピンチを乗り越えて逆転するというサクセスストーリー。

ジムの娘でシングルマザーのアルウィン(タペンス・ミドルトン)のモーニングコールが笑えて、「この二人はくっつくな」と確信した。

舟唄とは海の労働歌で、過去の惨事や教訓を歌として後世に伝える人間の知恵でもある。

ジムがダニーに、契約するのはいいが裏切るな、と釘を刺す。

そして「テイマー川を渡ればイングランドではない、別の地だ。意味が分かるな」というセリフがあるが、これもその一つだと思った。

字幕では「イングランド」となっていたが、イギリスとコーンウォールの歴史を考えると、単なる地理的な意味ではないように思った。

イギリスは連合王国で、イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドという4つの地域から構成されている。
その成立の過程には、イングランドを中心とした支配や併合、対立の長い歴史がある。

我々の時代はIRA(アイルランド共和軍)のニュースは珍しくなかった。
『リベンジャー・スクワッド』ではジャガイモ飢饉を契機に、アイルランドが言葉を奪われていく過程が描かれている。
教会だったか、アイルランド人に「おかしな言葉を喋るな」というシーンは覚えてる。

こうした歴史的な対立があるから、昔のサッカーも荒れに荒れた。

そして、コーンウォールで広く歌われ、ラグビーの試合などでも大合唱されるというのが『Trelawny(トレローニー)』。
歌詞には「テイマー川を渡る」というくだりがそのまま登場する。

これは、イングランド国王ジェームズ2世に反発した、7人の主教の一人であるコーンウォール出身のトレローニー司教が、ロンドン塔に投獄された出来事を題材にした歌で、「2万人のコーンウォール男たちが、その理由を問いただす」という反骨の精神が歌われている。

だから「フィッシャーマンズ・フレンズ」が売れるきっかけとなったテレビ出演で、『コーンウォールの歌』を歌ったのも何故か納得してしまう。
実際、映画のサウンドトラックにも「The ‘Trelawny’ National Anthem」として収録されていて、コーンウォールのアイデンティティーを象徴する歌になっている。

漁師がなぜ歌にこだわるのか。
それは「知っている者は覚えている」ためであり、これを映画として残したのは、「我々も忘れずにいよう」ということなのかもしれない。
それが本作のもう一つのメッセージだったような気がする。

 

 

 

『フィッシャーマンズ・ソング コーンウォールから愛をこめて』