『YMCA野球団』 | 三匹の忠臣蔵

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映画レビューを中心に、日々思いついたこと、感じたこと、趣味のことを書いてます。

ドラマ『緑豆の花』と同じ時代を背景にした、朝鮮初の野球チームの物語。

こんな時代に野球するアホもおったって話。

科挙制度が廃止されると、暗行御史になるという人生の夢を失ったイ・ホチャン(ソン・ガンホ)は、偶然、皇城基督教青年会(YMCA)会館で野球と出会う。

ホチャンはYMCA会館で野球をするミン・ジョンニム(キム・ヘス)に惹かれて野球に好奇心を抱くが、彼の父(シン・グ)は、長男のデチャンが義兵活動をするために家を出たことから、ホチャンに私塾を継ぐよう薦める。
しかし、ホチャンは野球を口実にジョンニムへ恋心を募らせていく。

そんなある日、ジョンニムの父ミン・ヨンファが乙巳条約調印に抗議して自決する。

一方、ホチャンの友人リュ・グァンテ(ファン・ジョンミン)とオ・デヒョン(キム・ジュヒョク)も交えて、YMCA球団は着々と力をつけていく。

乙巳五賊暗殺団のデヒョンは、グァンテの父(コ・インベ)の暗殺に向かうが、グァンテ自身が邪魔に入り失敗する。

ある日、YMCA球団の面々が練習に向かうが、球場は日本軍に閉鎖される。
そこにデヒョンのかつてのライバル、日本チームの主将・野村ひでお(鈴木一真)が現れ、試合を組むことになるが、YMCAは大敗してしまう。

再起を懸けた日本チームとの試合の前に、デヒョンはグァンテに自分が父親を狙ったことを知られてしまう。
そして迎えた、日本チームとの再試合というながれ。

 

 


 

 

 

キャストに惹かれ、何の情報もなしに観た。
キム・ヘスが演じたミン・ジョンニムの父親が閔泳煥(ミン・ヨンファ)というのも不思議な設定だが、閔泳煥には実際に娘がいたらしい。

乙巳条約とは、大韓帝国の外交権を日本が剥奪し、統監府を置いて保護国化することを取り決めた条約のこと。
この条約に賛成した5人の大臣は「乙巳五賊」と呼ばれ、閔泳煥は条約の締結に抗議して自決した。

そして乙巳五賊に対抗したのが「乙巳五賊暗殺団」で、キム・ジュヒョクが演じたオ・デヒョンはその一員という設定。
彼は日本に留学していたということから、ある程度の身分にあったことがうかがえる。

明成皇后(閔妃)は閔泳煥の親族にあたる。

明成皇后は朝鮮王宮に乱入した日本人によって惨殺され、遺体もガソリンで焼かれて、骨は庭に埋められる。

韓ドラ時代劇や映画を観てると、閔泳煥という名前を聞くだけで、「国が滅びゆく絶望的な瞬間」であることは一発で分かる。
このバックボーンを考えると、閔泳煥は劇中に名前だけが登場するだけなのに、なぜ実在の彼をジョンニムの父親に設定したのだろうと思う。

劇中のグァンテとデヒョンの関係は、国を奪われていく時代の荒波によって引き裂かれる友情ドラマになってる。
逆にホチャンは、科挙の廃止によって生きがいを失い、父親の私塾を継ぐのも嫌。
ただ「野球」という新しいおもちゃに没頭しているだけの男で、国が滅びかけているのに、政治や歴史に対して何の主体性も持っていない。

ホチャンが野球を通じて「民族の誇り」に目覚める、それか「現実の厳しさ」に直面して成長するというカタルシスがあれば、ラストの試合も生きてくると思う。

でも、逆にそれをやらないのが、この映画の狙いなのかもしれない。

国が滅びようとしている時代に、誰もが義兵になったわけでも、独立運動に身を投じたわけでもない。
そう考えると、こんな時代なのに恋をして、新しく入ってきた「野球」に夢中になっていた、こんなアホなヤツもおったで、という話にも見える。

ホチャンが最後まで「なんとなく野球が好きな男」のままで、デヒョンのシリアスな戦いと噛み合わない。

だから「ホチャンは何のためにそこにいるのか」というモヤモヤだけが残ったが、そう考えると、この時代に一人だけ違う方向を向いているホチャンが、逆に面白く見えてくる。

そして、そんなホチャンをソン・ガンホが演じているところに意味があったかも。

 

 

 

YMCA 야구단: 조선 최초 야구팀 포스터