朝鮮戦争に派兵されたトルコ軍兵士が、現地で助けた孤児と60年後に再会する奇跡の物語。
朝鮮戦争が勃発し、トルコ政府は国連の要請で、トルコ人4500人の兵士を派遣する。
スレイマン(イスマエル・ハシオグル)も母国トルコに婚約者ヌーラン(ダムラ・ソンメズ)を残し、国連軍の一員として朝鮮戦争の最前線へ赴任する。
38度線を巡る激しい攻防戦のなか、虐殺された村の唯一の生き残りである、口もきけなくなっていた5歳の少女(キム・ソル)を救い出すが、この子は親が殺されたショックで喋れない。
スレイマンは名前も年齢も分からないため少女に、トルコ語で「月(の光)」を意味する「アイラ」と名付ける。
アイラは駐屯地でスレイマンを父親のように慕い、いつしか仲間の兵士たちの癒やしの存在となっていく。
しかし月日は流れ、スレイマンはアイラと別れて帰国するが、婚約者であったヌーラン(ダムラ・ソンメズ)は別の男と結婚していた。
彼女はスレイマンがアイラのために戦地に残ることを選択し、戻ってきて欲しいと言った自分を裏切ったと思っていた。
失意の中、スレイマンはイスタンブールに戻る決意をし、ニメット(ブシュラ・デヴェリ)と結婚し、ニメットがアイラを探しはじめる。
それから約50年後の1999年、トルコ北西部地震が発生する。年老いたスレイマン(セティン・テキンドル)とニメット(メラル・チェティンカヤ)は被災した部屋に入り、アイラの写真を見つめ、会えない悔しさを改めて募らせる。
2002年の日韓ワールドカップの頃、韓国から「アイラ探しを手伝いたい」と電話がかかってくる。
そして朝鮮戦争60周年を記念したドキュメンタリー作りをきっかけに、アイラ探しがはじまる。
朝鮮戦争で『停戦協定』が締結されたこの時期になると、SNS(X)でスレイマンとアイラが再会した時の実際の映像が流れてくる。
二人は2010年4月に再会するけど、一番のMVPは妻のニメットだと思う。
彼女の理解と支えがなければ、ここまでたどり着くことはできなかったし、何より婚約者ヌーランに逃げられて、緊急避難するようにニメットと結婚したスレイマン。
ニメットもそのことに気づいていて、自分がスレイマンに受け入れられるように努力し、アイラの事も知っていた。
その上で「あなたの約束は私の約束」といい、自らアイラ探しに奔走する。
普通なら、夫が「前の女を忘れるために自分と結婚した」それどころか「よその国の見ず知らずの子供」を一生忘れられずに泣いている。
この嫉妬したり嫌気がさしたりしてもおかしくない状況で、ニメットは、夫の優しさと苦悩をまるごと受け入れ、何十年もアイラ探しに付き添った。
そんな両親を快く思ってないのか、実の娘のギュルスム(ニルギュン・カサプバシュオール)の気持ちも分からんでもないが、このキャラクターを入れることで、物語に血が通ってると言うか、生々しさが伝わってくる。
実在のキャラクターかは分からないが、彼女からすると、スレイマンは自分の「本当の父親」なのに、父がいつまでも何十年も前に戦地で出会っただけの別の娘アイラを忘れられず、家のお金や時間をかけて必死に捜している。
母親のニメットも聖母のように夫を支える一方で、娘のギュルスムは「もうお父さんもおじいちゃんなんだから、現実を見て今の家族・私たちのことを一番に考えてよ」と、ある種もっともな正論で父親に反発する。
この「家族の温度差」が、ドラマに生々しいリアリティを与えていて、感動ポルノのような綺麗事だけではない、むしろ実の娘のリアルな嫉妬が入ることで奇跡の再会が引き立つ。
幼少期のアイラを演じたキム・ソルと言えば『応答せよ1988』で、スレイマンの同僚が「南北で顔立ちが違うという」と語る場面があるが、キム・ソルは間違いなく南方系の顔をしてると思う。
また、劇中に朝鮮半島を代表するアリランが2度流れる。
一回目(0:46)のアリランは北朝鮮の「交響詩アリラン」で、民族楽器の音色ですぐに分かる。
弦の和音からハープへと続き、「저대(チョッテ)」のソロで始まる。そしてで転調することで、別れを予感させるような哀愁が漂う。
しかしメロディーが重複して、まるでレコードの針が飛んだようで、普通ではありえん編集で、いいとこ取りをしたかったのだろうけど適当すぎる。
そして喋れなかったアイラが喋りだし、別れのシーンでは女性ソプラノがアリランを歌うが、これは韓国のメロディーライン。
私がアリランで一番好きなのが『管弦楽アリラン井上道義 / 国立交響楽団』で、劇中でもこのアリランが使われている。
調べてみると、トルコは南北双方と国交がある。
だから劇中で北と南、それぞれの『アリラン』が使われているのも、トルコ側から見れば朝鮮半島全体を象徴する歌として捉えていたからなのか、それかたまたま作品に合うと思って使ったのかもしれない。
