『審判』─パク・チャヌク監督初期作品 | 三匹の忠臣蔵

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身元不明の遺体を利用して、「国から金をふんだくろう」とする大人たちの醜さを描いた、ワンシチュエーションのショートフィルム。
『JSA』『オールドボーイ』のパク・チャヌク監督作品。

プラス百貨店崩落事故の一週間後、事故の補償金が確定した身元不明の20代女性の遺体が葬儀屋に運び込まれる。

霊安室の職員(キ・ジュボン)が、事務的に淡々と処理する前に、「16歳の時に家出した自分の娘」だと言い、父親(コ・インベ)と母親(クォン・ナムヒ)が現れる。

ところが霊安室の職員は遺体の顔を見て「5年前に家出した娘だ」と言い出す。
政府の補償金支給にあたり、遺体の正しい身元確認を行おうと立ち会っている公務員(パク・ジイル)は、霊安室の職員は過去にも同じ様な発言をしたことがある「詐欺師だ」と言い出す。

大災害のスクープを狙い、テレビカメラを連れて霊安室に陣取っているテレビ記者(チェ・ハクラク)は、遺体を巡る醜い争いを、煽るように取材を続ける。

ひとまず場が落ち着いたかに見えたその時、自分が夫婦の娘だという女性(ミョン・スンミ)をテレビ記者が連れてきたことから事態はさらに混乱する。

女性は持病を持っていたことから「自分は7歳の時に養護施設に捨てられた」といい、夫婦に補償金のために遺体を利用してるのかと詰め寄る。

人間の強欲さが限界に達したその時、突然地震が起きて彼らは「審判」を受けることになる。

 

 


 

 

本作は1995年に韓国・ソウルで実際に起きた「三豊(サンプン)百貨店崩壊事故」がモデルになってる。
手抜き工事が原因で、営業中のデパートが突然崩壊し、500人以上が亡くなった韓国近代史の最大の悲劇の一つで、これをエンタメにするのは流石としか言えない。

数々の設計変更によって柱は細くされ、本数や鉄筋も削減されたため、当初から「強度不足」が指摘されていた。
それにもかかわらず工事は強行され、結果として大惨事を招いた。

とにかく酷い事故で、当時は「阪神淡路大震災」の直後だったこともあり、日本のニュースで取り上げられた時は、惨状が生々しく信じられなかった。
特にこの年は、オウム真理教事件や住専の破綻など、暗黒の時代という印象がある。

大勢の死傷者を出した「大事故」の直後、霊安室に若い女性の遺体が安置されている。
顔の損傷が激しく身元確認が難航していることを利用し、夫婦は「5年前に家出した私たちの娘だ」と主張する。

ところが、霊安室の職員の男が遺体の顔を見るなり「いや、これは7年前に失踪した俺の娘だ」と言い出す。
では、なぜ彼らが遺体を我が子と言い張るのか、その理由は政府から支払われる「多額の補償金」だった。

そこに突然現れた女性は、まるで神の鉄槌のような存在に思えた。
ラストではモノクロだった映像がフルカラーへと切り替わり、天井が崩れ落ちる部屋で遺体をかばったのは誰なのか?というオチになってる。
遺体をかばうその姿だけが、人間の欲望から抜け出した唯一の希望のように見えた。

500人以上が亡くなった「実在する惨事」に対して、人間の強欲という「業」を重ね合わせた構図は、人間としての倫理観も問題だと思うけど、この狂気じみた倫理観が後のパク・チャヌク監督作品につながるかもしれない。

ただ、惨事が起きた1995年当時に、自分が同じ感想を言えるかというと、そこは自信がない。

『審判』─パク・チャヌク監督初期作品