30年以上、発達障害の息子に人生を捧げてきた母親が、息子の自立をきっかけに、自分自身の人生を取り戻していく物語。
モナ(ロール・カラミー)にとって、障がい者のための就労支援施設で働いている息子ジョエル(シャルル・ペッシア・ガレット)が人生のすべてだった。
しかしジョエルと同じ施設で働く女性オセアン(ジュリー・フロジェ)が、彼の子供を身籠ることになる。
施設の職員やオセアンの両親も交えて今後どうしていくかを話し合うが話はまとまらない。
モナは気分転換で出かけたバーで出会ったフランク(ヘールト・ヴァン・ランペルベルフ)と恋に落ち、自分の残りの人生を見つめることになる。
一方で、自分がいないと生きていけないと思ってるジョエルが徐々に手の届かないところへいってしまうことで母子の将来と向き合うことになる。
先日観た『きっと地上には満天の星』は自分を無条件で愛してくれる子どもを手元に縛り付けておきたかっただけの、母性ではなく究極のエゴに見えたが、本作は息子が自立することで介護からの解放と、その現実までのジレンマを描いてる。
モナは、ジョエルを30年以上育ててきたことで、「この子は私がいないと何もできない」と思い込むことで、自分の存在価値を保ってきた。
しかし、ジョエルが父親になろうとする姿を目の当たりにし、「この子は私がいなくても生きていける」という現実を受け入れていく。
そうして、彼を手放せなかった自分自身の執着から少しずつ解放されていくプロセスが描かれる。
それと同時に、フランクと出会ったことで、これまで考える余裕もなかった「一人の女性としての幸せ」にも目を向け、自分の人生をもう一度歩み始めようとする。
これを見て思ったのが、実際の障がいを持つ親は皆さん「自分がいなければ」と同じ様な気持ちで日々もがいてると思うが、子どもは親が思っている以上にたくましく、子どもには子どもの人生がある。
だから「親だって一人の人間であり、自分の人生を生きていい」ということ。
観ていて、あまり気にせず自分の人生も考えてもいいのではないのかということを提案してるように見えた。
そして障がいはなくとも自分が子どもの頃、親は同じ様なことを考えていたんじゃないかな。
そして自立させてくれた。
他人が「何も知らずに何を言ってる!」と言われたら返す言葉はないが。
障がいの有無にかかわらず、親も子もそれぞれ一人の人生を生きている。
この映画は、親離れではなく、親の子離れについて考えさせる一本ような気がした。

