『王女の男』癸酉靖難が生んだロミオとジュリエット | 三匹の忠臣蔵

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何気ないいたずらがとてつもない悲劇を引っ張り出した、首陽大君の娘と、政敵である金宗瑞(キム・ジョンソ)の息子の悲恋を描いたイタリア風味の韓国版ロミオとジュリエット。

李氏朝鮮後期の文人徐有英が1873年に著した説話集『錦鶏筆談』中に登場する、「世祖(首陽大君)の長女 李世熺と金宗瑞の孫息子が結婚した」という架空の物語をモチーフにしながら、敬恵公主(第6代国王端宗の姉)の生涯に関するエピソードを軸に構成されてる。


物語はおなじみ「癸酉靖難(ケユジョンナム)」からはじまり、首陽といえば癸酉靖難、もうセット言っても過言ではない。

文宗(チョン・ドンファン)が崩御し、ひとり息子で世子のが第6代国王 端宗(ノ・テヨプ)として即位する。

左議政に就任したキム・ジョンソ(イ・スンジェ)は、首陽大君(キム・ヨンチョル)をはじめ王族の政治介入に目を光らせていた。

キム・ジョンソの居場所を突き止めるべく、シン・ミョン(ソン・ジョンホ)は親友であるキム・ジョンソの息子スンユ(パク・シフ)を意図的に逃がす。
思惑通り、父の元へたどり着いたスンユの後を追い、キム・ジョンソの排除に成功する。
流刑となったスンユは、その後なんとか逃げ延びる。

当初、首陽は長女セリョン(ムン・チェウォン)を、キム・ジョンソの息子スンユと政略結婚させようと考えていた。
しかしキム・ジョンソの死後は、シン・スクチュの息子シン・ミョンとの婚姻を進めようとする。

だがセリョンは、婚礼当日に姿を消す。

一方スンユは、世祖(首陽大君)を暗殺し、端宗を復位させようとする「死六臣」の李塏(イ・ゲ)らと行動を共にする。
しかし計画は露見し、再び追われる身となってしまう。

 

 


 

 

本命セリョンとスンユの間にシン・ミョンが入り、さらにスンユには端宗の姉である敬恵(キョンへ)公主(ホン・スヒョン)が入ることで、二組の恋敵が嫉妬メラメラでストーリーを盛り上げる。

結局、キョンへ公主はスンユ、シン・ミョンの親友の落ちぶれ両班の息子チョン・ジョン(イ・ミヌ)と結婚するが、ジョンは端宗を守るために奔走し、悲劇的な最後を迎える。

とにかく首陽の時代を扱った作品は多く、それでいてどれも面白い。
そして、この作品は「死六臣(サユクシン)」をクライマックスに据え、「李施愛(イ・シエ)の乱」のラストに繋がるところが硬派っぽくっていい。
しかし最終話が盛り上げるだけ盛り上げた割にはちょっと残念。
個人的には救いがないままで終わって欲しかった。

 

 


 

 

「死六臣」とは、世祖(首陽大君)によって王位を奪われた端宗の復位を目論み、処刑された6人の忠臣のことで、彼らは世宗や文宗から絶大な信頼を寄せられていたエリートの学者や武官の集まり。
集賢殿の学者で、ハングル創製にも関わった中心人物である成三問(ソン・サンムン)。
世祖からの勧誘を拒み続け、獄中で亡くなった朴彭年(パク・ペンニョン)。
文官である李塏(イ・ゲ)、河緯地(ハ・ウィジ)、柳誠源(ユ・ソンウォン)。
唯一の武官である兪応孚(ユ・ウンブ)。

死六臣は、世祖暗殺と端宗復位を計画するが、仲間の一人の密告によって露見してしまう。
彼らは激しい拷問にも屈せず、最後は処刑された。

彼らはたとえ命を落としても「二人の王(世祖)には仕えない」という強い忠義を貫いたことから、後世にわたって「忠臣の鑑」として語り継がれていて、本作では実名で登場する。

ししかし、この事件をきっかけに、上王として生きていた端宗も庶人に落とされ、最終的に自害(賜死)を強要されるという悲劇に繋がる。
物語ではイ・ゲをオム・ヒョソプが演じてる。

 

「李施愛の乱」とは、世祖の中央集権化に反発した咸鏡道の豪族・李施愛が、民衆を巻き込んで起こした反政府暴動。
この争乱で重臣の韓明澮(ハン・ミョンフェ)らが一時失脚し、鎮圧した南怡(ナム・イ)や亀城君(クィソングン)らが台頭することになる。
「古参の重臣」と「新興の王族勢力」との対立という、新旧の権力争いの火種が生まれが、南怡も亀城君も世祖が亡くなり成宗が即位すると韓明澮により失脚する。

 

 

 


 

 

大虎(テホ)と呼ばれ、第4代国王 世宗からも信頼があついキム・ジョンソを故イ・スンジェが、そして、ふてぶてしいほどの悪役 首陽大君をキム・ヨンチョルが演じていて、この二人が対峙するシーンは、これぞ時代劇という感じ。

イ・スンジェは小柄だが何故か迫力があり、存在感がある。
物語では首陽がキム・ジョンソを取り込もうとしていて、文宗も半ば諦めているような描写になってる。

もし、キム・ジョンソが首陽の提案に乗り、政略結婚が成功していれば首陽の言う通り、子らは死なずに済んだ。
というのも作中では、首陽が子煩悩な父親として描かれる場面もあり、そうなってもおかしくないかも。

そして首陽の妻ユン氏の設定もお転婆娘に手を焼く母親像をキム・ソラが存分に演じてて、『インス大妃』とは真逆のキャラクターになってるが、もしキム・ミスクが演じてたらまた違う母親像になってたやろうね。

 

 


 

 

韓国ドラマの特徴の一つに凝った台詞回しがある。
イ・スンジェやキム・ヨンチョルなどが使うセリフには慣用句やことわざが多く使われており、その描写するような語りが時代劇特有の空気感を作り出してる。
とは言っても、今はそんなセリフも少なくなった印象がある。
だだからこそ、昔の作品は観ていて面白い。

当初、スンユ役のオファーがあった時にパク・シフは、時代劇は難しいという理由で困ったらしいが、断った方が良かったかもという出来栄えが可哀想。
一方、ムン・チェウォンのドラマと言われるだけのこともあり、彼女の魅力全開。
だから尚の事パク・シフとのアンバランスが目立つ、顔は時代劇やのにね。

スンユ姪っ子アガン役のキム・ユビンが本当に可愛い。
あのサンチュンの「チュン」の音が外れてしまうところが、いかにも子どもらしい。


また、セリョンの侍女ヨリを演じたチャ・ミンジ、シン・ミョンの護衛武士ソン・ジャボンを演じたチン・ソンなど、一見、ムン・チェウォンのプロモーションにも見えるドラマを、そこを名も無き脇役さんが隙間を埋めて、骨太歴史ドラマへと昇華させてる。

特にシン・ミョン役を演じたソン・ジョンホの瞳がクルクルと揺れる、政治と友情の間で揺れ動く複雑な心理状態をよく表現してると思う。

首陽大君が登場する作品では、必ずと言っていいほど端宗が登場する。
それは、端宗の悲劇があるからこそ、首陽大君という人物が際立つから。
しかし、これまで端宗を真正面から描いた作品は意外と少なかった。
ところが今年、端宗を主人公にした『王と生きる男』がメガヒットを記録したらしい。
早く観てみたい。

 

 

 

王女の男:悲恋の韓国時代劇ポスター