韓国で実際に起こった1997年の通貨危機(IMF事態)を背景にした、レトロな雰囲気漂う人生再生・痛快・潜入捜査コメディ。
全16話で、前半では不正を暴いていく「潜入・適応編」の8話と、後半は正体がバレるが仲間を増やし「対決・真相解明編」の8話という二部構成になっている。
海外資本が流出する1997年7月、証券取引監督チーム長ホン・グムボ(パク・シネ)は、MU相場操縦事件の捜査中にハンミン証券の相場操作と謎の資金流出に気づき、裏金の内偵捜査を始めるが、確実な証拠がない。
この情報を知ったハンミン証券の社長カン・ミョンフィ(チェ・ウォニョン)は、父であるハンミン証券会長カン・ピルボム(イ・ドクファ)に捜査に応じるよう進言する。
カン・ピルボムは自分への裏切りと思い意見を突っぱね、秘書室長ソン・ジュラン(パク・ミヒョン)にミョンフィを監視するよう指示する。
ミョンフィは捜査への対策として「裏金が存在しないよう」帳簿の改ざんをトレーディング部長ソ・ギョンドン(ソ・ヒョンチョル)、危機管理本部課長パン・ジンモク(キム・ドヒョン)、リサーチ部長チャ・ジュンイル(イム・チョルス)に指示する。
そんなある日、「ハンミン証券の裏金について」という一通のメールがグムボに届く。
送信者のアカウントは yehppee@kebeo.co.kr、通称「イェッピ」。
内容は、「ハンミン創業家の不正を証明できる裏帳簿を持っている」というもの。
早速返信し、グムボは情報提供者のミョンフィに会う。
裏帳簿はミョンフィとイェッピが管理している。
この時、ミョンフィは証拠となる書類をグムボに渡し、その結果、家宅捜索の令状が下りる。
ミョンフィの行動は逐一社長秘書コ・ボクヒ(ハ・ユンギョン)が把握しており、彼女は秘書室長ソン・ジュランに報告している。
家宅捜索の前日、ミョンフィはグムボに裏帳簿は本社12階の社長室に置いておくと言う。
しかしその直後、事故でこの世を去り、12階に裏帳簿はなかった。
グムボは左遷する形でハンミン証券に潜入捜査すべく、二十歳の妹ホン・ジャンミ(ユナ)になりすまし入社試験を受けて入社する。
独身寮では秘書室のコ・ボクヒ(ハ・ユンギョン)、会長カン・ピルボムの娘カン・ウンジュ(チェ・ジス)と同室になる。
配属されたのは危機管理本部で、部長のアルバート(チョ・ハンギョル)は叔父であるミョンフィの事故死に疑問を抱いてる。
ジャンミとなったグムボとボクヒは課長イ・ヨンギ(チャン・ドハ)の助けを借り、社内ネットワークから kebeo.co.kr への不審なアクセスを特定する。
そこで「yehppee」というハンドルネームの人物が、裏金の管理に関わっている痕跡を見つける。
第2部ではIMF事態で危機に陥ったハンミン証券を買収しようと、かつての恋人シン・ジョンウ(コ・ギョンピョ)が社長としてやってくる。
ここからハンミン証券を巡る会長 カン・ピルボムとの攻防が始まる。
ホン・グムボの実年齢とのギャップネタが随所に散りばめられていて、大人はごまかせても子どもはごまかせない設定がとてもリアル。
実際にそうやしね。
パク・シネの「冷徹なエリート」と「二十歳のフリをする必死さ」を演じるギャップが面白い。
若者の挨拶は「ソ」から始まると教える妹ホン・ジャンミ(ユナ)の優越感も笑えた。
親が営むチキン店にソン・ジュランの手先ポン・ダルス(キム・レハ)一味が現れ、格闘になる予想外のシーン。
父親ホン・チュンソプ(キム・ヨンウン)もそうだが、母親キム・スンジョン(イ・スミ)が意外とハマっていて、イ・スミのアクションは想像もしていなかった。
ただ、ここのシメは本物のジャンミが出てきてダルスにハイキックでも良かったと思う。
影で応援する上司の調査局長ユン・ジェボム(キム・ウォネ)は、『007』などのスパイ映画でよく登場するタイプの上司というありがちな設定だが、なぜかいつも何かしら食べてる。
この食べているシーンを見るたびに、演じるキム・ウォネが「撮影中ずっと食べてるやん、大丈夫?」と思えてきて、少し心配になった。
“ソバンチャ(消防車)三人組”を演じたソ・ヒョンチョル、キム・ドヒョン、イム・チョルスは、絶対ここでは終わらないと思っていたら、やっぱり最後まで引っ張っていた。
敵側のスパイかどうか微妙なんだが、実は本人に訳ありというコ・ボクヒを演じたハ・ユンギョンの存在はパク・シネの影が薄くなるほどで、単なる「パク・シネ可愛いでしょう!」ドラマにならないよう、ストーリーにメリハリを与えてた。
何よりパク・シネの「二十歳です!」に呆れる冷たい目線には笑ってってしまった。
パク・シネも演じるのは難しかったやろうと思うと余計に。
そして圧倒的な「ラスボス感」と執着の深さを演じたイ・ドクファ。
この人を初めて見た作品は『武人時代』で、その強烈な個性は今も色褪せない。
そしてこの作品のMVPはソン・ジュランを演じたパク・ミヒョンではないかな。
最後の惨めさの一歩手前で止まった微妙な表情はやった。
散々伏線らしき振る舞いをしていた証券監督院資本市場調査局チーム長、グムボの同期ナム・ドンギ(ハン・スホ)の回収がなかったのはもったいない。
ここは一発、小さくてもいいのでカタルシスとして扱っても良かったと思う。
コメディの場合、これでもかと描写する効果音。
基本プロットは映画『新しき世界』でもおなじみ、潜入捜査官が本物になっていくよくある設定。
前半は「潜入・証拠探し」、後半は「敵対的買収・直接対決」へと、基本はサスペンスで、その上をコメディ要素からヒューマン要素が走る。
IMF事態というと同じチェ・グクヒ監督の『国家が破産する日』のような断末魔的作品が多いが、本作はわりと明るく描いてる。
この時代をコメディとして描けるようになったんやろうね。
「汝矣島海賊団」は当時の日本でいうと「5ちゃんねる」や「噂の坩堝」のような掲示板やチャットルームに近い。
情報交換の場にアクセスする手段として当時は「PC通信」と呼ばれていた。
当時の韓国映画やドラマでは「PC房(PCバン)」から書き込むシーンとしてよく登場する。
他にも携帯電話など韓国ドラマあるあるで、しっかり時代考証をしているので、当時の記憶がある人にはかなりハマる。
逆に知らない世代にとっては、新鮮に映るのではないかな。
それでいて韓国ドラマでよくある「前半はいいが後半失速」ではなく、最後まで勢いが落ちないのは良かったと思う。
後半の前半は少し間延びした感じもあるが、プロット的には起承転結の「起」にあたり、絆を深めていくパートだと思えば気にならない。
ここは観る人の取り方次第ではないかな。
レンタルビデオ屋がでてきたりして、1997年のレトロな空気感の中、彼らが守ろうとしたのはただの裏金や買収・対決のではなく、失われた時代と夢を取り戻す社会派物語になっていて、最後まで楽しめた。


