完全な切り抜き映画『ウォーフェア 戦地の最前線』 | 三匹の忠臣蔵

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誰の視点で観るかによって、評価が観る側に委ねられる”切り取り”映画。

イラクのまちでアメリカ軍特殊部隊(シールズ)の8人の小隊が、アルカイダ幹部の監視と狙撃任務に就いていたところ、事態を察知した敵の先制攻撃を受け、市街地戦が勃発する。
周囲を包囲され、退路を断たれた小隊は脱出を試みるが、死傷者を出してしまい、銃弾が降り注ぐ民家で仲間の救援を待ちながら脱出を試みる。

戦争に対する大義もない、戦争に突入した根拠もない、アメリアを止める国もない、あるのはアメリカのエゴだけ。
作品中も演出によるBGMはなく、あるのは銃撃戦の効果音と、兵士たちの心境を描写した空気音だけ。

この緊迫したシーンを、淡々と長回しで撮っていく。
シールズのメンバー8人にも、明確なキャラクター設定すらない。
とにかく「戦場はこんなんですよ」ってことだけを映し出してる。

シールズがアルカイダの監視のために、夜中に民家を接収するが、これも勝手な話で、退避作戦が終わり、元の住民家族の父親が「もう大丈夫だ!」と言ったが、何が大丈夫なのか意味不明。
家を壊され、近所の家々も銃撃・砲撃されるが、彼らが一体何をしたのか。

ご存知のとおり、この戦争は2003年に、アメリカのジュニア・ブッシュ政権が、「イラクに大量破壊兵器がある」という嘘から始まった。

この嘘のために現場となった町全体を戦場として、壮絶な市街地戦が繰り広げられ、イラクの人々も、シールズの隊員たちも命を落とした。

あえて”切り取り”と言ったのは、この事実を誰の視点から見るのかで、評価は観るもいのに任されているから。

この映画では、ここに至る経過が全く描かれていない。
ストーリーからして、現地のイラク住民からすると、これは迷惑どころではなく、彼らからするとシールズは侵略者以外の何物でもないから。

見方を誤ると、この市街戦で数人のシールズの隊員が負傷者を出しながらも見事脱出したという、カタルシス感じるヒーロー映画にもなってしまうが、イラク戦争帰還兵であるレイ・メンドーサ監督も次のように語ってる。

当時共に闘った兵士たちの、「戦争を分かった気分になってほしくない」「観客の方にはリアルなものを見てほしい」という、切なる願いから生まれた作品である。
母国に対して、自分たちを従軍させた政治家や各国の方たちにも見てもらい、母国アメリカが若者に何を課してきたのか報道されない真実を突きつけ、従軍する兵士たちへの責任を感じてもらいたい。

話はむちゃくちゃそれるが、日本でも世論調査において「台湾有事」が起きた際に、集団的自衛権を行使するかの賛否を聞いたところ「賛成」と「どちらかと言えば賛成」を合わせて48.8%となり「反対」の44.2%を上回ったという結果が出いる。

私が子どもの頃は、戦争を経験した世代の声がまだ強く、「戦争をしない」という価値観が社会全体を覆っていたが、今はどうなのか。
極右的な政治家をはじめ、戦争を煽るような発言が公然と語られるようになっている。

自民党公認の土田しん候補(東京13区)が、1月31日の討論会で「血を流していただかないといけないこともあるかもしれません」と発言したと、動画も出回ってる。
 

土田しん「国民は血を流せ」

 


恐ろしいのは、それを聞いて「イケイケドンドン」の空気が生まれ、勇ましい言葉に触発され、戦わないことを卑怯だと蔑む人々が現れることではないかな。

かつて日本が突き進んだ太平洋戦争では、17歳から40歳までの男性が兵役の対象となり、末期には学徒兵として、まだ子どもと言っていい若者たちまで動員された。

この時代に青年期を過ごした男性のうち、終戦時に生き残れたのは約56%に過ぎなかったと言われてる。

同世代の3人に1人が命を落とし、さらに戦地では3割以上が餓死。
戦って死んだのならまだしも、無謀な計画と「イケイケドンドン」の世論に押され、餓死したという事実を、今の若い人たちはもっと知るべきやと思う。

亡くなったのは戦地に赴いた兵士だけではない。
太平洋戦争での死者約310万人以上のうち、約80万人は空襲や原爆、沖縄戦では多くの民間人が犠牲になった。

軍部が主導し、世論が煽り、踊らされた国民が熱狂して突っ込んだ太平洋戦争では、おびただしい数の人々が血を流し、命を代償にした。

これが、この映画を通した私の感想というか、観てしまった人間の責任表明。

是非、映画館で見てください。

 

 

 

シールズ部隊、緊迫の市街地戦で応戦