トランプ関税が日々のニュースを賑わす昨今、NHK「“神の国” アメリカ もうひとつの顔」を見たので思いつくままに書いてみた。
予てから言われているように、やはりトランプ政権の基盤にはキリスト教福音派の強力な支持がある。
この勢力は「日本は神の国」と主張する日本の政治家とも思想的に通じ、「統一協会」や「日本会議」などの宗教右派にも影響を与えているのではないかな。
福音派の歴史的ルーツ
17世紀、イギリスで迫害を受けた清教徒がアメリカに移住し、彼らは先住民を迫害しつつ、「聖書絶対主義」を掲げた共同体を形成し、迫害から迫害者へと変貌する。
1950年代、テレビ布教で福音派を大衆化した伝道師ビリー・グラハムの登場により、「共産主義との戦い」を掲げ、宗教を冷戦のイデオロギー武器に変えた。
これが右派が共産主義と敵対する源流であり、本質は「無神論との戦い」。彼らの目に共産主義は神の否定につながるんだろうな。
政治と宗教の融合
アイゼンハワーはキリスト教・宗教を共産党と戦うためのアイデンティティにしようとした。
結局、宗教は表になるということになり「我々は神を信じる」がアメリカの公式スローガになり、国家に対する忠誠の誓いも「神の下の一つの国家」となった。
公民権運動にも福音派のキリスト教信者は抵抗する。
福音派は「聖書は奴隷制を容認している」と解釈し、人種統合に反対。
1962年、最高裁が「学校での祈りは政教分離違反」と判断すると、「学校に黒人を招き入れ神を追い出した」と激怒する。
70年代に入ると女性の解放運動ウーマンリブが全米に広がったが、驚くことにアメリカの憲法には今も投票権以外の女性の権利が明記されていない。
女性の中絶の選択権や中絶の選択権でも認められていなかったが1973年最高裁は女性の妊娠中絶権を認める判決を下した。
しかし福音派は妊娠中絶権生命の尊厳を傷つけるものであり男女平等も伝統的な家族感に反するという。
妊娠中絶は神が与えてくれた生命に対する冒涜ということ。
男女平等も伝統的な家族のあり方を破壊するものだった。
これは夫婦選択的別姓を反対する日本会議などの日本の右派の主張とそっくりそのまま。
ジミー・カーターの経験がモラル・マジョリティを生み出す
南部バイブルベルトのジョージア州出身、民主党のジミー・カーターが大統領選を制した。
彼はもともと福音派の信者で、一番大事なのはイエス・キリストだった。
福音派の人々はカーターに大きな期待を寄せていたが、期待は裏切られ、女性の権利や男女平等修正条項の推進を後押しした。
政教分離を厳格に実施しようとしたカーターに福音派は絶望する。
福音派は国の倫理を正しくできるのは自分たちだけだと考え、1979年にモラル・マジョリティを設立した。
この時アメリカ経済はどん底だったが、これが大きい、今とよく似てる。
自分たちの状態が良くないのは他人が悪い、だから自分が変わるのでhなく他人に変われという。
当時、大きな被害を受けたのは日本。日本経済を叩くだけ叩いた。
やがてアメリカ人口の20%が福音派信者で、これが今に続く右派の姿かもしれない。それだけ支援金が集まり、お金になるということ。
宗教がビジネスになっており、彼らは選挙人登録をして選挙に行くことが力だと気づいた。
政治と宗教の結びつき
ドナルド・レーガンはこの宗教にぶら下がる票に目をつけて当選した。
レーガンは中絶法案にも署名するほど、元々は教会に通うような熱心な信者ではなかった。
しかし大統領選では票を目当てに演説で宗教的な言葉を多用し、中絶に反対を表明した。
信者向けには「神」の一言がいかに効く事に気づく。
この構図が以後さらに加速していく。
福音派は政治に興味はなかったが、この後から投票するようになり、その数字がパワーとなった。
レーガンは男女平等法案を葬り去り、この福音派の票を選挙に利用することは次の大統領ブッシュにも引き継がれた。
ブッシュもまた福音派の信者だった。
ジョージ・ブッシュは福音派に「回心」したと言うが、回心ってそんな簡単にできるのか。
今のトランプ大統領はレーガンから始まった福音派の流れの延長線上にいる。
福音派からすると、やっと形になったということ。
これが成功モデルとして韓国や日本にも伝わったのではないか。
現代の福音派とトランプ
現在、福音派の信者の数はアメリカの1/4になっている。
同性婚・LGBT・男女平等運動が盛り上がると、福音派の運動は過激になる。
つくづく思うのは、福音派の原動力は被害者意識と排除の論理。
こんなことで他人とうまくやっていけるわけがない、だから排除しようとする。他人を受け入れるという発想はない。
神が唯一の存在で、神に一番近いのが自分たちだと思ってるんだろ。
福音派の強烈な支持で大統領になったのがトランプ、だから彼は国民を向いていない。
見ているのは福音派の信者だけで、これが世間とのギャップ。
彼は福音派の言う通りに、彼らの夢を実現しているだけなので、国民は見ていない。見ているのは信者だけ。
結論
結局、妥協や統合はないのだろうな。
あるのは自分たちだけが正しいという誇りと使命感。
神への信仰が国力の源なので、トランプだけ見ていたらいけないということ。
そう考えると、事態はより深刻で、トランプの行動を予想するなら、福音派を分析した方がいいのではないか。