故キム・ジュヒョクの最後の遺作で、風刺とユーモア、勧善懲悪のストーリーで時代を越えて愛される古典小説「興夫伝(フンブジョン)」を書いたヨン・フンブの闘いを描いた作品。「興夫伝」をモチーフにし、現代社会の社会構造や政治的な要素を加えた、「ペンは剣より強し」という社会派ドラマ。
舞台は朝鮮時代の憲宗14年、両班たちの権力争いで民衆の生活が日々疲弊していく時代。“朝鮮王朝は滅び、真人が国を救う”と予言した書物「鄭鑑録」が再び出回り、世をにぎわせた。
天才作家ヨン・フンブ(チョン・ウ)は、15年前の洪景来の乱で離れ離れになった兄ノルブ(チン・グ)を探すため、官能小説や問題作ばかりを書くことで自分の名を世に知らしめようとしていたが、ノルブが反乱軍に入っていたことを知る。弓の名手ガクキ将軍が兄のノルブであった。
反乱軍のリーダー、チョ・ヒョク(キム・ジュヒョク)を通じて新たな気づきを得たフンブ。しかしチョ・ヒョクは兄チョ・ハンニ(チョン・ジニョン)の唯一の弱点であった。
朝鮮全土に広まった「鄭鑑録」の拡散力に目をつけたハンニは、フンブに「鄭鑑録・外伝」を依頼する。「朝鮮王朝が滅び、錦山金氏のウンジプという男が謀反を起こして王になる」と書けという。
これは予言に出てくる“新たな王”の書き換えである。
そして書いたのが、「錦山金氏(兵曹判書)が謀反を起こし、王の真の忠臣である光陽趙氏(刑曺判書)が反逆者を倒し、この国を守る」というもの。
光陽趙氏とはチョ・ヒョクの兄チョ・ハンニのことで、予言書の影響を利用し、敵対する光陽趙氏を官職から引きずり下ろす。
刑曺判書チョ・ハンニの提案を受け入れた李氏朝鮮の第24代国王憲宗は、兵曹判書キム・ウンジプを礼曹参議に降格させ、兵曹判書は刑曺判書チョ・ハンニが兼務する。
しかし、他の人事はチョ・ハンニの思惑とは違った。
チョ・ヒョクはフンブに、民衆のために生きる自分と権力に目がくらんだ兄チョ・ハンニ(チョン・ジニョン)の物語「興夫伝」を書くことを提案する。ここから錦山金氏と光陽趙氏の攻防が始まる。
故キム・ジュヒョクはポスター撮影の数日後に事故で亡くなったことから、制作発表会で出演者たちは喪服を着て登場した。スタッフロールでは、「故キム・ジュヒョクさんと共に過ごせて幸せでした」というメッセージが表示される。
実在の人物が多数登場するが、歴史的事実に基づいた内容ではない。朝鮮の歴代王の中で、韓国時代劇に一度も登場したことがなかった憲宗が初めて登場する作品でもある。