「意味が分からない」とのレビューをよく見かけるけど、邦題が原因ではないかと思います。
原題は「薔花、紅蓮」で、朝鮮半島で古くから伝わる民話「薔花紅蓮伝」をモチーフにしています。
薔花と紅蓮が継母の虐待と悪巧みで死んでいったが、優秀な府使の赴任で事実が明らかになり継母は処刑される。冤鬼となった薔花と紅蓮の恨みは解け、天上に昇って天女になるという物語で、題材として映画やドラマなどで度々取り上げられているらしいです。
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以下、要点をまとめたネタバレです。
冒頭の「自分を誰だと思う」の問いで、家族写真を見せても答えられない、この女性は誰なのか、から話は始まりますが、顔つきで何となく分かる。
父親ムヒョン(キム・ガプス)が継母ウンジュ(ヨム・ジョンア)に電話していて、ソンギュ夫婦を実家に招く事を話している。
そして、ムヒョンはウンジュに錠剤を渡すが、この時はまだ本物のウンジュは到着していないので、この時のウンジュは誰なのか。
招かれたソンギュ夫婦の表情からウンジュの異常さが分かり、妻ミヒが耐えられなくなり倒れてしまう。
ウンジュが待つベッドのシーンで、父親ムヒョンは相手にしないし、薬もでてくる。
これでウンジュは実はスミで、彼女は病んでいることが分かる。
そしてムヒョンからスヨンが死んでいることを告げられるが、スミ以上にうろたえるスヨンのふるまいから、スヨンはスミだけに見える幽霊であり、物語を通して自分が既に死んでいることを自覚したことが分かる。
そして、本物のウンジュが現れ、ウンジュを演じていたスミを現実に引き戻す役割を演じる。
ラストの伏線回収から分かるのは、ウンジュが実家に来て料理を準備している間に、スヨンは母の部屋で眠り込み、目覚めてタンスで自殺した母親を目撃する。
スヨンが母親を助けようとするが、タンスに押しつぶされて命を落とす。
この惨劇をウンジュが見て見ぬふりし、これがその後の対立の起点になり、スミはスヨンを助けられなかったという罪悪感を抱く。
母親と妹の死を受け入れられないスミは精神を病み、二重人格となってウンジュを演じるが、現実と妄想の境が崩れていく。
ここで冒頭の病室のシーンはスミ確定になる。
父親ムヒョンは、母親への感情が冷めてて浮気でもしていたのか、それともただの同僚だったのかは疑問が残るが、少なくとも娘たちは受け入れられなかった。
それを知った実母は病気で苦しみ、自殺することになるが、これが家族の悲劇の始まりとなる。
精神疾患の患者の振る舞いの無理解から起こる受け取り方とホラーを絡め、ミステリーの要素も取り入れ、見ている者を惑わす面白い作品ですが、ラストは天女になったとは思えない寂しい終わり方があとを引く。