再開発に伴う強制撤去現場で起きた警察官の死亡事件「龍山惨事」を元にして描いた法廷サスペンス。
龍山惨事とは、龍山再開発4区域に住む住民が、強制的な撤去に反対し再開発対象の建物の屋上で多量の火炎瓶とシンナーを積み籠城。
凍りついてしまうような厳寒の季節に放水砲が打たれるなど、警察が不法占拠を鎮圧する際、警察官1人と占拠者5人が死亡し、検察が警察の鎮圧準備や作戦に問題があったことを認めた事件。
街の再開発は日本もやるけど、昔は今と違い時間をかけて丁寧だったと思う。住民説明会が何度も開かれ、住民から同意を得て進めるのが原則で、最後の住民の引っ越しが完了するまで待った上で、開発の作業が始められていた。今じゃ、信じられないけど、何年かかっても待った。これが良いか悪いかは賛否があると思うけど、少なくとも、立ち退く住民に寄り添っていたのは間違いないと思う。
都心部再開発を巡る巨大な利権に絡む数々の圧力、政治家はもちろん民間企業など取り巻く人々の思惑は、日本も他人事ではないよな。
しかし、これをエンタメとして昇華し社会に訴える姿勢は韓国エンタメのお家芸。逆に日本ではこのような作品は作らなくなったと思う。
ストーリーは住民の静かな籠城シーンが、いきなり飛び交う火炎瓶に対し放水による警察との攻防から始まる。鎮圧隊の無線による会話は彼らの本音だろうな。
弁護士であるユン・ジンウォン(ユン・ゲサン)とチャン・デソク(ユ・ヘジン)の成長物語でもある。
はじめは事務的に逮捕されたパク・チェホ(イ・ギョンヨン)の弁護を引き受けただけだったのに、単純な殺人事件でないことを直感してからは苦悩しながらも真実追求に邁進する。
新聞記者コン・スギョン(キム・オクピン)は恐らく架空のキャラクターと思うけど、グッジョブ。
キム・オクピンも「悪女 AKUJO」の時とは違い、ちょっと軽めで可愛い。役者は配役が育てていくんだろうな。
社会部 部長(ユン・ミヨン)の「うちの若いもんに怪我させやがって」はワロタ。
警察作戦中に起こった殺人事件は国家が責任を負わなければならない。国家の妨害工作も清々しいほど陰湿で飽きさせない。キム・ウィソンはハマリ役です。
スキンヘッドのユン・ドンファンは迫力がある
女性検察役の女優さんは「不倫する理由」のチ・ソユンではないかな。
日本で籠城というと思い出すのが「あさま山荘事件」。この事件を担当したのが佐々淳行さんで、後藤田正晴さんから言い渡されたのは「一人のけが人も出さないこと」。これは当時の警察権力に対する国民感情を理解していたから。
遺族宅に挨拶に行った佐々淳さんは、殉職者の祭壇の前で泣き崩れる嫁に対し「泣いてはいけません、彼(息子の名前)はお国のために死んだのです」と言った母親の言葉に膝から崩れたと言っていた。