彼と過ごす大切な日



私は精一杯おしゃれをしたつもり


町で浮いてないんだろうかなんて


ずっと考えながら病院の前で待ってた




――響くバイクの音



「おはよ!王子様のとうじょ~」



「誰が王子様よ!って健斗


バイクもってたんだね」



「美羽のために頑張ったんだよ!


ってまぁ3割嘘だけど…」




「なにそれ!?」



やばい、楽しい



「じゃぁいこっか!まず俺んちだっけ?」




初めて乗るバイクに、


初めての彼氏の後ろ



それだけで私は幸せだった






そして到着した健斗の家




なんかきれいで、おっきくて



想像してた家と全然違っていた




「俺の部屋きたないけど



とりあえずくる?」



「おじゃまします…」




「あ、やっぱ先親に紹介しとくわ!


大事な彼女だしなっ」




え…心構えができてない…



それでもずんずん進んでいく健斗



ガチャ


「お袋!彼女連れてきた」




「あ、あの!佐倉美羽です!



えっと、えっと…」




「あぁいらっしゃい!


可愛い彼女ね健斗」




そこに立っていた健斗のお母さんは



とても綺麗で、やっぱり親子だなとも想った




「ゆっくりしていってね



なんにもない家だけど…


健斗、これからつれてくるときは


ちゃんといいなさいよ!」



「わかってるって


じゃ、いこっか美羽」



「あ、うん!」



その日を私は、24日と25日にした



1日は健斗と過ごす日


もう1日は家族と過ごす日


待ち遠しくて、健斗と喋るときは


いつも外出するときの話だった



「どこいこっか~行きたいとこいっぱいあるわ



美羽はどこに行きたい?」




「あたしも行きたいとこありすぎて



1日じゃ足んないよ…




でも夜景は見たい!


ここからの夜は見慣れちゃったし」




「じゃあ最後は夜景な!



んー動物園とか?」



「なんか子供…の考え…」



「はぁ?超いいとこだぜあっこ



猿だっこできるんだぜ!?」



「猿って…せめてうさぎとか!」




ずっとずっと笑いが絶えなかった





結局私たちは



朝は健斗の家、


昼は水族館


そして夜には夜景を見に行くことになった





そして12月24日




「美羽!起きてっか~?」



彼の声が病室に響く



「あ、健斗~!聞いて!


今ね、あともうちょい頑張れば


外出できるって言ってくれた!



もうちょっとだよ!」



「おぉやりぃ!頑張ったじゃん!


もうちょっとだな!



もうそろそろ、クリスマスだし


いい機会じゃん!


やっべ、超楽しみなんですけど」



気がつけば外には雪がちらほら



白い世界になっていた



――――



そして、12月19日




私は、先生からの言葉を待っていた




「外出か…




うん!そうだね、2日だけならいいよ!」





…今いいよっていった?



ねぇ健斗と過ごせるの?




うれしくて、頬をしずくがつたる



ねぇ!健斗!私外出できるよ!




それからの私は、治療に真剣に取り組むようになった



健斗と外の世界に行きたい


周りの人たちがしているような


普通のことをしてみたい



気持ちというのはやっぱり病気に関係しているみたいで



私の調子はちょっとづつだけどよくなっていた




「美羽ちゃん、最近楽しそうだね


あんなに嫌そうだった治療も


なんか頑張ろうっていう意思が見えるよ」



先生もわかってくれてるんだ


私を治してくれようとしているんだ


今になってわかった周りの優しさ



「美羽!よかったね


頑張ったら外出できるかもね!」




ありがとうお母さん


今までごめんね


私これから頑張るね



外出、という言葉が頻繁に出るたびに


私の心はうきうきしていた



「とかなんとかやってたら


とっくに面会時間過ぎてんじゃん!


やっべー怒られる!



じゃあまた明日ね!」




「うん、ほんとにありがと!



また明日!」





今までは使えなかった「また明日」



健斗がくるのを楽しみに待っていたけど



健斗がいつくるかなんてわからなかった



でも、「また明日」になったんだね



これからは、好きなときに健斗にあえるんだ




我侭になるかもしれない


自己中かもしれない



それでもずっと彼と一緒にいたい