来年の2月に、大阪フィル&飯森さんとの共演が叶うオーディションを兼ねたコンサート、行って来ました。声楽部門は実力伯仲で、出演された3人の方共に個性を十分に発揮されました。声楽は、歌手の方の個性に合った配役や曲があるので、余計に順番が付け難いですよね。私の評価は、バリトンの森さんとソプラノの古瀬さんは全くの互角だったんですが、結果は古瀬まきをさんが最優秀賞に輝きました。最高音のEを軽々出される美声、表現力、ピアノの方との息もぴったりでした。日本の歌曲を歌われたのもプラスだったかも知れませんね。森さんも、堂々としたステージマナー、役にはまった美声と表現、全く劣っていませんでした。こういう男性の声楽家が更に活躍できる文化・舞台が欲しいですね。一方、ピアノ部門ですが、入場時に頂いたパンフレットを読むと、秋元さんが断然素晴らしいように書かれていましたが、結果はそのようになりませんでした。井後さんは多少表現力の点で劣るような印象でした。音楽も小さくまとまってしまってしまっていて、バッハが書いた「大きい音楽の世界」がもう一つ上手に描けていなかったのが残念でした。残る秋元さんと多田さんのお二人は全くの互角と感じました。ただ、秋元さんはこのコンサートの出来が恐らく今一つだったんじゃないでしょうか。テープ審査~二次予選、そしてこの日に向けて徐々に完成度を高めていかなければならないこのオーディション、彼はきっと二次予選が素晴らしすぎてしまったんじゃないでしょうか。今日も全く悪くは無かったんですが、パンフレットに書かれていたような飛び抜けたものとは感じなかったんですよね。テープ審査から3回、同じ曲を弾き続けて行かないとならないこのオーディション、頂点を今日のこの舞台に持って来れないとならないんでしょうね。素晴らしかったことには違いありませんが、期待した程ではなかった、そういう印象となってしまったのは不運としか言いようがありません。一方、多田真理さん、この日に向けて、この曲に対する熟成具合が徐々に高まって行ったんじゃないでしょうか。演奏後に楽屋でお話させて頂いた時にもお話されておられましたが、パンフレットで「二番手」みたいに書かれておられたのが、逆に発奮材料になった、あるいは開き直りが出来たと言うのもあるんでしょうかね。とにかく落ち着いて弾かれていたのが良かったですね。一音一音弾き急がずに噛みしめるように弾かれ、グバイドゥーリナの書いた独特の和音・響きが、非常に良く会場に響いていたと思います。最初の和音が会場に響いた瞬間、今日の素晴らしい演奏を予感させてくれました。こういった現代曲が演奏される時は、客席も落ち着かない雰囲気になりがちなんですが、聴衆も食い入るように聴いていたのがとても印象的でしたね。興味の無いような聴衆を惹きつける、求心力のある素晴らしい演奏だったと思いますし、審査員もそういった会場の雰囲気を感じ取ったのかもしれません。来年の協奏曲でご一緒される飯森さんも、多田さんが音楽的に最も好みのタイプだったのではないでしょうか。きっと「一緒に演奏したいので、僕の意見も加味してほしい」と審査時に言われたんじゃないかと思ってしまう程でした。と言うことで、ピアノ部門は多田真理さんが最優秀賞を獲得されました。
多田真理さん、最優秀賞、おめでとうございます。日本ピアノコンクールの表彰式の日にお知り合いなって頂いて以来、お忙しいところいろいろとご配慮頂き、本日は楽屋までお通し頂き、ありがとうございました。来年の協奏曲、どんな曲を弾かれるのかも楽しみですし、これをよりいっそうご自身の自信とされ、更に大きい舞台でご活躍されますよう、心から願っております。コンタクトが取れる演奏家の方がこうやって結果を残して下さること、私も大変うれしいですし、これからも更に良い音楽を見つけに行こうと言う思いにもなると言うものです。













