仲良くして頂いている、ピアニスト・戸田 恵さんの公演を聴きに伺いました。ご自身はどのように思われておられるのかわかりませんが、とても充実した公演だったのではないでしょうか。
彼女のピアノですが、温かいお人柄がストレートに反映され、音色の豊さ、タッチの美しさに由来する透き通った響きなど、とても個性が際立っていたように感じました。選曲もとても良く、ご自身の良点を十分に熟知された上、それを見事に発揮され切ったと言っても過言ではないでしょう。「曲者・ベーゼンドルファー97鍵」も弾き慣れておられるのでしょうか、全く気にされるような素振りも見せられず、全体的にとても安定していました。
バッハで聴かせた品の良さ・趣味の良さは格別でしたし、リストではスケールの大きさはそれ程感じませんでしたが、一方で、彼女独特の曲全体を俯瞰して初めて出て来るような見通しの良さがとても良く表現されていました。また、ラヴェルでの透徹した美しさも、大変印象的でした。メインの「展覧会の絵」ですが、力づくで運んで行くような場面は皆無、常に足元を確かめながらの着実な歩みがとても印象的でした。ライヴでは残念な演奏を聴くことの多い「バーバヤガーの小屋」でも、常に冷静で、含蓄のある音楽が展開され続けて行きましたし、それ以外のそれぞれの曲の描き方も大変良く考え抜かれていて、例えば、比較的地味な曲の「古城」で聴かせた音色の多彩さ・陰影の深さ、また、「ブィドロ」では単なる遠近感の表現のみならず、独自の視点でこの曲を見つめ、再構築されておられたのも、私にとっては新たな体験でした。曲を通して常に繊細で美しい演奏で、この曲の持つ異なる側面を観ることが出来、とても貴重な体験をさせて頂いた、そんな気持ちです。アンコールでの目を見張るような素晴らしいテクニックにも、驚かされました。
恵さん、今日は素晴らしい演奏を聴かせて頂き、ありがとうございました。あのコンクールの時の演奏は、一体何だったんだろう・・。
また、お誘い下さいね。
会場で、もうすぐ始まる「ジュネーヴ国際音楽コンクール・ピアノ部門」に出場される、辰野 翼さんのお母様から声をかけて頂きました。予選の抽選・演奏順決定がそろそろと言うような段階のようで、良い成績をあげられるよう、遠い日本から願っています。



