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記憶が鮮明なうちに、少しだけ追記しました。
清水 公望さんの演奏は、今月の初旬に、別の会場で聴かせて頂きました。その時の印象が、公望さんの本領が十分に発揮されたようには思えず、機会があれば近い時期にもう一度聴かせて頂きたいと思っていたところ、丁度良いタイミングで今日コンサートが開催されていました。個人的に「仕切り直し」と言うところでしょうか。
公望さんのヴァイオリンは、その音楽的な純度の高さが持ち味ですので、今日のような響きのある会場は向いていて、演奏そのものも、どの曲も一定以上のレヴェルで、ご本人もきっと満足されたコンサートではなかったでしょうか。やはり、前回のような響きの少ないデッドな会場は全く合いませんでしたね・・・。
冒頭に弾かれたクライスラーの2曲の小品ですが、決して造り過ぎることなく、公望さんのセンスの良さがストレートに表された、なかなかの好演でした。こういう小品を、さりげなく聴かせると言うのは、プロの奏者でもなかなか難しいもので、それを難なくこなしておられたのは、彼女が持つ音楽性の高さがあってこそだと思います。
続く、モーツァルトのト長調のソナタ、これも前回お聴きした時よりも、格段に良い演奏でした。湿度が低いこともあり、楽器が一段と共鳴しますので、公望さんもご自身の音を聴きながらじっくり進めておられ、落ち着いた安定した運びで、颯爽とモーツァルトを聴かせて頂きました。前回指摘させて頂いた第1楽章の運弓も、今日は曲の造りに合わせた運弓に変えられていて、その効果が曲の形を良く整えておられたように感じました。短い期間で曲を揉み込み、更に進化されておられたのは、やはりさすがですね。古典の作品と言うことで、ソナタ楽章の提示部をきっちりと繰り返しておられたのも、とても彼女らしいと感じました。
後半最初のバッハの無伴奏の抜粋、それ程急がないテンポの中、じっくりと響きや音程に十分に気を遣う演奏は、全曲を通してお聴きしたいと思わせるものでしたし、続くヨアヒムの「ロマンス」も、前回同様の熟成した音楽を聴かせて頂き、曲の良さも再認識出来ました。(楽譜買いたい!)
そして、今日最も楽しみにしていたブラームスの2番のソナタ、なかなか出会うことの出来ないような、大変素晴らしい演奏でした。実に中身の詰まった、豊かで充実した、意味合い深い演奏。このソナタで、このような「過」も「不足」も無い演奏には、なかなか出会えない・・・、そんなとても難しい曲です。音量の大小だけで曲の抑揚を付けて行くばかりでなく、弓の使い方、ヴィブラートのかけ方など、全てに公望さんのこの曲の譜面に対する推敲の跡が、極めて明瞭に感じ取れました。
第1楽章のコーダのあたりからは、胸が熱くなって来てしまい、不覚にも思わず涙腺が緩んでしまいました・・。公望さんは、演奏前のトークをお聞きしていてもわかる通り、楽譜の推敲に長け、運弓・運指にも大変気を遣われていますが、
例えば、第3楽章の冒頭、1の指のポジション移動をどの音でするかですが、公望さんはこの楽譜と同じ2小節目の四分音符でされ、また、6小節目のCisの音では「sul G」にはされず、D線の太い音で奏されていました。多くの奏者が、1小節目のCisでポルタメントをかけながらポジションを上げたり、6小節目のAisをこれ見よがしにG線で弾かれますが、前者のように弾かれる公望さんの音楽はとても端正に聴こえますし、節度のある音楽が曲の良さを更に引き立てるんですよね。余計なポルタメントも大仰さもなく、丁寧に音楽を紡いで行かれるのが公望さんの特徴で、今日は彼女の良さが全ての面で眼前に表れて来ました。
ピアノを弾かれた山中 歩夢さんの演奏にも触れない訳には行きません。公望さんに寄り添う姿勢の中にも、伴奏と言う範疇を超えた十分な自己主張が聴こえ、なかなか個性の強いピアニストだと感じました。常に音楽が前を向いていて、積極的だとも言えるでしょうか。例えば、
このような場所での、躊躇の無いテンポ感や、
このような場所では、言い方が悪いですが、演奏相手を「追い込んで行く」ようなインテンポで(それは、公望さんの腕を信頼しているから出来ることなんでしょうが・・)、決して音楽を弛緩させないと言うような意識が充満し、聴き手にも一種の緊張を強いて行くような、少し怖さのようなものも感じさせる、そんな独特の魅力を持ったピアニストです。実際に、ここは「grazioso」であり「dolce」であり、しかも「leggero」なんですよ・・・。なのに、彼の音楽はとても「決然」としていて、でも、この場所の音楽に相応しい、そんな不思議な演奏。
こう言った部分では、少し主張が強すぎるような気もしないでもありませんが、そこら辺は、今回「初顔合わせ」と言うこともありますので、更に練り込んで行かれれば、飛躍的に良いアンサンブルになって行かれるはずです。彼はリスト音楽院の留学を終えたばかりとのことで、私が良く聴かせて頂いている森本 美帆さんとは同門のようで、今後、ソロをお聴きする楽しみもあります。
演奏後、客席に見慣れたお顔の男性がおられました。彼は、数年前まで同じオーケストラで演奏をしていたお仲間で、何でも公望さんの中学校時代の音楽の先生だったそうです。そのお話を存じ上げず、ちょっとビックリしながらの、かなり久しぶりの再会となりました。
今日は、ご盛会おめでとうございます。そして素晴らしい演奏の数々、ありがとうございました。
いくつかの譜面にサインを頂きました。ブラームスはもう表紙がサインで溢れてしまい、今日は中表紙にして頂きました。





