三年ほど前に行われたコンクールで、公望さんの素晴らしい演奏に接し、その時に共演されていたピアニストの方と懇意させて頂いていたこともあり、コンクール後にお声をかけさせて頂いたのが、彼女との出会いになります。そして、昨年お話した時に、私が書いたその時のコンクールの記事を読んで頂いていたことを知り、ビックリしたことも良く憶えています。その際、今回のリサイタルの開催について教えて頂き、聴きに伺いました。
以前も書きましたが、彼女のヴァイオリンは、少し冷たい肌触りを感じますが、かえってそれが曲そのものの構造や器を引き立たせ、しゃべり過ぎず、エッジの効いたシャープな奏法で、曲全体を引き締めている、そんな印象を持っています。ただ、時を経て、彼女のヴァイオリンも、少しずつ変化を見せていることも、今回のリサイタルで実感しています。
今回弾かれたプログラムは盛りだくさんで、一般の聴衆には少し重たい感じがあったことは否めません。加えて、この日は雨による湿気と会場のデッドな音響と言う条件が重なってしまい、あまり楽器が鳴っていなかったようにも感じ、公望さんには少し気の毒な気も致しました。
特に良かったのは、ベートーヴェンの6番のソナタでした。日頃あまり弾かれない曲ですが、とりわけ第2楽章では、一音一音大切に音を紡いで行きながらも、曲の輪郭をくっきりと描いた演奏は心に沁み、彼女の優れた音楽性が見事に発揮されていた一場面でした。また、チャイコフスキーでの伸びやかな表現は、彼女のまた別の側面を見せてくれた素敵な演奏だったように思います。
一方で、冒頭のモーツァルトは、譜面の推敲(例えば、上にあげた楽譜、第一楽章の147小節目から3回続く同じ音型の弾き方ですが、公望さんはアップボウから開始、音量が増して行く3回目の149小節だけはダウンボウで開始されていましたが、これが曲が本来持つ「軽さ」を表現しようと言う意図でされていたのであれば別ですが、この曲はいわゆる古典の曲ですし、基本的に拍の頭はダウンボウで弾かれるべきと思っています。そうしないと、同じ音符で書かれた音型の聴こえ方に違和感を感じ、音楽的な統一感に欠けるように聴こえてしまうからです。ですので、この音型は3回ともダウンボウによって統一感良く弾いて頂きたかったと言うことです)、また、この曲ではピアニストとの合わせが幾分不十分だったように感じ、何か手探りの中で曲が表面的に進行して行ってしまうように聴こえていたのも少々残念でした。イザイの無伴奏も決して悪くはありませんでしたが、冒頭のバッハの引用部分は、音量が小さくとも、もっと音そのものをしっかりと正確に弾かれないと、その後に出て来るイザイによる変形が活きて聴こえず、そういう点を含め、曲をもう一度見つめ直され、これまで以上の素晴らしい演奏を期待したいですね。
メインのR・シュトラウスのソナタは、ピアニストとの合わせの時間を十分に取られた跡が良く感じられ、素晴らしい一体感のあるアンサンブルが聴こえて来ましたが、第3楽章は、作曲家の「作為」が少ししつこく感じてしまうように、曲そのものの出来がもう一つにのようにも感じ、公望さんの素敵な演奏も、この部分ではあまり演奏効果が上がっていたようには思いませんでした。フラット系の曲と言うことに加え、この日の湿気で楽器が思ったように鳴っていなかったことも、そのように思った要因かも知れませんね。
アンコール、ヨアヒムのロマンス、この曲は初めてお聴きしたんですが、とても美しい曲で、前半でお聴きしたベートーヴェンの第2楽章に通じるものがあり、その繋がりもあり、彼女のしみじみとした演奏が、この日の良い締めくくりとなりました。
全体的に少し辛口な評価になってしまいましたが、以前お聴き出来た彼女の持つ「緻密さ」(表現的にも、技巧的にも)が、この日の演奏からは感じられ難く、もっと曲数を絞るなりの工夫をされながら、1曲1曲に神経を集中され、より公望さんらしさが表れるような演奏をお聴きしたいと思いました。
共演されたピアノの秋元孝介さんも、私にはお馴染みのピアニストで、良く聴かせて頂いています。力強くも繊細な演奏スタイルは、この日も健在でした。大学の「有森クラス」で学ばれた成果が良く出ておられたように感じ、併せ物もとても上手ですよね。公望さんの良きパートナーと言った感じで、とても良いデュオだと思います。来年3月には、西宮の兵庫芸文の「ワンコイン・コンサート」にご出演も決まっていますし、ご活躍の場がどんどん広がって行かれます。また、お父様にはいつもお声をかけて頂き、とても有難く思っています。
お二人の、今後益々のご活躍を、祈念しています。お疲れ様でした。


