百合絵の客に大原という男がいた。









大阪にある大原工業という中堅の建設会社の専務で、社長は父親という血族企業である。








百合絵がD社株の話をすると大層興味を示したということで、ぜひ話を聞きたいとの申し入れであった。







大阪なんばにあるホテルのロビーラウンジで会うことになり、その日は百合絵の父親が都合で大阪に出て来ることが出来なかったため、私が説明に赴いた。








私は大原と名刺交換をし、同い年ということもあり打ち解け易かった。








大原が言うに、北新地やミナミで毎日散財し、女に貢ぐカネなども会社の資金に手をつけてしまっているらしく、それを埋めなければ父親から激怒され、専務を解任されてしまう可能性があることを打ち明けられた。







ゆえにD社株で一発勝負したいということであった。








それはとても分かりやすい話で、私もD社株で勝負することは、大原にとってピッタリ合う案件だと思った。








「で、大原さん、何株いりますか?」 




私の問いかけに




「とりあえず2億円分は欲しいですわ」






と大原が答えた。







大口である。






私はそこで金谷に電話をし、それを伝えた。






金谷も驚いていたが、2億円といえば2千株であり、それが用意できるかどうかが問題だと言った。







というのも、阿蘇では盛川も必死で資金集めをしていて、担保としてのD社株をあちこちに渡しているため、株券の在庫が少ない状況になっていたのだ。







しかし願ってもない話であったために大原にはとりあえず1億円分を実行しようと伝えるように言われた。








大原もとりあえずそれで納得し、1億円分の実行を確約し、その日は別れた。