そんな中、大原からも急かされた。
早く株券を段取りしてくれとのことだ。
大原にも預り証ではどうかと打診したのだが、株券自体が欲しいということだったので待たせるしかなかった。
しかし早く1億円を実行させたいのは私にしても盛川にしても同じであり、なんとかせねばならぬと頭を働かせた末、既に株券を渡している投資家に対して、一度株券を引き上げさせて貰って預り証を渡すということを思い付いた。
そう、以前に株券を渡していた投資家に対してなので、現物に拘りのない人であれば快く応じてくれた。
勿論そのお礼というかお詫びに扇山荘にて接待をするわけだった。
そして回収した株券を大原に渡すことになり、まずは五千万円分、5百株を持参した。
その時に大原が私に
「Gさん、急かせてすんませんね。
無理言うてんのは分かっとるんですが、早いとこあと5百株もお願いしたいんですわ」
と言って来たので、ちゃんと手配しているからという旨を説明すると
「こっちもちゃんとカネ用意して準備しとるんやからしっかり準備してくれ!
それやないと百合絵の顔も潰れるで!」
と偉そうに立ち回って来たため私もキレてしまいそうになったがグッと堪え
「大原さん、あなた分かってないかもしれんけど、この話があなたに声がかかっただけでもラッキーなんですよ?
ほんまやったら私や会社と縁故関係のある人にしか持っていけん話を、百合絵さんの客ってだけのあんたに持って行ったってるんやから、逆に喜んでもらわなあかんのですよ?
なんやったら御破算にしましょか?」
とカマシてやった。
一か八かのカマシなのだが、大原のD社株に対する異常な執着を目の当たりにしているだけに勝算はあった。
予想通り大原は慌てて
「いや、気を悪くしたんやったら謝ります。
Gさんにはほんま無理を言うてしもて…」
と来たので私は言った
「もうあと5百株は難しいですよ。
百合絵さんの顔が潰れるみたいなこと言われたら、今後お付き合いするんは難しいですわ。
今日の5百株で終わりにしてくださいや」
それを聞いた大原は慌てて
「いや、えらいすんません、私が言い過ぎました、最初に言うたようにほんまあと千五百株、合計2億円分いきたいんですわ!
なんとかなりませんやろか?」
予想通りの執着ぶりだ。
私は足もとを見て
「どうしても言うんやったら骨折りますけどね、私にしてもメリットがないと困る。
私に対しての謝礼を約束してくれるんやったら頑張りますよ」
と言った。
大原がいかほどと尋ねるので、次の実行までに現金で二千万円は欲しいと言った。
それを聞いた大原は
「えっ、そんなにですか?」
と言うので
「あんたね、あんたもここの株が上がるの確証しとるから欲しいわけでしょ?
2億円が倍から十倍ほどになると考えとるからそないに欲しいわけでしょ?
ほんなら二千万なんか安いもんちゃいますの?」
と言ってやると
「まあ、そりゃそうなんですけど、後払いじゃあきませんか?」
と来たので
「後払いやったら利益の30%は貰わんとわりに合いませんで、後払いでもええけど10億儲かったら3億は貰うことになりますよ」
と返答すると大原はしかめっ面をして、私の提案した先付け二千万円で納得した。
大原には私は百合絵の父親の仕事仲間ということにしており、百合絵が私の彼女だということは言っていない。
なぜなら大原は百合絵の客でもあるし、百合絵のことを女として気に入って店に通い詰めているわけであり、私が百合絵の男だと分かれば商談は成立しないかしにくいのが当然であるためだ。
ただ、もし大原とトラブルになれば百合絵に迷惑がかかるのは必至で、百合絵を保護する保険のためにも大原からカネをせしめておく必要があると私は考えたのであった。
大学生時代に名古屋の鬼畜と呼ばれる加藤という男に出会い、そして紺野という男に嵌められ嵌め返し、親友に手形をパクられ地獄を味わい、えん魔のような盛川とビジネスを共にするようになった私はもう引き返すことの出来ないカネの亡者の道を突き進んでいた。