見られているみたい? | 前橋山岳会

前橋山岳会

いつも山と一緒に呼吸していたいから


 2016年3月19日 曇りのち雨
土樽駅周辺の散歩
茂木ひとり

 谷川岳北面に ご無沙汰しているので、今回散歩に出かけます。湯檜曽駅から列車に乗り換え 土樽に向かう計画でした。しかし、上州側は雨で、ぐずぐずしているうちに、靴を履き替え等の準備時間が無くなり、同駅から車で土樽駅に向う羽目になってしまいました。でも、駅に駐車スペースが有ることは確認できました。
 三国を越えると雨が上がっています。中里に入ると国境稜線には、雲がかかっていません。オジカ、小障子、大障子、万太郎、アレ‼!仙ノ倉?・・・・稜線のピークと、それらから伸びる枝尾根が浮かび上がって見えます。車を路肩に止め しばし鑑賞しました。地下足袋にわらじで通い詰めた日を思い出します。遡行は夜行日帰りです。稜線は飛ぶようにして移動しました。今の人のように一泊しません。あの私の脚力はどこに行ったのでしょうか。戻ってきてほしい!
 オジカ、小障子、大障子のピーク
土樽パーキングエリアの下まで来ると 大障子沢の壁のひだがはっきり見えました。曇り空なので見やすいのでしょうか。
 大障子沢北壁
 土樽駅前のポストに登山届を投函後、車をさらに奥に進めました。パーキングエリアに行く道は除雪してありますが、蓬沢、茂倉沢への道は してありません。万太郎橋(1番目の橋)のたもとに 車を止め、蓬沢に沿って歩きます。茂倉橋(2番目の橋)から 矢場尾根の登山道に入ります。尾根に上がる手前で、茂倉沢左岸の林道に入り 東京発電の茂倉えん堤へ向かいました。林道には一人分❓のワカンの痕が残っています。ほとんどの人は、矢場尾根に向かっているようです。
 サービスエリア上部からの茂倉谷

 まだ足を踏み入れてない右岸を散策する予定です。右岸に渡る手段として、取水口のえん堤を使う計画でした。水の流れを見て、即中止です。落ちて、雪解け水と一緒に暗いトンネルを、万太郎谷の取水口まで流されてゆくのは まっぴらごめんです。えん堤より上は、水量が多く、大きい石が目立ちます。私の足の長さとプラブーツでは、ぬれた石から石へ飛び移れません。
 えん堤上の茂倉谷
上流に向かって渡渉点を探しましたが適地がありません。ワカンの痕もこの先ありません。発電関係者の巡回痕かもしれません。プラブーツが水没し、あきらめて下り(帰り)始めるとえん堤の下に河原が見えます。考え直してみれば、取水口で水を集めているのだから、えん堤の下の水量は少ないはずです。よく見ると、右岸スギ林の仕事用のマークかもしれませんが、木の幹に赤ペンキの帯や赤札がぶら下がっていました。そのマーク付近から飛び石を使い 右岸に移りました。右岸スギ林の中に、開けたなだらかな起伏が続いています。そこは、ザラメ雪で 15㎝程潜り、足の疲労を加速させてくれます。スギ林の中を流れる小沢に沿って登り、その沢の源頭となる 尾根に続く雪の残っている斜面を目指します。
 スギ林を抜けるとブナの森になりますが、稜線に 何か気配を感じるのです。のぞかれている感じです。ピッケルで木の幹をたたいたり 咳ばらいをしたりして不安を紛らわせました。カモシカの足跡以外は残っていません。時々日が差したり、青空が広がったりと明るい兆しでしたが、タカマタギのピークに雲がかかるや否や曇りはじめ 霧雨が落ち始めました。そのような気象変化が不安を掻き立てるのかもしれません。稜線直下は、鳥や動物のミネラル補給場でしょうか黄緑色の砂場が見受けられました。源頭の斜度は30度以下ですが、濡れた腐葉土は滑ります。稜線に上がると、そこは、藪のナイフエッジでした。また、そこは・・・立派なけものみちです。踏みつけられて落ち葉もありません。何とか空間はあるのですが人間の高さはありません。彼らは、ここから私を観察していたのかと思いました。
 藪のナイフリッジ
稜線をすこし登ったところで、1時30分をまわり そぼ降る雨の様相になってきたため、戻ることにしました。予定の高度に達しませんでしたが、一人で山を独占できたのですから良しとしましょう。  そうそう、散歩に来たのですから。
 登った沢を振り返る
 蓬沢に出てからは、フキのとう集めに没頭しました。丸く持ち上がった落ち葉をピッケルで剥がすと、ピンポン玉のように丸い芽が出てきました。厚い落ち葉の圧力を受けて、うまみと程よい香りがありました。天ぷらは美味しかったです。(記:もてぎ)