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先日、75歳の男性Mさんが、他院から紹介されてきました。
主訴は、”ふらつく”でした。
先生からの紹介状には、半年前からふらつくようになって、最近はうまく歩けないようですと書いてありました。
ふらつくといっても、脳、脊髄、筋肉、末梢神経と要因は多岐にわたります。
紹介状には、ご丁寧に採血結果は添付されていましたが、相変わらず、なにを疑って採血したのかが全くわからない採血項目でした。
原因を想定できていないと、医師がオーダーする採血項目は、見当違いのことがあります。
つまり、医師の鑑別診断能力によって、採血項目やMRIなどの検査を行う部位は異なります。
さっそく、Mさんの神経診察を行いながら、普段の様子をききました。
私:”だんだん歩きにくくなったんですよね?半年前からですか?”
Mさん ”うんそう。だんだんね。最近はずっと家にいるから、なんもしてないし、えへへ(照れ笑い)”
娘さん:”そうなんです、なんもしないんです。やる気がないっていうか”
私:”お食事はどうされてるんですか?”
Mさん ”適当。ご飯は朝昼たべずに、お菓子たべてるだけ” と
診察では、足の筋力も腕も全く問題ありませんでした。
ただ、腱反射は低下していて、いわゆる、脚気のような状態でした。
足の感覚もつまようじで、痛覚刺激の診察をしても、”ほとんどわからん”といわれます
立ってもらうと、立つことはできるが、目を閉じると、ふらふらして危ない状態でした。
適当な食生活+糖尿病+タンパク質を摂取しない+意欲低下があることから、
すぐに、”ビタミンB1かB12欠乏による末梢神経障害”が疑われました。
診察した結果、脳や脊髄由来ではないと考えたので、画像検査は不要と判断しました。
結果、ビタミンB1は正常下限、ビタミンB12は高度欠乏状態でした。
普段の様子をきいて、診察して筋力が正常であれば、末梢神経障害であることは明白でした。
ただ
これって、神経内科医じゃなくても医師国家試験を受けた人なら、ちゃんと話をきいたらわかるんじゃない??と思いました。
なぜなら、国家試験でよくでるパターンの問題だからです。
<問題>
独居の男性。アルコール多飲があり、1日1食しか食べない。彼が次第に歩行ができなくなりました。
さて、必要な血液検査はなんでしょう?
といった具合です。
紹介医の先生は30代でまだ若い先生でしたので、国家試験が終わって数年程度と思われました。
”よく話を聞いて、採血項目を追加したらわかったことなのに・・・
先生が診断できたら、娘さんは仕事を休んで、こんな大きな病院に予約まで取って、本人をつれてこられなくてよかったのに・・・”と思いました。
ふらつきの原因は以前にも記事にしており、10個以上疑われる病気があります。
中には神経内科の病気ではない疾患もあるので、整形外科や内科の先生にも、関連があります。
同時に、私も ”他の科の症状だからわからん” と思わず、その時はわからなくても家に帰って、参考書を開くようにしたいです。
”私はこれしかやりません。できません。わかりません”
と言ってしまうとそこで人間の脳の発達はとまってしまうのです。