肉の摂取量だけでは決まらない
これだけなら良いのですが、このとき大腸に悪玉菌がいると、入ってきた胆汁が分解されて、発がんと関連する物質ができるのです。発がん性物質まではいきませんが、発がんを手助けする物質です。つまり、脂肪を多く摂取して胆汁の分泌が増えれば増えるほど、大腸がんが発生しやすくなるということです。
大腸がんの発症率が極端に違う例
では、各国の大腸がんの発症率はどうでしょう。それを示したのが下のグラフで、こちらは2012年のデータです。驚いたことに、肉の摂取量が日本とそれほど変わらない韓国は世界トップクラス、日本はそれより低いのですが、グラフのほぼ右端にあるモンゴルに注目してください。なんと、こんなに低いのです。ご存知のようにモンゴルは牧畜が盛んで、肉と乳製品をしっかり摂取します。それなのに大腸がんになる人の割合が非常に低い。ひょっとして、モンゴル人がよく食べる羊肉が体に良いのかと思いそうになりますが、世界保健機関(WHO)は、大腸がんの発症率をあげる食肉として、牛肉、豚肉に加えて、羊、馬、山羊の肉をあげています。遺伝的素因が似ているはずのアジアの国々で、肉の摂取量と大腸がん発症率の関係がここまで違うとなると、肉の摂取以外の影響を考えるしかありません。
さらに、最も多く肉を摂取している米国女性の大腸がんの発症率が、日本女性より、ほんの少し低くなっています。
日本で大規模な調査をおこなったところ、野菜をどれだけ食べても、大腸がんの発症率はまったく変わらなかったのです。
はい、そのとおりです。動物実験や、実験室でおこなわれた研究から、魚に含まれるEPAとDHAが大腸がんを予防するという報告が寄せられています。また、米国で2万人以上の男性を対象に実施された調査からは、週に5回以上魚を食べる人は、週にせいぜい1回しか食べない人とくらべて、大腸がんの発症率が40%も低いという結果が得られました。日本では約9万人を対象にもっとくわしい調査がおこなわれ、魚からEPA、DHAを多く摂取しているグループは、結腸の入り口付近にできる大腸がんの発症率が、やはり40%下がることが明らかになりました。半分近くになるということです。