アントニオ・パッパーノの語る "Essential Tosca" | Je Veux Vivre

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マエストロ・A・パッパーノが『トスカ』の私の大好きなシーンについて絶妙に解説している映像がある。映像はゲオルギューがトスカ、カウフマンがカヴァラドッシを演じるジョナサン・ケント演出のROH『トスカ』(2011)だ。先日も書いた、第一幕でトスカが聖アンドレア・デッラ・ヴァッレ教会にカヴァラドッシを訪ねるシーンについて語られている(2:30-)。

 

 

 

 

トスカがカヴァラドッシを訪ねる直前、脱獄して身を追われているアンジェロッティと彼を匿うカヴァラドッシの緊迫したシーンが繰り広げられていて、トスカの声が聞こえるとカヴァラドッシはアンジェロッティに礼拝堂へ身を隠すように促す。隠し事のできないトスカに、カヴァラドッシは政治犯を匿っていることを打ち明けることはできないからだ。

 

このトスカの声が舞台裏から聞こえてくるシーンについて、パッパーノは「聴衆に期待をもって耳をそばだせるためのプッチーニの典型的な仕掛け」と語っており、まさにトスカの"Mario!"と呼びかける声が舞台の背後から聞こえると、私たち観客はヒロインの登場に胸を膨らませて耳を傾ける。

 

 

 

 

 

ミュシャとの描いたLa Toscaのポスターも教会にカヴァラドッシを訪ねるこのシーンのトスカの姿だ。

 

 

 

 

 

カヴァラドッシとアンジェロッティの緊迫したやりとりから一転するこのシーンに関して、パッパーノは「トスカがひとたびステージに現れると、トスカの宗教的な献身とロマンスを表現する繊細なテーマの音楽が流れる」と続ける。

 

歌手として身を立てるまで女子修道院で育ったトスカは信仰心が篤く、トスカを迎え入れて彼女にキスをしようとするカヴァラドッシに対して「マドンナ(聖母マリア)の前ではよくない、まずは花を供えたい」と語るからだ。トスカの神への愛とカヴァラドッシの愛へを表現したこのシーンの甘美な旋律はやはり何度聴いても飽きず、美しい。

 

 

 

Le Sommeil de l'Enfant Jésus (1625 - 1650) Giovanni Battista Salvi, dit il Sassoferrato (Sassoferrato, 1609 - Rome, 1685).