沈黙を守り続けるスヴェトラーナ・ザハロワ | Je Veux Vivre

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ボリショイ・バレエ団のオリガ・スミルノワが戦争不支持を表明してオランダ国立バレエ団に移籍した一方で、沈黙を守り続けているのが同バレエ団プリンシパルのスヴェトラーナ・ザハロワだ。

 

ザハロワ自身は旧ソ連下のウクライナ・ルーツクに生まれ、キエフ国立バレエ学校で学んだ後、ワガノワ・バレエ・アカデミーを経てマリインスキー、ボリショイバレエ団のプリンシパルとなった経歴を持つ。また、過去にはザハロワ自らウクライナのバレエダンサーを支援するためのガラを考案したこともある。

 

 

 

 

だがその一方で、ザハロワは早い段階において政界入りを果たし、ロシアによるクリミア半島の併合に賛同、プーチンに近しい芸術家だとみなされいる。そのため、ロシアによるウクライナ侵攻開始後は、ウクライナ政府によって制裁措置対象のリストに掲載される一人となった。

 

 

 

 

そのような中、ザハロアはロシアによるウクライナ侵攻に対して沈黙を守り続けている。戦争反対を表明しないザハロワに対し、バレエ・フォトグラファーのJack Devantのように彼女を痛烈に批判する人々も現れている。

 

早々に戦争反対を表明したマリインスキーのシクリャローフやオランダに移籍したスミルノワの前例もあることから、ザハロアにも立場を明らかにしてほしいという苛立ちは理解できる。ロシアによる生々しい残虐行為の跡を見た後で彼女のバレエを純粋に楽しむことができるかと言えば、それも難しい。ただ、ウクライナにルーツを持つ複雑な立場に置かれたザハロアの心中を理解することは不可能であり、また理解することができないからこそ彼女を一方的に糾弾することもできないと私は考える。