ジョセフ・ナイの「ソフト・パワー」再考―イデオロギー波及ではなく経済効果に期待する韓国 | Je Veux Vivre

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ブルームバーグに掲載された「ハーバードのナイのソフト・パワーの再定義」の同記事に共感。パラサイトやBTS、イカゲーム等エンターテインメントで世界に存在感を発揮してきた韓国ではあるが、実のところ肝心の韓国社会には魅力が感じられないのだ。

 

 

 

 

 記事の筆者は「BTSの歌は世界中のティーンに歌われているが、イカゲームやパラサイトの描く社会は手本にしたいと思わせるものではない。両者とも現代韓国の格差の暗い様相を描いている」と言う。

 

The catchy songs of BTS have teens worldwide singing along, but neither Squid Game nor Parasite portrays a society that others might be eager to emulate. Both are bleak depictions of wealth disparity in modern South Korea.

 

そして「これはアメリカのソフト・パワーの古典的な認識とは程遠い。理論上は、ハリウッドとビルボードはアメリカの海軍(引用者注:つまり軍事力)と同じ程度に自由民主主義を世界に輸出していた」と続ける。言い換えれば、古典的な意味でのソフト・パワーはハード・パワーと同じくらい影響力があったということなのだが、現在の韓国にそれはない。

 

It’s all a far cry from the classic perceptions of US soft power. Nye wrote of Soviet teenagers who “wear blue jeans and seek American recordings,” and how “Nicaraguan television broadcast American shows even while the government fought American-backed guerrillas.” In theory, Hollywood and the Billboard Hot 100 did just as much to export liberal democracy to the world as the US Marine Corps.

 

結論として「韓国の文化的影響力の増大の効果は、イデオロギー的なものではなく経済的なものだろう。韓国にとって政府のシステムを売るのではなく、サムスンのスマートフォンやヒュンダイの自動車を売れば十分なのだ」と。

 

But the effect of its rising cultural influence may be more economic than ideological. US exports helped sell US values. For Korea, the exports themselves may be enough. It’s not trying to sell its system of government, but it does have Samsung smartphones, Hyundai cars, and Samyang noodles to offer. 

 

 

最後の一文にも深く同意する。というのも、そもそも韓国は冷戦期のアメリカが掲げていた自由民主主義、または現在の北欧諸国に見られる男女平等や環境先進国というような他国に推進・輸出するようなシステムや普遍的価値を持ち合わせてはいないだろう。

 

長らく軍事政権が続き、民主主義による自由と基本的人権が否定されてきた韓国。また、儒教文化の伝統もある。

 

 

 

そして、ブルームバーグの筆者が語るような暗い貧富の差。筆者も言及している韓国の格差社会を描いた映画『ハウスメイド』は以前見たが、悲劇的な結末で視覚的にグロテスクな場面も多く胸を突かれた。

 

 

 

 

さらに、先進国で第一位の自殺率の高さ。

 

https://www.statista.com/statistics/789337/south-korea-suicide-death-rate/

 

 

2021年はコロナ禍の影響もありさらに自殺率が上がったと言う。

 

 

 

『Foreign Policy』もイカゲームを例に、若者が希望を持てない社会であると語っている。在米の韓国出身の友人知人たちも、多くは批判的に思っているようだ(だからこそアメリカ社会でキャリアを築きたいということもあるだろう)。

 

 

 

韓国ドラマも家父長制・男尊女卑の要素を多く含む印象で、そうでないものもあるだろうが私個人としては食指が動かない。この点に関しても、同様の感想を持っている北米や北欧の女性の友人たちは多い。

 

 

個人的な結論としても、ブルームバーグの筆者の結論と同じところに行きつく。

 

 

▼ジョセフ・ナイのソフト・パワーについてはこちら。