予告通り、今回こそは前回の基本受動態を使わない、ドイツ語の受動表現(B2-C1)です。語学学校もB2あたりから出てきて、C1でガッツリやった文法項目です。
この受動表現は、ドイツ語では、PassiversatzformenやPassiv-Alternativと呼ばれている表現方法です。B2-C1では、受動態からの書き換えや、その逆なども学習項目に出てきますし、長文読解の際に知っておくと便利です。
それでは、Passiversatzformenの前に、正式にはPassiversatzformenでは無いのですが、受動態を使わずに受動表現をする場合の1番簡単な方法… それは…
主語に『Man/jemand』を使用する事です。
例(受動態): Das Formular muss ausgefüllt werden.
(この書類は記入されなければならない)
書換後: Man muss das Formular ausfüllen.
(この書類を記入しなければならない)
というように、能動態に直す事ができます。ただし、書き換え問題などでは、正式なPassiversatzformではないので、このパターンは、アウトになる可能性があります。
では、本題に入りましょう。
Passiversatzformen
① sich lassen + 不定形
② sein + 語尾が『-bar / -lich 』の形容詞
③ lassen + 不定形
④ sein + zu 不定形
⑤ bekommen + 過去分詞
⑥ gehören + 過去分詞
では、例を挙げて、見ていきたいと思います。
① sich lassen + 不定形 = kann gemacht werden.
意味: ○○ される事が出来る
(受動態) Das Projekt kann nicht finanzieren werden.
このプロジェクトは融資される事ができない。
(書換後) Das Projekt lässt sich nicht finanzieren.
このプロジェクトは融資される事ができない。
② sein + 語尾が『-bar / -lich 』の形容詞
意味: ○○ される事が出来る=kann gemacht werden.
(受動態) Das Projekt kann nicht finanzieren werden.
このプロジェクトは融資される事ができない。
(書換後)Das Projekt ist nicht finanzierbar.
このプロジェクトは融資される事ができない。
③ lassen + 不定形
意味: in Auftrag geben =委託・依頼する
(受動態) Hier werden Häuser von der Stadt gebaut
ここは市によって家が建てられます。
注: でも実際立てるのは市ではなくて、委託業者さんです。その為、下記のように書き換える事ができます。
(書換後)Die Stadt lässt hier Häuser bauen.
市はここに家を建てるのを許可している。
④ sein + zu 不定形
受動態にmüssenやkönnenが入っている場合に書き換えが可能です。それ以外にも、否定ではnicht können, nicht müssen, nicht wollen, nicht dürfenの入っている受動態は書換ができます。
但し、書換後は、どの助動詞のニュアンスで書かれた受動態なのかは判断がつかなくなります。助動詞のニュアンスを強調したい場合は、受動態のままの方が好ましいと思われます。
(受動態) Das Atomkraftwerk muss sofort abgestellt werden.
この核発電所は直ちに停止されなければならない。
(書換後) Das Atomkraftwerk ist sofort abzustellen.
この核発電所は直ちに停止されなければならない。
⑤ bekommen + 過去分詞
口語表現で、主語と3格の目的語がある受動態のみ書換可能です。※3格が書換後の主語に変換されてます。
(受動態) In der Schule werden uns Umwelttipps vorgeschlagen.
学校では、私たちは環境の為のアドバイスを受けます(提案される)。
(書換後) In der Schule bekommen wir Umwelttipps vorgeschlagen.
学校では、私たちは環境の為のアドバイスを受けます(提案される)。
⑥ gehören + 過去分詞=muss/sollte + 過去分詞 + werden.
受動態にmüssenやsollenが入っている場合に書換可能な、口語表現。
(受動態) Das Badezimmer muss/sollte regelmäßig gereinigt werden.
このバスルームは定期的に掃除されなければならない。
(書換後) Das Badezimmer gehört regelmäßig gereinigt.
このバスルームは定期的に掃除されなければならない。
何故、Passiversatzformenがあるのか?不思議ですよね。そのまま受動態で良いじゃん!と思われるかもしれませんが、英語やドイツ語は、同じ言葉の繰り返しを嫌います。つまり、文章を書く際に、受動態が繰り返し何度も使われていると、しつこく聞こえる&この表現方法しか知らないんだな… と判断されてしまいます。
そして、基本的には、Passiversatzformenの方が受動態よりも、語数が少なく文章が短くなっているので、文字数が少ないほどスマートだと考えるドイツ語では、受動態よりも頻繁にお目にかかる表現方法です。読んで理解するためにも、『あ、受動表現だったなぁ〜』と薄っすら覚えているだけでも、読解の際にも役立つと思います。
いかがだったでしょうか?
次回の文法まとめ 予告
能動態を受動態に書き換える際、英語では、能動態での主語は全てbyの後に来ます。しかし、ドイツ語では、vonの他、durchがあります。『受動態でのvonとdurch何が違うの?』というテーマでまとめてみたいと思います。