夏の手紙 | 思い草へ              

思い草へ              

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アガパンサスの青を透して 

あの夏が 風にゆれている 

白磁のデコルテがみた幻想 
まっすぐな喉の渇き 

 

あれほど近くに在っても 

届かなかった指先の真面目さを 

いとおしく思いかえせば 

甘く蘇る  青の残り香 

 

壊れ易いものを 

強く掴んではいけない 

そっと手離したものだけが

いつか戻ってくるの 

 

そう云いながら 

わたしの顔をした天使が微笑むので 

わたしは肩をすくめて 

半ば諦めに似た頬笑みで応える 

 

 

あ、風がゆく

 

 

 

PHOTO 山本てつや

 

❀ 新しい夏が巡りくるたびに

この詩をあなたにお届けしたくなります

私たちがそっと手放した大切なものが
いつか戻ってきますように…祈りながら

2024年8月2日  スノウ